【WJJC2017】ミディアムヘビー級 ガルバォンがプレギーサ&ガウジオとの接戦制す──柔術の妙
【写真】負傷したホミーニョ不在の表彰台。トップ4人の実力者は紙一重の差もない (C)MMAPLANET
1日(木・現地時間)から4日(日・同)にかけてカリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア大ロングビーチ校内ピラミッドで開催されたブラジリアン柔術世界選手権=ムンジアル。柔術世界一を決定する世界大会レビュー第10回は、3年前の決勝戦の再現となったアンドレ・ガルバォンとフィリッピ・ペナ・プレギーサによる準決勝と、決勝戦の模様をお届けしたい。
<ミディアムヘビー級準決勝/10分1R>
アンドレ・ガルバォン(ブラジル)
Def. by 2-0
フィリッピ・ペナ(ブラジル)
同ブロックに入った優勝候補二人が順当に勝ち上がり、14年の決勝戦の再戦がここで実現。3年前は、ヘビー級の決勝で新鋭と呼ばれていたペナがガルバォンを下して世界を驚かせている。(※ただしその後、禁止薬物使用が発覚してペナの優勝は剥奪された)
引き込んだペナは、ハーフから50/50を作ってガルバォンの体勢を崩すと、ガルバォンの左足のズボンを掴み、足の絡みを抜きながら立ち上がって上を狙う。崩されたガルバォンも片足で立ち、やがてペナのグリップを振りほどいて離れることに成功。この攻防でペナがアドバンテージを先制した。
試合がスタンド再開すると、ガルバォンはダックアンダーのように一瞬身をかがめてから、素早くペナの左足を抱えて崩して綺麗なテイクダウンに成功! ポイントを2-0とした。さらに上からプレッシャーをかけたガルバォンは、背後からペナの右足にヒザ固めの要領で両足を絡めてバックを狙ってゆく。
やがて足の絡みを解くことに成功したペナは、ガルバォンの右足を掴んで立ち上がってテイクダウンを狙うが、ガルバォンは片足で耐え、背中を見せながら巧みに場外に出てアドバンテージで阻止してみせる。
残り2分。引き込んでガードで耐えれば勝ちと思われたガルバォンだが、自ら下にはならず。そこで引き込んだペナは、ベリンボロ狙いからガルバォンの左足を取って立ち上がると、軸足を刈ってテイクダウンへ。
これを完遂すれば、アドバンテージで先行しているペナの逆転勝利だ。倒れながらも、背中を見せて立ち上がろうとするガルバォン。ペナがその両足を抱えると、ガルバォンは抑えられまいと手押し車の状態で粘る。
残り1分の勝負所。崩そうとするペナと耐えるガルバォンの攻防がしばし続いた後、これ以上は持たないと思ったか、ガルバォンはカニバサミを仕掛けるようにグラウンドに入ってのヒザ十字狙い。
それを防いだペナはバックに飛びつく。 残り20秒。ぴったりと背後に着いたペナはガルバォンの襟を取ってチョークに。 絶体絶命に見えたガルバォンだが、なんとか体を仰向けにずらして防御を試み、最後はペナがニアマウントの体勢になったところで試合終了となった。
一見、最後に上になったペナがリバーサルを完遂しての逆転勝利かと思われたが、ペナには2つのアドバンテージが追加されたのみ。アドバンテージでは6-1でペナが圧倒したものの、ポイント2-0でガルバォンの勝利が宣せられた。
理屈としては「リバーサルを狙ったペナは、途中でバック狙いに変更して最後に上になっただけ=リバーサルは不成立」ということのようだ。
しかし、ペナから仕掛けた流れが続いた展開で、最後に圧倒的優位な状態で上を取ったポイントが入らなかったことが、見る者にはどうにも不自然に映ったのは否めない。世界の頂点に立つ両雄による見事な技の比べ合いは、柔術ルールの難しさを改めて感じさせる結末となってしまった。とまれ、これでガルバォンは超難敵ペナを退けての決勝進出。準決勝でもう一人のレジェンド=ホムロ・バハウに衝撃的な勝ちを収めたさらなる新世代、パトリック・ガウジオと優勝を争うこととなった。
<ミディアムヘビー級決勝/10分1R>
アンドレ・ガルバォン(ブラジル)
Def. by レフェリー判定
パトリック・ガウジオ(ブラジル)
試合開始後、ガルバォンは飛びついてクローズドガードに。ガルバォンはガウジオのラペルを引き出してガウジオのヒザ裏を通しての攻撃を試みるが、ガウジオは立ってステップバックして逃れる。
するとガルバォンはベリンボロを仕掛けて、上を取ることに成功。しかし下になりながらも50/50で足を絡めたガウジオも、やがてシットアップして上を取り返す。ガルヴァオンは50/50から横回転してバックを狙うが、ガウジオは大きく跨いで足の絡みを抜くと、次の瞬間ガルバォンは再びガードを閉じてみせた。
残り3分。ガルバォンはガードを閉じた安全な体勢から、ラペルを掴んでの仕掛けやクロスチョークを狙う。対するガウジオも、たまに立ってガルバォンのガードを開けようとするものの、ガルバォンが足を下から掬いに来るとすかさず座るなど、お互いにアドバンテージを失うまいと慎重な中で試合が続く。
結局、両者揃ってペナルティをもらうが、冒険はせずに目立った見せ場を作れないまま時間切れ。レフェリー判定は2-1で、下から攻撃の形を見せることが多かったガルバォンに軍配が上がった。
35歳のガルバォンは、これで5度目の世界制覇。準決勝では終盤ペナの猛攻に晒されながらも守りきり、決勝は膠着戦に持ち込みつつ、勝利に必要な最低限を行って競り勝った。9月に待望の世界戦が実現するからもしれないデミアン・マイア──ブラザ時代の盟友とハグをかわしたガルバォン。勝利にこだわり続けて栄冠を得た姿はレジェンドの名に相応しいものだった。
■リザルト
【ミディアムヘビー級】
優勝 アンドレ・ガルバォン(ブラジル)
準優勝 パトリック・ガウジオ(ブラジル)
3位 フィリッピ・ペナ(ブラジル)
3位 ホムロ・バハウ(ブラジル)