【Special】月刊、青木真也のこの一番:8月─その弐─ジェイク・シールズ×ハーマン・トレド&川名雄生
【写真】計量時のジェイク・シールズとハーマン・トラド (C)PFL
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ8月の一番、第二弾は8月16日のPFL2018#6からジェイク・シールズ×ハーマン・トレドの一戦を語らおう。
──8月の青木真也が選ぶ、この一番。では2試合目は?
「ジェイク・シールズ✖ハーマン・トレドですね」
──2カ月連続でジェイク・シールズが入ってきたと。これもPFL効果ですね(笑)。
「同じメンツですぐに試合をするという。1Rと2Rを取って、3Rにガードを取って逃げ切るという試合、ジェイクは今回も調子が良くなかったと思います。でもなんだかんだと、首の皮一枚つなげている。
ジェイクはPFLの試合間隔で戦うことが難しくなっているだけでなく、KO負けのあとでリカバリーも難しくなっているでしょうね。昔のようにバンバン行けていないですよね、今は」
──最終回は引き込んでクローズドガード。下手をすると8-10となりドローになるかもしれない試合展開でした。
「堅くは守っていましたし、最初の2つを取っているのも気合が入っているというか。力が落ちて、コンディションも良くないからこそ、ジェイクの本質が出ました。ガッツですよ。クローズドガードは上を向いているわけで、ガッツです。背中を見せていない。テイクダウンでも、ぐちゃぐちゃの局面で強さを発揮していました。
あとレイ・クーパーの息子が、強かった。ジェイクに勝って跳ねたんでしょうね。あれだけガンガン行って勝つというのも」
──プレーオフ初戦でブラダボーイとシールズの再戦が行われます。
「2カ月あったらジェイクが作ることができるのか……ですね。あとPFLでいえば川名(雄生)さんの敗北ですね。アレはショックでした。対応できていなかったことが。クリス・ウェードにしても、やっぱりグラウンドが強い。皆、グラウンドが強いというのがありました。
日本におけるスクランブルって、サブミッションのないもの。そうしたら体力勝負で勝る人が勝ってしまう。なのでサブミッションの重要性を感じました」
──ウェードと川名選手では泥臭い方の上下が入れ替わるスクランブル戦になるかと思いきや、ウェードがそれを遮断するようなギロチン主体のファイトに出ました。
「僕もスウィングすると思っていました。ファーストコンタクトで取れるって感じたんですかね。あれだけギロチンを狙い続けたのは、イージーだと思ったんでしょうね。結果、サブミッションの強さ。さっきも言ったように日本国内はサブミッションのないスクランブルに慣れてしまった。
ウェードは普通に柔術ができるレスラー。これは八隅(孝平)さんの『レスラーは柔術をやりましょう。柔術家はレスリングをやれ』という名言通り、ちゃんとやれってことですね」
──0勝1敗同士、PFLならでは初回で取ればボーナス3Pというのも作用したかもしれないです。結果的に1勝すればほとんどがプレーオフに進出できた状態ですが。
「このシステムは跳ねるかと思ったけど、0勝からの大逆転はないという試合の組み方で、結局はアメリカ人とロシアンとブラジル人が残るという凄く基本的なモノに落ち着いた」
──レギュラーシーズン最終戦は各階級とも0勝1敗と初参戦の顔合わせになり、ライト級などジェイソン・ハイが体重オーバーでジョニー・ケースは戦わずしてプレーオフ進出です。
「整備されたら有りだけど……KOされて45日で次の試合はダメだという倫理観も分かります。ただ1億円が掛かっていたら、選手は無理しますよね。このイベントが続くなら、3年間ぐらい必死にやって、1度当たれば人生変わるって考えますからね。
そういう意味でも川名さんは清々しくて良かった。ファイトマネーで食っていけるかもしれない夢を見ることができ、プロとしての待遇をアメリカで受けた。本人がやりたいと思って戦い、戦いが終わって納得できている。
自分の街から外に出て、『うわぁ強えぇ』というのを知って、『また頑張ります』と言える。後悔なく、また頑張ろうという気持ちになっているなら、どこかで僕も関わることができるかもしれない。燻っているんじゃなくて、清々しかった。Y&Kスポーツアカデミーの山城(裕之)先生と一緒に、自分達で切り開いて頑張った結果なので、僕は乗れました」