【Special】月刊、青木真也のこの一番:5月─その参─岡田遼×論田愛空隆「岡田選手は凄く上手い」
【写真】5月の青木真也が選ぶ、この一番は抑えが共通項になっていた (C)SUSTAIN/SUSUMU NAGAO
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ5月の一番、第三弾は5月13日に行われたプロ修斗公式戦から岡田遼×論田愛空隆の一戦を語らおう。
──5月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目、そして月間AOKI AWARDの受賞者は誰になるでしょうか。
「岡田遼と論田愛空隆で、岡田選手です。岡田選手が上手でした。格闘技って上手である必要はないのですが、彼は凄く上手でした」
──岡田選手のどのようなところが上手なのでしょうか。
「綺麗に構えて、間をしっかりと意識して、近くなるとレベルチェンジしてダブルレッグに入る。テイクダウンからグチャグチャすると亀でコントロールして、しっかりとフォークスタイル・レスリングの抑え方ができていて、ワキの下から殴る。教科書通りです」
──修斗ではガツガツやりあうことがもとめられ、一本至上主義みたいなところがありますが、実に北米MMAだったと。
「上手だし、凄く巧いですよ。パラエストラ千葉ネットワークって、色んなタイプの選手がいてどこの大会にも選手を送り出しているんですよね。きっと鶴屋(浩)さんの指導力がどうだっていうのではなく、良い場所を提供できるんだと思います。そういうなかで、あんなに上手な岡田がいる。
石橋佳大となんか普通の外国人選手(※トリスタン・グリムズリー)に負けて、再起後も舞浜の試合をケガで飛ばしたり停滞気味だったからこそ、あそこまで巧いかと。凄くはないんです。でも、出木杉君だけあって優等生的に努力でここまでやってきたんでしょうね」
──コツコツと努力できる選手だと。
「これを言うと傷つくかも知れないけど、彼に金を払おうとは思わない。でも、彼の試合は見てみたい」
──実は5月のMMA、青木選手は齋藤曜選手を破った平川智也選手を選出するのではないかと思っていました。足を使って消極的だと2度も注意され、その挙句に前に出て来た齋藤選手を打撃でKOした。あのMMAの妙は青木選手好みかと。
「平川に関しては、お前……格闘技舐めるなよって思っちゃいました。あれをUFCとか、大きな舞台で凄く強い選手を相手にやるなら分かります。
あのポジションの試合なんだから、アレは僕の格闘技のセオリーに反する。やっぱり勝負してほしい。頑張っている若い選手を応援するってことは、その選手への期待ということだから。それをあのレベルの試合で、ああいう風に戦うのは……格闘技って揚げ足取りじゃないから。攻防をしてほしいです」
──ズバリ戦略通り戦い、目的を成し遂げたことでやり切った感があったかと思ったのですが。
「あれが懸命、必死に勝つための策だったら、ああいう面白さはあっても良いなと振り返ることができたとしても、次に期待はできない。ずるっこいじゃん」
──ずるいっ!? 青木選手の意見とは思えないです(笑)。
「宇野さんがあの時の解説で、齋藤がプレッシャーを掛けていたと齋藤上げのコメントをしていたんです。あれはグッジョブだと思いましたよ。あの待っている感じは、チケットを買ってくれたお客さんに見せるモノとして……、やっぱり勝負しろよとなります。仕事なんだから。
アレで負けると後悔しか残らない。平川には勝負してほしかったです。勝ったから良いのかもしれないけど、アレで良しとは今後を考えても、そういう風になって欲しくないなと思います」
──なるほど。
「岡田は勝負していましたから。あの勝ち方は、次に繋がるので」
──平川選手に関しては、齋藤選手対策。その一点で、アレをやり切ったのかと。
「もちろんギロチン対策でしょうし、だからこそ次の試合は勝負してほしいですね。同時にギロチンも引き出しの少なさが露見してしまいましたね。組む前も組んでからも、そこは課題ですね。あと、論田の負けも今の子たちならではです。パンチの貰い方が」
──というのは?
「あそこで、あんな風に殴られているなら、寝ちゃえばって思っちゃいます」
──寝るというのは背中をつけてガードポジションを取るということですね。
「そうです。なんで、寝ないんだろうなって。スクランブルMMAの弊害というのか、盲点というのか。結果的に殴られるかもしれないけど、相手が見えるポジションを取ることは大切だと思いますよ。
とにかく、そこも含めて5月の頑張った20代の日本人選手は岡田遼選手です」