【UFC227】詰めも崩しもある、将棋=バンタム級世界最強決定戦=ディラショー×ガーブラント Vol.02
【写真】王者ディラショーにガーブラントが挑む、ダイレクトリマッチの行方は (C)Zuffa LLC/Getty Images
4日(土・現地時間)、カリフォルニア州ロサンゼルスのステイプル・センターで開催されるUFC227「Dillashaw vs Garbrandt 2」。メインは大会名にあるようにUFC世界バンタム級選手権試合=TJ・ディラショーとコディー・ガーブラントが立場を変えて臨む、2度目の対戦だ。
両者は昨年11月に世界王者だったガーブラントにディラショーが挑戦し、2RKO勝ちで王座奪取に成功している。元チーム・アルファメールの同門で、兄弟と呼び合っていた仲の2人だったが──ディラショーが元ヘッドコーチのドウェイン・ラドウィックの下に走った結果──アルファメールのボス=ユライア・フェイバーを巻き込み、非常に激しい中傷合戦を繰り広げるようになった。
そして、世界バンタム級王者だったディラショーは、2016年にドミニク・クルーズに王座返り咲きを許し、以降ハファエル・アスンソンにリベンジ、ジョン・リネケルを破り、ドミニクからベルトを奪ったガーブラントへの挑戦権を得ていた。
事前の予想では、キャリア11連勝で負けなし──前述したようにドミニクに勝ったガーブラント優勢という声が多かった。ガーブラントの最大の強味は、強烈な右のパンチを支える防御力と目にあった。スタンスはボクシングとレスリングに対応したクラウチングだ。
中間距離から内側のパンチに対しは、ヘッドスリップ、ダッッキングで攻撃をかわし、軸がぶれないので頭を動かしていても、テイクダウン防御にすぐに入ることができる。さらにいえば、ドミニクのように遠い距離で攻撃を散らして、惑わせてくる相手に対しても、その攻撃が届く距離だけに反応し、翻弄されることがない。
さらに自らの拳が届く距離に入ってきた相手には、その直前に構えをアジャストして迎撃態勢を取り、踏み込んできたところで右の拳で振り抜く。現代MMAで一つの時代を気付いた──ロングレンジからの虚実が入り混じった打撃を、手の届く範囲内だけで反応して駆逐したガーブラントは、さらにMMAを一歩進めたファイターとして歴史にすら名前を刻むことになった。
そんなガーブラントに対し、ディラショーは遠距離を取りサウスポー基調のスイッチヒッターとして戦いを挑んだ。ディラショーは右ジャブや右フックで相手の目を散らす、あるいは左ストレートで視線を防いでおいて左ハイという武器がある。が、初回の終了間際にオーソで距離を詰めたところで、迎撃の準備を整えたガーブラントのセンサーに引っ掛かり、右フックを合わせてダウンを喫している。
ロングレンジのフェイクに騙されないガーブランドを相手に、2Rになるとディラショーはオーソを続け、まるでシングルレッグでガーブラント左足を取りに行くような動きから、前足で蹴りを放った。ガーブラントはローと判断したのか、右手で払いに行く。この動きの上方をディラショーの左ハイは蹴り抜いた。
なぜ、ムエタイの構えはアップライトなのか。腕でブロックもせず、ハイをスウェイでかわす芸術的な動き──MMAでは、ハイよりもパンチとテイクダウンから身を守ることの方が先決だ。それゆえに、高度なボクシング防御を誇るガードブラントは、見えている範囲内の対処をし、左ハイを察知できずにダウンを喫した。
さらに少なからずダメージは残ったのだろう。判断力にも綻びが生じた彼は、自らの拳が届く距離で最大の武器である右のパンチを放ったところで、先に右フックを浴びて王座を失った。
MMAは詰め将棋だけでなく、将棋崩しの要素も含んでいる。そんな妙が折り重なり、前回のKO劇は生まれた。あれから9カ月、ガーブラントは蹴りに対して、どのような対策を練って来るのか。また蹴りに反応するからこそ、ディラショーは得意のシングルレッグからのバックテイクという道も開けてくる可能性がある。
遺恨を振り返るのは十分、純粋にオクタゴンの中でのパフォーマンス、アクションを楽しみたいバンタム級世界最強決定戦だ。
■ UFC227対戦カード
<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者]TJ・ディラショー(米国)
[挑戦者]コディー・ガーブラント(米国)
<UFC世界フライ級選手権試合/5分5R>
[王者]デメトリウス・ジョンソン(米国)
[挑戦者]ヘンリー・セジュード(米国)
<フェザー級/5分3R>
カブ・スワンソン(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)
<女子ストロー級/5分3R>
ポリアナ・ヴィアナ(ブラジル)
JJ・アルドリッチ(米国)
<ミドル級/5分3R>
チアゴ・マヘタ(ブラジル)
ケヴィン・ホランド(米国)
<バンタム級/5分3R>
ペドロ・ムニョス(ブラジル)
ブレット・ジョンズ(英国)
<バンタム級/5分3R>
リッキー・サイモン(米国)
モンテル・ジャクソン(米国)
<女子バンタム級/5分3R>
ベチ・コヘイア(ブラジル)
アイリーン・アルダナ(メキシコ)
<フェザー級/5分3R>
シェイモン・モラエス(ブラジル)
マット・セイレス(米国)
<フライ級/5分3R>
ホゼ・トーレス(米国)
アレックス・ペレス(米国)
<バンタム級/5分3R>
カン・ギョンホ(韓国)
ヒカルド・ラモス(ブラジル)
<女子ストロー級/5分3R>
ダニエル・テイラー(米国)
ジャン・ウェイリ(中国)
<バンタム級/5分3R>
マルロン・ヴェラ(エクアドル)
ウリジブレン(中国)