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【ONE73】ONE世界ミドル級王者ンサンに挑戦、長谷川賢がONEを選んだ理由―01―「強くなりたい」

Ken Hasegawa【写真】積んでいたモノを最高の体調で披露することができるか (C)MMAPLANET

29日(金・現地時間)、ミャンマーはヤンゴンのトゥウンア・ナショナルインドアスタジアムでONE73「Sprit of a Warrior」が行われ、そのメインで長谷川賢がONE世界ミドル級王者オンラ・ンサンに挑戦する。

長谷川といえば過去5年にわたり、DEEPメガトン王者からUFCで戦うことを見据えて、ライトヘビー級、ミドル級、そしてウェルター級まで階級を落とし、ひたすらオクタゴンを目指してきた。

Ameba TVが制作するドキュメンタリー番組= ONE DAY が、長谷川の1日を追うなかでMMAPLANETでは、ONEとの契約の背景と決意、そしてンサンとの世界戦について尋ねた。


――ONEに出場する。最近の日本人選手の契約ラッシュのなかで、長谷川選手ほど葛藤し踏ん切りをつける必要があった選手はいないのではないかと。ONEで戦うことを決めた要因はどこにあったのでしょうか。

「少し遠回りしても良いかな、ちょっとそう思ったからです。そこですね、一番は。難しいですけどね、本当に踏ん切りをつけるようなもので。だって、どこで試合をすれば良いのかってことだったじゃないですか」

――日本で試合をしていても、状況は打開できないと。

「行けないじゃんって。それが一番です。また待つのか……またっていうのは、チャンスを逃した自分が悪いんですけどね。でも、あの負けは納得いっていないです。死ぬまで一生、納得いかないです。裁定に納得もいっていないですが、何よりも自分に納得がいっていない。自分が許せない。

だから踏ん切りがついた風にしているだけかもしれないです。ついていないかもしれないし」

――ONEに出ることに対し、周囲の反応はいかがでしたか。

「相談をしたときに『挑戦してみるのも良いんじゃない?』と言ってくれる人が多かったです。状況を改める、新しい状況で戦うことが良いんじゃないかと言ってくれた先輩もいてくれたし。岡見(勇信)さんとか、ストラッサー(起一)さん、(山田)崇太郎さんも安西(信昌)さんもそうでした」

――現状を分かってくれている人の意見ですね。

「ハイ。僕に『待っていた方が良いよ』とは言えないんだと思います。だって、待っていても絶対じゃないですからね。日本でずっと勝っていても行けるとは限らない。チャンスを逃したのは僕だし。格闘技をやるようになって、最上位にくる失敗です」

――もっと割り切れているかと思ったのですが、なかなかそういう風にもなれないようですね。

「割り切れてはいないです。それは一生ないでしょう。でも、前に進まないといけないですから。結局、どこを目指すというのは人によって違うでしょうけど、一つだけ確実なのは――自分が強くあるのかどうかということ。ここは凄く大切なことです。そういう自分があって、どこを目指すのか。

だからONEという舞台で自分がどれだけ強くなれるのか。勝負してみよう、日本に踏みとどまっていてもこれ以上はない。そういう風に思いました。自分がどこまでできるのか、アジアという舞台で。次も一応、ワールドチャンピオンシップで強い相手と戦うことができるわけですし。

結局、自分がどれだけ強くなることができるのか。それがテーマだと思います」

――ひとえに海外といっても、他にも選択肢はあったと思われるなかで、ONEを選んだのはどういう理由からでしょうか。

「一番評価してくれたからです。そこですね」

――それ以前にONEにはどのような印象を持っていましたか。

「う~ん、あまり印象とかなかったです。自分が戦うということを全然考えていなかったので。でも、ファンとして見ているとアジアで一番大きな団体で、色々な選手を使っている。強い人もいれば、そうでもない人もいる。MMAというより格闘技、マーシャルアーツ。大会を見ていて色々なモノが見られるという、魅力があると思っていました」

――そのONE初陣が先ほども言われた世界ミドル級王者ンサンに挑戦。これまでミャンマーで試合をすることがあるとは、考えてもなかったと思います。

「全くなかったです(笑)。急遽、決まったことですし。3週間前ぐらいに聞いて。練習と練習の合間で、凄く疲れているときに連絡がきて……とりあえず『あとで返事します』と伝えました。で、練習を終えて少し考えた時に『体重を落とせればチャンスかな』と思い受けました」

――それだけ体重があったということは、その時に長谷川選手は何級で今後戦っていくつもりだったのですか。

「それはミドル級ですね。なので体を創ろうと思っていたんです。ONEの計量方法は違うので、体を作り直そうと思いました。ONEだとミドル級は93キロで水抜きをしてはいけないので」

――つまり事実上1階級上のONEでもウェルター級ではなく、ミドル級で戦っていこうと決めていたと。

「ユニファイドのミドル級で戦っても、水抜きは90キロぐらから始めているので、3キロぐらい筋量を増やしておかないといけないのかと。85キロのウェルター級……正直、ユニファイドのウェルター級で戦ったことはトラウマになっています。

やはりウェルター級で戦おうとしていた時期はケガばかりだったので、今ではないかと思いました。今後はそれもあるかもしれないと視野には入れてはいます。

ただ、今それをやるとまたケガが再発するかもしれないので、現段階ではミドル級でやろうと思っています。さっきも言ったように相手どうこうではなく、自分が強いかどうかなので。結局、最初に戻りました。強くなりたい。強い相手としのぎを削って、自分がもっと強くなりたい。なんか堂々巡りですけどね(笑)」

――ユニファイドのウェルター級で戦った時の長谷川選手、計量時の写真を改めてみると病人かと。それほど細いです。

「ハハハ。でも、自分じゃ分からないんですよね。普通に落ちている気もしていたし。でも、そうやって考えると最後の1週間で9キロとか落としていましたからね」

――あの頃と今、比較すると練習中の動きなどはどのような違いがありますか。

「あの頃は体重を作ることに追われて、練習ができていなかったと思います。そうッスね。それも今、客観的に考えて言えることなので。あの時は主観的に考えることしかできなかったです。でも、格闘技は試合で勝つことが目的なので。強さは相対的なモノです。

僕自身でいえば、個人的な強さを指標は絶対的なので、軽い時の僕と重い僕なら重いほうが強いです。ただし、その強くなるために必要な練習量がウェルター級で戦っているときは落ちていました」

<この項、続く

■ ONE73対戦カード

<ONE世界ミドル(※93.0キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]オンラ・ンサン(米国)
[挑戦者]長谷川賢(日本)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
レオナルド・イッサ(ブラジル)
ローマン・アルバレス(北マリアナ諸島)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
サゲッダーオ・ペットパヤータイ(タイ)
マー・ジャワン(中国)

<フェザー級(※70.3キロ)/3分5R>
ハファエル・ヌネス(ブラジル)
山田哲也(ロシア)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
アフマド・カイス・ジャスール(アフガニスタン)
チャン・レイ(中国)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ジェレミー・ミアド(フィリピン)
クリッサダ・コンスリチャイ(タイ)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
ソー・ダルワイト(アフガニスタン)
マイト・ヤイン(ミャンマー)

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