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【WJJC2019】5連覇はならずとも、この競い合いこそ湯浅の真価が発揮。女子ルースター級新時代へ

Women Rooster【写真】5連覇こそならなかったが、黒帯日本勢では湯浅だけが表彰台に (C)MMAPLANET

5月30日(木・現地時間)から6月2日(日・現地時間)にかけて、米国カリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア大ロングビーチ校内ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われた。競技柔術世界一を決定するこのムンジアル・レビュー第1回は、女子ルースター級にて世界5連覇の偉業に挑んだ湯浅麗歌子(パレストラ品川)の戦いぶりをレポートしたい。


01<女子ルースター級準決勝/10分1R>
湯浅麗歌子(日本)
Def. 1分00秒by 腕ひしぎ腕固め
タミレス・アキノ(ブラジル)

02湯浅の初戦=準決勝の相手は、昨年の初戦でも当たって三角絞めで一本勝ちしているタミレス・アキノだ。

試合開始後、お互いに引き込んでダブルガード状態になる両者。ここで湯浅は、両手でアキノの右腕を強烈に引きつけての三角狙いへ。マットに横たわって距離を取って凌いだアキノが上体を起こしたところで、湯浅は右腕に絡んでのオモプラッタに変化する。

03ここもアキノが凌ぐと、湯浅はまたしても三角に変化し、完全にロックを入れる。それでもなんとか耐えようとするアキノだが、湯浅はその右腕を伸ばすとタップ。わずか1分、怒涛の連続攻撃でアキノに付け入る隙を与えずに圧勝した湯浅が決勝進出。5年連続優勝に王手をかけた。

04<女子ルースター級決勝/10分1R>
マイサ・バストス(ブラジル)
Def. by 6-6 アドバンテージ1-0
湯浅麗歌子(日本)

05決勝の舞台で湯浅を待っていたのは、今年ついに黒帯の舞台に上がってきたマイサ・バストス。名門GFチームに所属しながら、NYのユニティ柔術でもトレーニングをしている21歳は、今年のヨーロピアン、パン、アブダビ・ワールドプロと全て優勝している脅威の新顔だ。17年のアブダビ・ワールドプロの決勝戦では茶帯ながら湯浅を2-0で破っており、EBI 18(ノーギ)でも湯浅からチョークで一本勝ちを収めている。この数年ルースター級で無敵を誇っていた湯浅にとっては、最大にして初めての難敵の登場といえる。

06序盤にダブルガードでペナルティを受けた両者。スタンドで再開後、バストスは湯浅より一瞬先に座ると、上を選択して2点を獲得した。すぐさま湯浅の足をさばいて左に低いパスを仕掛けるバストス。あわやサイドに付くかと思われたが、湯浅は左足をこじ入れて守る。これでアドバンテージを獲得したバストスは、さらに左に回ってのパスを狙ってゆくが、湯浅はインヴァーテッドを用いて対処した。

07湯浅の左足を掴んだバストスに対して、湯浅は右足で内側フックを作るとそのまま後転してスイープ。バストスはあっさり下のポジションへ。これでスコアは2-2だが、アドバンテージを考え戦いやすい下になることを厭わないという選択か。

08左でラッソーを作ったバストスは、右足を上げて三角の仕掛けをみせる。だが湯浅も背筋を伸ばして対応すると、左腕を中に入れて難を逃れる。するとバストスは、すかさず湯浅の右足にデラヒーバで絡んで得意のベリンボロに。これで湯浅の体勢を崩して、上を取り返して4-2とした。

09残り6分。湯浅は左でラッソーを作ると、バストスは体を反らせて距離を取る。そこで湯浅が立ち上がって上を取り返す。4-4、アドバンテージで上回っているバストスは、左側でラッソーを作り、右手で湯浅のラペルを引き出して掴む。さらに右でも湯浅の手首を掴み、両足を効かせてコントロールを続ける。上になってからの湯浅は、バストスのガードワークを崩してパスのアドバンが欲しいところだ。

10残り3分のところで、バストスは湯浅の左側のラペルを湯浅の右足裏を通して掴む。湯浅はバックこそ許さずに対抗したものの、後転を許してスイープの2Pを献上することになり、バストスが6-4とリードを拡げた。あわやそのままマウントかという体勢だったが、湯浅はエビで距離を取る。すると、バストスは背中を付けてダブルガード状態に。

11湯浅は内回りからバックを狙うが、バストスは対応して上に。残り2分。湯浅がバストスの右足を掴んだままシットアップすると、バストスはここもあっさり下になり、湯浅をクローズドガードに入れた。湯浅がスイープを決めたというより、アドバンテージ1つ分勝っているバストスが戦略的に下を受け入れているようだ。

12湯浅は右ヒザを入れてバストスのガードを割るが、バストスは巧みに足を効かせてそれ以上の侵攻を許さない。さらにバストスは湯浅のラペルを自らの右足に巻きつけると、自らの右足も巻き込んで掴み、湯浅をコントロールしてゆく。

13残り1分。右足の動きを制された湯浅だが、ここで素早く飛び込んで前方回転し、バストスのグリップを破ることに成功。すぐに右に回ってのパスを仕掛けるが、バストスはインヴァーテッドの形で両足を入れて対処。この試合でもっとも湯浅がパスガードに近づいた場面だったが、一瞬でも抑えるまでは至らなかったためアドバンテージは入らない。

14その後、インヴァーテッドの形からスピンしたバストスが三角絞めで逆襲。湯浅は立ち上がりながら体をずらして逃れるが、残りはわずか20秒。湯浅の右足を抱え右腕を掴んでコントロールするバストスは、オモプラッタを仕掛ける形で湯浅にパスを許さず、トーホールドも防いで試合終了に。バストスが黒帯初の世界大会出場で初優勝を決めた。

湯浅、世界5連覇ならず。そしてバストスにはこれで3連敗となってしまった。今回はスコアこそ6-6の同点だったが、序盤にパスガードのアドバンテージを奪われて以降、最後までバストスに試合をコントロールされての完敗だった。

これまで世界を独走してきた湯浅の前に、ついにライバルが登場──いや、最先端技術を持った世界的強豪がズラリと揃う名門チームで練習し、国際大会に精力的に出場して経験を重ね続け、しかも年齢も若いバストスは多くの男子柔術家が越えようとしている──巨大な壁になりうる存在かもしれない。

とまれ今回の敗北は、黒帯で世界4連覇という偉業を成し遂げた湯浅麗歌子の新たなストーリーの始まりといえるだろう。新しく現れた大きな目標に向けて、湯浅がどのような成長を見せてくれるのか。女子軽量級が新時代に突入した2019年のムンジアルとなった。

■女子ルースター級リザルト
優勝 マイサ・バストス(ブラジル)
準優勝 湯浅麗歌子(日本)
3位 セレーナ・ガブリエリ(ブラジル)、タミレス・アキノ(ブラジル)

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