【ONE96】パク・デソンとの再戦で、ONE初陣へ。江藤公洋─01─「吹っ切れることができた」
【写真】本格的なレスリング技術をMMAレスリングに消化できるのが江藤の最大の強みだ(C)MMAPLANET
12日(金・現地時間)にマレーシアはクアラルンプールのアシアタ・アリーナでONE96「Masters of Destiny」が行われる。今大会ではONEウォリアー・シリーズから本戦契約を勝ち取った江藤公洋が出場し、因縁のパク・デソンとのリベンジマッチが組まれた。
専修大レスリング部出身、デビュー当初から大器と注目されていた江藤は、同時にポテンシャルを発揮できていないという状況が続いていた。戦績は決して悪くない。しかし、試合内容に課題が残る。そんな現役生活で中堅という位置に甘んじそうになっていた頃、スパーリング・パートナーとしてEvolve MMAで練習し、ONEという目標を持つようになった。
昨年1月のウォリアー・シリーズのトライアウトで合格、ONEへ登竜門で戦う権利を得た。が、3月の初戦でパク・デソンにTKO負けを喫してしまった──この敗北から3連勝、溌剌と戦うようになった江藤にONE初陣に向けての意気込みを語ってもらった。
──いよいよONE本戦で戦う日が近づいてきました。
「ようやくスタート地点に立てること、その相手がウォリアーの初戦で負けた相手だし縁があるのかと。楽しみであり、怖さもあります」
──昨年1月のONEのトライアウト以前と以降で、江藤選手の溌剌度合が違うように見えました。
「ウォリアーの初戦までは特別な何かになりたい、格好よく勝ちたいという余計な雑念があり、だからこそ自分にプレッシャーをかけてしまって上手くいかない部分がありました。
パク・デソンに敗れ、そこを捨てることができました。あれからは自分の強いところを出して勝負していくことにブレなくなったんです」
──打撃主体となりがちなONEワールドで、その境地に至ったと。
「もちろん打撃のスキルもあがったので、もっと使いたい、勝負できるという気持ちもあります。でも、自分の一番強いのはレスリング、組技だと思えるようになってからはテイクダウン、フィニッシュの精度が変わりました。そこが試合に出るようになりました。もちろん、このスタイルでもフィニッシュありきで戦っています」
──打撃をやらないといけないと思っていた時と比較して、打撃とテイクダウンの連携がスムーズになったのではないでしょうか。
「そうですね。打撃を使わないといけないと思っていると、打撃一辺倒になりがちだったのが、テイクダウンで勝負すると決めてから打から倒の移行がスムーズになりました。テイクダウンするための打撃も、倒せない打撃を出しているわけじゃないですし、逆にいえば倒せる打撃からテイクダウンという流れを持てるようになりました。
以前は戦う中でテイクダウンしかない、でもテイクダウンを狙うとスタミナをロスするとか悪循環に陥っていて。MMAのなかでレスリングをやっていたのが、MMAレスリングを戦うことができるようになったと思います。MMAのテイクダウンにシフトチェンジできて、スタミナのロスや気持ちが疲弊することがなくなりました。精神的なブレで疲れていたのですが、一本しっかりとスジが通ったことで、そういう疲れがなくなったことも大きいです」
──そこにパク・デソンが気づかせてくれたと?
「ハイ、余計なモノで自分を縛りつけていました。認めてもらうために、こうしないといけないとか考えて視野を狭めてしまい、試合前に緊張で疲れていたような感じで。結果、試合でも焦ってしまって普段の練習でできる動きを出せないでいました。こうしないといけないという想いが足枷になって、負のスパイラルに陥っていましたね」
──ONE本戦への足掛かり、その第一歩で敗れたことで追い込まれることはなかったですか。
「逆にウォリアー・シリーズの初戦という大切な場面で負けたからこそ、吹っ切れることができたと思います。『俺、何やってんだろう』と思い、それからは勝っても負けても自分の一番強いところで勝負しよう、それで負ければ仕方がない。出せない方が嫌だと思うようになりました。なので敗北に関しても色々と考えず、吹っ切って捉えていました」
──今回はONE本戦です。注目度も上がります。
「でも、もうブレません。応援してもらうことは凄く嬉しいです。でも、試合の時はそういうことも忘れて戦いに集中します。負ければ自分のせいで、勝てば一緒に喜びたいです。そういう今の心境をSNSでも書いていて。言い訳を作りたくないです。それは今回の試合も同じです。そういうマインドセットで、ここ3試合は試合前にルーティンでやってきました。
緊張は絶対にします。以前は緊張することも嫌だと否定していたのが、今は『緊張しているな。いつも通りだ』って思えるようになったんです。だから緊張はしても、試合にスッと入れます。自分を受け入れ、余分なモノは背負いこまない。そういう精神状態に持って行っています」
──だから溌剌というより、力みがなく自然体になったのですね。ところで今回に試合はキックがメイン、使用されるのはケージでなくリングになるのでしょうか。
「いやぁ、それも知らなくて。リングだと思う──ぐらいで(笑)」
<この項、続く>