【JBJJF】全日本ノーギ選手権 エキスパート・ライト級出場─道着で公園で練習する早大生・岩本健汰
【写真】岩本と練習仲間の篠田光宏(C)KENTA IWAMOTO
17日(土)、東京都墨田区の墨田区総合体育館でJBJJF主催「第7回全日本ノーギ柔術選手権」が開催される。
同大会のアダルトエキスパートライト級と同オープンクラスにエントリーしているのが、トライフォースの新星・岩本健汰だ。白帯時代から連戦連勝を重ね、今年3月の全日本ノーギオープン優勝、アジア選手権アダルト紫帯フェザー級準優勝と、着実に成長を続けてきた。
早稲田大学に通うインテリ柔術家は、どのような方法で強くなっているのかを尋ねた。
Text by Tsubasa Ito
――岩本選手はかなりお若いですが、お幾つですか。
「21歳で、来年の2月に22歳になります」
――早稲田大学の4回生ということですが、就職活動はいかがですか。
「大学院に進学します。理系なので、みんなだいたい大学院に行くんですよ。先進理工学部の応用物理学科というところで、強相関電子系という物理の勉強をしています」
――まったく何を意味するのか分からないですが、将来は研究者を目指すのでしょうか。
「同じ研究室出身の先輩は、メーカーの研究開発とかに配属されることが多いですね。僕はまだ将来のことはまったく考えていなくて、成り行きのまま生きているんですけど……」
――では柔術を始めたきっかけを教えてください。
「中学・高校と柔道をやっていまして、高校生の時は部員が僕と先輩の2人だったんです。僕も先輩も寝技が好きだったので、柔術魂というDVDを練習時間に見て、凄いなと思っていました。そこで学んだ技が柔道の試合でもけっこう決まるんですよ、
そして大学生になってすぐに、学校の近くにあるストライプル早稲田ヒルマ道場に入りました。大学に入ったら柔術をやろうと高校生の頃から決めていたので」
――白帯時代から大会で連勝を重ね、無敗のまま青帯になりました。
「高校2年生の頃から先輩と寝技の研究をしていたので、道場に入った時にはすでにちょっと経験があるという感じだったんですよね」
――ある程度、下地ができていたんですね。トライフォースに移籍したのはいつですか。
「大学2年生の初めですね。ストライプル早稲田にいた頃から、パラエストラ東京の昼柔術でよく芝本(幸司)先生と練習していて、すごく強かったので。もっと色々な人と練習したかったんです」
――11月に行われる第7回ノーギ柔術選手権では、アダルトエキスパートライト級と同オープンクラスに出場します。オープンには同門の坂本純選手もエントリーしていますね。
「純さんとは、池袋で一緒にノーギの練習をしています。でも、純さんは大会に出られなくなるかもしれないと言っていました。これからどんな選手がエントリーしてくるかわからないですけど、もちろん階級もオープンも優勝を狙っています。いつも練習していること以外は絶対に試合で出ないので、普段通りリラックスしてやりたいですね」
――今回はノーギですが、道着とノーギはどちらが得意ですか。
「同じくらいですね。でも、今年の全日本ノーギオープンで優勝しているので、実績としてはノーギのほうがあるかもしれないですね」
――ノーギはいつから始めたのでしょうか。
「トライフォースに入ってからです。ノーギの練習は週1回くらいですね。道着ありの時よりも足関をかける場面が多いので、今は足関を重点的にやっています」
――練習自体は週に何日行っていますか。
「予定が入っていなければ毎日ですね。平均すると週6くらいです。火曜日と木曜日はトライフォースのコンペティションクラスに出させてもらっていて、芝本先生の他にも嶋田裕太さんとか中村大輔さんとか金古一朗さんとか大塚博明さんとか、有名な黒帯の方たちと一緒に練習させていただいています。学生で時間があるからこそできることですよね」
――公園でも練習しているそうですね。
「トライフォースの練習仲間で岡本亜門さんという方がいて、道場が開いていない時間でも練習できたらいいねと話して始めることになったんです。
恰好はノーギの時もありますけど、だいたい道着を着てやりますね。冬場はジャケットの上から道着を着て、靴下を4枚くらい重ねて冷えないように。前はほぼ毎日だったんですけど、今は亜門さんが就職したので土日にやっています」
――それでも土曜と日曜日に続けているのですね。周囲から奇異な目で見られないですか。
「練習は夜が多いので。20時~0時とか。ジョイントマットを自転車で公園まで持っていって、アスファルトの上に敷いてやっています」
――通報されることはありませんか(笑)。
「警備員の人に『何やってんだ』みたいなことを強く言われたり、警察が通りかかった時に事情聴取をされたりとかはけっこうあります(笑)」
――やはり(笑)。岩本選手はオンライン・トレーニングにも熱心だと伺っています。
「トップ選手が出しているオンラインの映像を見ながら勉強しています。カイオ・テハとかキーナン・コーネリアスが多いですね。ただマネをしてドリルをするというよりは、自分のスパーリングを解析して、試行錯誤しながらそこに取り入れていくような形ですね」
――実戦の中に落とし込んでいくのですね。岩本選手がそこまでハマる柔術の魅力は何でしょうか。
「柔道は体格で劣っていたらほとんど成す術がないんですけど、柔術は技を研究することで、どんな相手でも絶対に攻略する糸口があると思うんです。あとは技バリエーションがたくさんあって、一つひとつが奥深いのも魅力だと思います」
――柔術家としての夢や目標は?
「最終的には世界でも認められるような強い選手になりたいです。いずれはムンジアルとか、海外の大会にも出たいと思っています」
――ところで柔術と物理の共通点はありますか。
「柔術は絶対に進化が止まらないと思うんですよ。新たな発見が常にあるし、学ぶことが無限にあるので。物理も同じなんですよね。どっちも常に新しい発見があるのが面白いところだと思います」