【Special】月刊、青木真也のこの一番:番外編─フォラヤン戦を振り返る。「飛び込むのでなく歩くように」
【写真】フォラヤンに打たせる──青木自身が世界戦の作戦を明かす(C)KEISUKE TAKAZAWA/MMAPLANET
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ3月の一番、番外辺は31日に開催されたONE90から青木真也✖エドゥアルド・フォラヤンの一戦を振り返ってもらった。
──では、青木選手自身の言葉でフォラヤンを破った一戦を語ってください。
「ハマりました」
──ハマったとは?
「作戦がハマりました。久しぶりですね。ここまでちゃんと自分のゲームでコントロールできたのは、最近ではなかったです」
──まずテイクダウンなのですが、あのボディロックテイクダウンを決める前のシングルでの組みも全く強引でなかったです。
「スタンドでちゃんと立ち会おうと。理屈をいうと、ラカイってカウンターパンチャーなんですよ。全員待ちの選手で、待ちの選手に対して自分から攻めていくから負けるんじゃないかと仮説を立てていました。その作戦を立ててくれたのは飯村(健一※大道塾吉祥寺支部長)さんだったんですけど、とにかく相手に先手を出させようというものでした。
そのためには近い距離にいる。右手で触れるぐらいの距離にいて左の蹴りを蹴る。そうすると相手が先手を出してくるかと」
──大正解でしたね。ミドルハイを繰り返し、右手が届く距離は組める距離でもある。組まれて倒されたくないフォラヤンはプレッシャーを感じていたと思います。そして自分から手を出す。テイクダウン防御は上達しましたが、青木選手にはやはり組まれたくなかったはずです。
「この右手を嫌がって下がる。そこでも飛び込むのではなくて、歩くように詰めていきたい──それが飯村さんの作戦でした」
──組みついたシングルもまさにそのような感じでした!! 何より左の蹴りだけでなく、左ヒザも出した時は痺れました。「なぜですか?(笑)」
──あれをやっているから、組んだ時……いや組まれた時でも青木選手の庭になると思ったんです。
「理屈はありますよね。プレッシャーを掛けて行って、嫌がってパンチを出してくるとヒザや蹴りを合わせる。そうすると相手の構えが立ってくる。そうなると組みましょうと」
「いつもだったらすぐにクリンチで行こうとしていたと思いますが、今回はゆっくり構えました。フォラヤンも構えていたし、そういう状況でもできるんだよ──と見せる。その後は長期戦になってもスタミナも持つので」
──組んで倒した後も、ハーフという言わば最も安全なところから、抑え込みでもあり、仕留められる肩固めを選択したのですか。
「作戦としては、まずハーフで抑えること。控室で一緒だったビビアーノとも、ラカイを相手にすると取り合えずハーフで抑えることだって2人で話していたんです。まさにその通りになりました。あそこからはマウントでも、肩固めでもなんでも良かったんです」
──マウントなら返されるかもしれないですが、肩固めは抑え込みにもなるのでリスクを少なくして攻めることができるので仕掛けたのかと思っていました。
「そこまでは意識していなかったですね。肩固めでなく、マウントから十字かなっていうぐらいのイメージで。肩固めはたまたまカチって形で入った。
これはどう転んでも取れるという感じでした。でも確かにハーフからの十字も、ハーフからのバックチョークもないわけですしね。とにかくハーフで抑えていく。あの肩固めに関しては、これまでちゃんとやってきた技術力が出たと思います。
マウントのまま極めることができたので。極める時、多くの選手がサイドにスライドさせるじゃないでですか」
──ハイ、その通りです。
「それをマウントのままで、ベタっとさせて取ることができたのは良かったです」
──100点満点ですね。
「本当にハマったから良かったです。フォラヤンは一発も強いんスよね。フィニッシュしたことで、あんまり強くないという人もいるかもしれないですが、そんなことないよと言いたいです。フォラヤンは強かったです」