【Tokyo Int.Open 2018】東京国際&アジアマスター出場=塚田市太郎─01─「フィジカルを鍛えれば」
【写真】柔術家として強くなることを第一に考え、半年間のトーナメントから離れていた塚田(C) ICHITARO TSUKADA
24日(土)、東京都世田谷区の駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場でIBJJF主催の「東京国際オープン柔術2018」が、翌25日(日)には同所で「アジアマスター国際柔術2018」が開催される。
この両大会に連日で黒帯フェザー級にエントリーしているのが、塚田市太郎だ。昨年9月のアジア選手権以来、約半年ぶりの実戦復帰となるが、これだけトーナメント出場から離れていたのには理由があった。今年で38歳。ベテランと呼ばれる年齢に差し掛かったものの、柔術に対する情熱に衰えは感じられない塚田に話を訊いた。
Text by Tsubasa Ito
――試合出場は昨年9月のアジア選手権以来となります。ここまで試合間隔が空くのは塚田選手にとっては珍しくないでしょうか。
「こんなに空くのは初めてかもしれないですね。青帯だった14~15年前から月に1回か2回、一番出ていた時で年に30大会くらい出ていたので」
――なぜ、今回は試合間隔を半年も空けることとなったのですか。
「最近、試合をしていて一番強く感じていたのは、フィジカルで相手の選手とどっこいどっこいになっているということだったんです。そうすると、特別に相手よりも何かが抜きん出ていない限りは、突出することができないですよね。それでフィジカルを重点的に鍛えようと思ったんです。
フィジカルは半年とか1年とか、長いスパンでやっていかないと明確な結果が出てこないので、それで半年近く空いてしまいました」
――具体的にはどのようなトレーニングをされてきたのですか。
「ウエイトトレーニングのような最大筋力を上げるトレーニングと、筋力が縮むスピードを速くするトレーニングのふたつです。要するに100キロを持ち上げられるような筋力があったとしても、それを試合で使うのは結構難しいんです。
持ち上げたり引っ張ったりするスピードは、重くなればなるほど遅くなるじゃないですか。遅いスピードで筋力を出すのは、試合では現実的じゃないですよね。最大筋力を上げるトレーニングとともに、最大筋力に近い筋力を実戦で使えるようにするトレーニングが必要なんです」
――ではこの間はフィットネスジムに通い詰めていた?
「うちの道場はウエイトの器具がかなり揃っているので、ウエイトトレーニングは道場でやって、筋力のスピードを上げるような反射を使ったトレーニングは、陸上競技場のようなところに行ってやっています。
段階によってメニューが変わってくるんですけど、三段跳びとか走り幅跳びとか走り高跳びとか、陸上選手がやるようなトレーニングなのかもしれないですね」
――柔術の練習の中で、フィジカルトレーニングの成果は実感できていますか。
「そうですね。特にスピードが速い選手への対応は、上がっていると思います。車とかバイクでいうと、トップエンドが伸びたような感じですね。全開で回した時に、今までより馬力が出るとか、今までより回る感覚というんですかね。今までフィジカルで圧倒されていたような相手にフィジカル負けしないのと、リアクションができるのと」
――フィジカルの強化を決断した試合などはあったのでしょうか。
「アジア選手権の八巻(祐)君との試合ですね。彼は柔道でかなりならした選手ですから、フィジカルも見た目以上にありますし、速く動いても力が強いんです。ブラジル人とか米国人と戦っているような感覚があって、今までと同じ練習で勝ち上がるのは難しいんじゃないかなと思いました。
ただ、テクニックとか柔術の中身で自分が劣っているとは感じなかったので、自分もフィジカルをつければ対等に、あるいは上回れるんじゃないかなと思いました。それでフィジカルトレーニングを調べてやってみたんですけど」
――アジア選手権の敗戦がきっかけだったのですね。
「去年1年を通じてフィジカルを考えなければいけないなと感じていたんですけど、アジアの敗戦はそっちに舵を切るという部分で大きかったかもしれないですね。それまでは柔術と並行してやるという感覚だったんですよね。アジアで負けたのをきっかけに、ほとんど練習をフィジカルのほうに振って、空いた時間で柔術をやるような感じでした」
――現在の比重は?
「半々くらいですね。強度の高いトレーニングに体が慣れてきたので、1月の中旬くらいから少しずつ柔術を増やしていきました」
――そしてトーナメントに戻ってきたと。
「そうですね。もともと半年くらい空けたいなと思っていたんです。3月にポイントがつく大会があるということで、トレーニングの成果を試す意味でもタイミングとしてはよかったなと」
――東京国際オープンのアダルト黒帯フェザー級には、色帯時代から幾度となく戦っている加古拓渡選手や、昨年2度敗れている大塚博明選手もエントリーしています。
「そうなんですよ。大塚さんは分が悪くなってしまったので、やり返したいなという気持ちがあります。前回はフィジカルを重点的にやる前でしたから、今回どういう結果になるのか自分でも興味深いですね。2人とも試合をしたい相手ですし、勝ちたい相手ですから、良い相手がいてよかったなと思います」
――東京国際だけでなく、翌日のアジアマスターインターナショナルにもエントリーされています。
「自分も今年38歳ですし、マスターも大きな可能性の一つとしてありますから、両方で成果を出せるかやってみたいですね。東京国際の翌日ですけど、今までは土曜日に名古屋で試合をして、日曜日は東京で試合とかもあったので。それを考えれば今回は同じ場所ですし、階級とアブソリュートが別々の日にあると考えれば、まあ普通のことですよね」
――年齢は気になるものですか。
「思ったより気にならないですね。若い者には勝てないと思ったことはないですし。多分、みんなも頑張ればできるんじゃないかと思いますけどね。みんな気持ちのほうが先に萎えてしまうんじゃないですか。体のほうはできると思います」
――これほど長く柔術を続け、38歳になろうともなおも柔術のためにフィジカルトレーニングという新しいジャンルに挑戦しています。高い向上心を維持する秘訣はどこにあるのでしょうか。
「自分、柔術を始めたのが2002年くらいなんですけど、青帯の2004年にブラジルへ行ったんですよね。それがすごくハマったというか、自分の人生にうまくフィットしたというか。そこから柔術を中心に生活を考えることが、ごく自然になったんですよね。それがずっと続いている感じです。
やっぱりミヤオとかメンデスの出現はデカいですよね。彼らは柔術を一変させましたから。ミヤオ兄弟は紫帯の2012年くらいに日本に来て、自分もスパーリングをしたんですけど、同じ競技とは思えないくらいの衝撃を受けました。
相手は紫帯なのに何もできないんです。そもそも、何をされているかが分からないんですよ。こっちの動きに対して全部リアクションされてしまうね。ミヤオを体感してこんな柔術があるのかと感じた時に、改めて凄い競技だなと。モチベーションがすごく上がりました」
<この項、続く>