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【ONE68】3階級同時制覇へビビアーノに挑戦。マーチン・ウェン─02─「3階級とも防衛していく」

Martin Ngyen【写真】ONEは東南アジア各国に力道山を誕生させつつある (C)ONE CHAMPIONSHIP

24日(土・現地時間)、タイ・バンコクのインパクト・アリーナで開催されるONE68「Iron Will」で、ONE世界バンタム級王者ビビアーノ・フェルナンデスに挑戦するONE世界フェザー&ライト級王者マーチン・ウェン・インタビュー後編。

ベトナム系豪州人のウェンは、北米MMAとは一線を画したONEの路線こそ、彼の目指すモノと断言する。そのウェンが、世界に与えた3度のショック──去年の3試合を振り返りつつ、ビビアーノ戦について語った。

<マーチン・ヌグエン・インタビューPart.01はコチラから>

──欧米文化圏で育ってもアジア人種のマーシャルアーツ感は、欧米人と違ってくるのですね。

「そうだね。マーシャルアーツを学ぶことに敗北はない。常に得るものがあるというのが僕の考えだからね」

──とはいっても母国ではUFCの知名度は圧倒的だと思いますが、ONE2階級王者のマーチンはどれぐらい人々に認知されているのでしょうか。

「豪州ではそれほど多くの人がONEをフォローしているわけじゃない。ただ、もちろん僕の周囲や以前の職場の人間は僕を通して、UFCだけないMMA社会があることを知っている。

僕もマーシャルアーチストとしてロールモデルになれるよう、豪州で認められるために努力していくよ」

──なるほど、ONEで戦うようになったマーチンがその実力の片鱗を最初に我々に見せたのが、横田一則選手を相手に初回KO勝ちした時でした。あの試合を見て、勝手ながら『この選手は本物じゃないか』と思った次第です。

Ngyen vs Yokota「アハハハハ。ヨコタは凄く経験があり、DEEPのチャンピオンでもあったし日本のベスト……いや世界のベストの1人だよね。あの時、彼はガフロフに敗れ、そこから巻き返しを図る状況だった。

僕にとってはキャリアのなかで初めて、本当の意味でスタンディングバトルとなり、自分が目指す位置に辿り着くには、どれだけの技量が必要が推しはかることができるファイトだったんだ。そうだね、ヨコタ戦は僕にとって自分が成すべく道を進むための最初の一歩になった」

──横田選手を初回3分26秒でKOしてから7カ月後、マラット・ガフロフから2R2分20秒でKO勝ち。キャリア唯一の敗北を喫していた相手にリベンジを果たし、ONE世界フェザー級のベルトを巻いた試合で、2度目のショックを与えられました。

Ngyen vs Gafrov「またショックだったんだ(笑)。マラットと最初に戦った時はしっかりと練習もしてフィジカル的には問題なかったけど、2度目の試合とはメンタルが違っていた。僅か41秒でギロチンに敗れ、再び戦うまでにしっかりと経験を積んだ。すぐに再戦をするのではなく、そこまでに経験を積んでマラットとの再戦を迎えることができた。

彼がチャンピオンであろうがなかろうが、マラットと戦わなければいけなかった。いや、倒さなければならなかったんだ。僕は完全なアンダードッグで、誰もマラットに勝てるなんて期待をしていなくてもね」

──そのような前評判だったことは確かです。だからこそ右のカウンターで倒した時は、本当に驚かされました。あのタイミングは本当に素晴らしかったです。

「イエス。全てはタイミングなんだ」

──そして、昨年11月にもう一度、さらに大きなショックを与えてくれました。後ろ回し蹴りに右を合わせて、エドゥアルド・フォラヤンをKOし今度は世界ライト級のベルトを手に入れます。

Ngyen vs Foryang「エドゥアルドはホームタウン・ヒーローで、2万人のファンのサポートを受けていた。そしてフィリピンのナショナルヒーローというだけでなく、本当のチャンピオンで本物のマーシャルアーチストだ。

何より僕にとっても素晴らしい友人だし、彼がどれだけの努力をしてシンヤ・アオキからベルトを獲ったのかも知っていた。シンヤ・アオキに勝つことって、それは大事件なんだよ。そんな大仕事をやってのけた友人と戦わなければならなかった。

エドゥアルドは『これはマーシャルアーツだ。僕たちは求められれば、戦わなければいけない』とメッセージをくれたんだよ。戦うと決まった時から僕は彼を倒すためのゲームプランを練り始めた」

──スピニングバックキックにパンチを合わせたのも作戦だったのですか。

「あれは作戦じゃなかった。僕らのストラテジーはテイクダウンすること。そしてサブミッションかパウンド、寝技で仕留めることだったんだ。それがメインゴールで、2Rが始まり僕はテイクダウンにいくつもりだった。

でも多くのパンチとキックを被弾した。同時に彼は何度もスピニングバックキックを蹴ってきた。だから僕はテイクダウを奪うためにもアウトサイドにステップし、彼の攻撃をかわすタイミングを計っていた。そうしたら、そこからステップインしパーフェクトな右を打ち込むことができたんだ。

MMAで有効なパンチを当てることができるタイミングは、テイクダウンを決めるタイミングに通じている。テイクダウンのためのステップインは、パンチを当てるためのパーフェクトなタイミングだったんだ」

──あの素晴らしい二階級制覇から、次は試合自体でなく試合の決定で世界をアッと言わせました。7カ月前に70.3キロで戦い、4カ月前は77.1キロのリミットで試合をし、今度は65.8キロで戦う。こんなことは可能なのですか。

「誰もやってのけたことはないよね。ただ、エドゥアルドと戦った時も71キロほどしかなかった。エドゥアルドは78キロだったけど、自分の動きをするために体重を増やそうとは思わなかった。だから65.8キロの体を作るのは簡単だよ。

実際に現時点で66キロになっているし、体調管理はバッチリだよ。明日戦えと言われても大丈夫なぐらいさ」

──ONEが新たな計量方法を用いてからは、普段の体調管理なども変化したのでしょうか。

「ニューサウスウェールズで最高の栄養士についてもらって、練習と減量が融合されてから本当に調子は良いよ。食事も彼女が与えてくれたメニューに則して摂るようにしているし、彼女は僕の先生であり、師匠でもある。

今でもこの体重でいることが非常に心地良いし、バンタム級王座を取る準備はしっかりとなされているよ」

──王者ビビアーノ・フェルナンデスも非常に経験豊かな選手です。

「ビビアーノはレジェンドで、ウォリアーだ。10年以上、このスポーツで栄光を手にしてきた。彼のような選手と戦えることが光栄だよ。この試合は自分の実力を試す絶好の機会だと思っている。

ビビアーノ戦は僕が歴史を作る第一歩というだけでなく、マーシャルアーチストとして彼と戦えることがとても嬉しいんだ」

──ビビアーノに対して、マーチンのアドバンテージはどこにありますか。

「う~ん、彼は年を取っているということかな(笑)。スタミナは僕の方が上だろうし、スピードも僕の方が速い。ビビアーノは筋肉が多いけど、体のサイズは僕の方が大きい。ただし、試合が始まってみないと分からないことは多いよ。

彼はグラウンドだけでなくスタンドも強い。ただ、僕もスタンドだけでなくグラウンドでも戦うことができるからね」

──3つのベルトを獲った場合、今度は何級で戦っていくつもりですか。

「3つともだよ。3つの階級で防衛していくつもりさ。それを今年中に成し遂げようと考えている」

──!! マーチン、忙しいところをありがとうございました。日本のMMAファンに何かメッセージがあればお願いします。

「思い切りやり合うから、ビビアーノ・フェルナンデスとの試合を楽しみに欲しい。この試合は距離を取り合うようなことはない。必ずどちらかがフィニッシュし、どちらかがフィニッシュされるファイトになる」

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