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【WJJC2017】アブソルート級 ロに競り勝ったブシェシャがホジャ―に並ぶムンジアル10冠を達成

Open【写真】ついにホジャ―・グレイシーに並ぶ世界10冠を達成したブシェシャ(C)MMAPLANET

1日(木・現地時間)から4日(日・同)にかけてカリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア大ロングビーチ校内ピラミッドで開催されたブラジリアン柔術世界選手権=ムンジアル。柔術世界一を決定する世界大会レビュー第15 回は、本年度の地上最強競技柔術家を決める無差別級の模様をお送りしたい。

連覇を狙う優勝候補筆頭のブシェシャことマーカス・アルメイダは、一回戦はイゴール・シュナイデルを腕十字で、準々決勝はモハメッド・アリーをチョークで順当に仕留めてみせた。そして準決勝は、昨年決勝を争ったエルベース・サントスと激突。立ち技の攻防が続くなか、サントスの凄まじい崩しでその巨体を場外まで吹っ飛ばされたブシェシャだが、ブレイク後に猛然とシングルレッグへ。ボディロックに切り替えながら突進し、逆にサントスに投げられて下になるも、そのままスクランブルして豪快に倒して上を取りきり2点先制。その後は上からサントスの仕掛けを捌き、決勝進出を果たした。

もう一方のブロックから勝ち上がって来たのは、今年のヨーロピアン、パン、ブラジレイロにおいて階級別&無差別を完全制覇したレアンドロ・ロ。初戦はスーパーヘビー級のダニー・ジェラルドからテイクダウンを取り、その後は卓越したバランスで上をキープして勝利したロは、準々決勝でジョアオ・ガブリエル・ホシャと対戦した。

この難敵相手に後方回転スイープで先制したロは、後半はあからさまな後退戦を展開。スタンドで迫るホシャに対して下がってペナルティを取られると、その後は「場外側まで下がっておいて、最後に体を入れ替えてホシャを押し出す=ペナルティは取られない」という露骨な逃げ戦略を駆使し、勝利した。そして準決勝でもロは、序盤でルイス・パンザのシッティングガードを見事にさばいてパスし、そのリードを守り抜いての勝利。自分より体格上の相手に対し、爆発力を生かして前半で加点し、守りきる戦略が功を奏しての決勝進出だった。

01<無差別級決勝戦/10分1R>
マーカス・アルメイダ(ブラジル)
Def. by
レアンドロ・ロ(ブラジル)

試合開始時にハグした練習仲間の両者。とはいえ、世界一の称号がかかった舞台。階級別と合わせて合計10度目の世界制覇を目指すブシェシャ、この日の階級別決勝でマレガリにまさかの敗北を喫したロ、どちらも譲る気は微塵もないだろう。

02スタンドで組み合った後、まず引き込んだのはロ。自らの左足を、ブシェシャの右足にデラヒーバのように絡めながら、さらにブシェシャのラペルを引き出し、自らの左足とブシェシャの右足を巻き込んで左手で握る強固なガードを作った。

03体格に勝るブシェシャは、プレッシャーをかけてロを二つ折りにしようとするが、強靭な肉体を持つロは体勢を戻し、やがて空いている右手でブシェシャの襟をしっかり掴む。そこからロは三角を狙うが、ブシェシャはすぐに頭を抜く。

04やがてブシェシャを崩しきれないと判断したか、ロはクローズドガードに移行。立ち上がったブシェシャがヒジでプレッシャーをかけると、ロはガードを開く。そこにすかさずブシェシャが前に強烈なプレッシャーをかけると、ロはすぐに前転してブシェシャの右足を取りに。さらにロはその右足に絡んで50/50の体勢を作ってから、シットアップで上を取りにゆく。

05下になりかけたブシェシャはしかし、すぐにスクランブルへ。そのまま豪快にロを抱え上げてテイクダウン。対するロも、倒された勢いのまま足でブシェシャを跳ね上げて逆に上へ。しかし、ブシェシャはまたしてもスクランブルに持ち込みロの下半身に絡みついてゆく。ロはエビでブシェシャの肩を押し、ブシェシャに捕まれたズボンが脱げた状態でエスケープ。この凄まじい攻防の結果、ロはスイープのアドバンテージを獲得。同時にロが場外に出たペナルティとして、ブシェシャにもアドバンテージが与えられた。

06残り5分でスタンドから再開。クローズドガードに飛びついたロは、一瞬ガードを開いて下降した後、再び両足でブシェシャのヒザのあたりを挟む得意のスイープを狙うが、強靭な足腰を持つブシェシャは崩れない。ロがガードを開けると、ブシェシャは一瞬でその右足を対角線に流してのレッグドラッグへ。横に付かれかけたロは、背中を見せて前転して再び50/50の体勢で足を絡める。この攻防で、ブシェシャがアドバンテージ一つリードを奪った。

07やがて50/50の体勢から、ロがシットアップして上になり2-0で逆転。残り時間は2分だ。対するブシェシャは素早く横に回って足を解除すると、ロの右足を抱えてのテイクダウン狙い。すかさず反応したロもブシェシャの右足を掴んで投げるが、なんと顔で受け身を取ったブシェシャは、またしてもスクランブル。ロの右足を抱えたまま立ち上がると、ダブルレッグに移行して豪快なテイクダウンに成功する。そのまま抵抗するロを押さえつけてポイントを2-2とし、アドバンテージ差で再逆転した。

08残り30秒。体勢を低くするブシェシャに対して片襟を取ったロは、最後の力を振り絞って跳躍するように足を抜いて立ち上がると瞬時にブシェシャをがぶって崩し、そのまま左足を取って突進してのテイクダウンを狙っていく。ブシェシャも即座に反応。バックステップしながら体勢を立て直し、ロの試みを潰すことに成功した。 

09ここで客席からブシェシャを讃える大チャントが湧き上がる。ブシェシャはそのまま、動けないロをがぶったまま残り20秒を過ごし、試合終了。力を完全に使い果たし、そのまま動けない両者。その姿は文字通りノーサイドの様相を呈していた。

世界最強決定戦の名に相応しい激闘となった最終試合。勝敗の焦点となったのは、極限の身体能力を持つ両者による凄まじきスクランブル合戦。体格に勝るブシェシャはロにスイープを取られかけても下を譲らず、また勝負所ではスクランブルから抵抗するロを抑えて上を取り切ってみせた。

スイープやパス等、最高度の柔術技術を持つ者同士の戦いは究極的にはスクランブルの争いとなり、そこでは極限まで身体能力を高めたアスリートが勝つ。そこも互角なら、もともとの体格に恵まれた者が勝つ──と、一般化してしまうのは単純に過ぎるだろうが、この決勝戦は、上記のような競技柔術の一面を如実に照らし出すものだった。

ブシェシャはこれで実に10度目の黒帯世界王座戴冠。これはホジャー・グレイシーに並ぶ偉業だ。他に比類なきほどにベーシックかつメソディカルな柔術を武器としたホジャー ──その柔術も、圧倒的に恵まれた肉体を最大限に利用したものではあったが── から、重量級離れした爆発力を誇るブシェシャへの時代の移行は、競技柔術における必然といえるのかもしれない。

■リザルト
【無差別級】
優勝 マーカス・アルメイダ(ブラジル)
準優勝 レアンドロ・ロ(ブラジル)
3位 エルベース・サントス(ブラジル)
3位 ルイス・パンザ(ブラジル)

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