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【Pancrase292】ISAO戦へ、粕谷優介―01―「僕には他の選手と違って一つ、断言できることがある」

Yusuke Kasuya【写真】粕谷にとってUFCでの日々とはどのようなものだったのか――も聞かれた(C)MMAPLANET

10日(日)、東京都江東区のディファ有明で開催されるPancrase292で粕谷優介がISAOと対戦する。

昨年11月のアレックス・ヴォルカノフスキー戦に敗れ、UFCをリリースされた粕谷は、高校卒業時から務め人を10年以上続け、自らのジムも経営しているファイターだ。「UFCを切られたらMMAを辞める」と公言していた彼が、なぜパンクラスを選択し、現役生活続行を決めたのか。

8月の松嶋こよみ戦の判定負けを経て、今回のISAO戦にどのような気持ちで臨むのかをインタビューすると――非常に粕谷らしい、彼の人生観に即した格闘技観が聞かれた。


――ISAO戦まで1週間を切りました。現在のコンディションはいかがですか。

「前回の試合が初めてのフェザー級で減量が大変だったのですが、今回は調整法を変えたので前回よりも上手く落とせそうです」

――もう1年以上前になりましたが、ヴォルカノフスキーにTKO負けを喫しUFCをリリースされました。粕谷選手がUFCを切られても、MMAを続けるのは正直なところ意外でした。

「僕も辞めると思っていました。実際、リリースされたばかりの時はすぐには続けようとは思えなかったです。それが少し時間を置くと、格闘技が好きだから戦っていたことを思い出したんです。UFCの呪縛から解き放たれたというか……」

――UFCの呪縛とは?

「格闘技が楽しめていなかったです。どの試合も勝たないといけないのは当たり前なのですが、常にリリースされることが頭にあって、その状況で戦っていると思い切って戦えない……硬くなってしまうという感じでした。それが結果にも影響したのかと。

それと『また試合が見たい』と言ってもらえることが多くなって、そう言ってくれる人がいるのであれば、そのためだけというのはアレですが、そのために試合をするのも有りなのではないかと考えるようになったんです。それで格闘技が楽しくなれば……と思って続けることにしました」

――UFCでは思い切り戦うことができなかった。2015年9月の日本大会、ニック・ハイン戦を微妙な判定で落としたのが痛かったですね。

「う~ん、今さらながら負けを認めていないです(笑)。だとしても、ヴォルカノフスキーに勝てない時点でチャンピオンにはなれないわけですから、遅かれ早かれリリースされていました」

――UFCは世界一を目指して戦う場。では、今はどこを目標にMMAを戦っているのでしょうか。

「階級を落としたのもありますが、心機一転デビューしたての頃と同じようにただ強くなりたいという意識ですかね。強くなっている実感はあるので、それを試合に出したい。なのでUFCの時ほど張り詰めた感じで戦っているわけではないですね」

――MMAを続けることに対し、奥様の反応は?

「これまでも『続けても、辞めてもやりたいことをやるなら応援するよ』と言ってくれていました。UFCをリリースされてからは、僕はやりたくないと思っていても『どうせ、続けるでしょ。もう少しすれば、やりたくなるよ』っていうことを時々言っていましたね。だから僕自身よりも、彼女の方が僕のことを分かっているんだと思いました。

僕自身、ここで辞めたら悔いは残るとは思っていました。そして、これ以上伸びしろがない時が辞め時だと」

――粕谷選手は未成年の時から自分一人で生き抜くという人生を歩んできました。でも『今も強くなっている。成長がなくなれば引退』という言葉は、そのような人生を歩んでいない他の大勢の選手と同じ意見なのですね。

「アハハハハ。悩むというか、格闘技をやり続ける云々よりも父親として役割を果たせているのか。そのことで考える方が多いです。それを嫁に相談すると、『気にしないで』と言ってくれますけどね……」

――愛する女性に支えられて、好きなことができる。とんでもなく幸せ者じゃないですか(笑)。

「それはもう妻には頭が上がらないです(苦笑)」

――MMAを続けるうえでパンクラスという選択、そして階級変更が伴ったのは?

「もともとフェザー級に落とせると思っていました。UFCをリリースされたので、気持ちを切り替えるのに階級変更も有りかと。パンクラスで戦うことを決めたのは、すぐに声を掛けてもらったこと。これは大きいです。凄く嬉しかったので。

それと今、強い選手がいるのはパンクラスかなと。自分の基準としては、勝てなさそうな人と戦いたいというのがあるので。一本取れるイメージがわかない選手と試合を組んでほしいというのが、基本としてあります」

――27歳(※現在は28歳)の粕谷選手が、24歳(※現在は25歳)の松島選手と戦い、一本が取れず、判定で敗れた。あの敗北でも色々と考えることはなかったですか。

「年齢を感じた……というのはありました。でも40歳近くになっても活躍している選手もいますし。負けたことはもちろん悔しかったですが、ここから強くなれば良いと敗北後にすぐに思うようになりました」

――松嶋選手に敗れた次の試合のオファー、対戦相手がISAO選手だったことに関してはどのように思いましたか。

「僕自身、次はランキング下位の選手かランキング外の選手と戦うことになると予想していたので、ISAO選手と組んでもらえるということは負けても評価してもらえているのかと、ちょっと嬉しかったです」

――その分厳しい相手です。

「ここで負けてしまうと何でもないファイターになってしまいますね。凄く大切な試合です。ただし、僕には他の選手と違って一つ、断言できることがあるんです」

――それは?

「最悪、ISAO戦で負けたとしても格闘技以外、僕の人生は物凄く充実しているということなんです」

<この項、続く>

■Pancrase292対戦カード

<ライト級KOPT/5分5R>
[王者]久米鷹介(日本)
[挑戦者]徳留一樹(日本)

<ウェルター級/5分3R>
佐藤天(日本)
村山暁洋(日本)

<フェザー級/5分3R>
松嶋こよみ(日本)
カイル・アグォン(グアム)

<フェザー級/5分3R>
ISAO(日本)
粕谷優介(日本)

<バンタム級/5分3R>
佐久間健太(日本)
藤井伸樹(日本)

<フライ級/5分3R>
上田将竜(日本)
安永有希(日本)

<ストロー級/5分3R>
井島裕彰(日本)
前山哲兵(日本)

<ストロー級/5分3R>
八田亮(日本)
江泉卓哉(日本)

<フライ級/3分3R>
荻窪祐輔(日本)
曹竜也(日本)

<フェザー級/3分3R>
松岡嵩志(日本)
MIKE(日本)

<女子バンタム級/3分3R>
東陽子(日本)
キム・ミュンボ(韓国)

<ライト級/3分3R>
TAG(日本)
亀井晨佑(日本)

<フライ級/3分3R>
杉山廣平日本)
猿飛流(日本)

<フライ級/3分3R>
廣中克至(日本)
水谷健人(日本)

<フライ級/3分3R>
渡辺竜也(日本)
後藤丈治(日本)

<ストロー級/3分3R>
野田遼介(日本)
御代川敏志(日本)

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