【Special】月刊、青木真也のこの一番:3月編<その壱>サゲッダーオ・ペットパヤータイ×ケルヴィン・オン
【写真】MMPLANETでは速報しなかった一戦を青木がピックアップし、掘り下げてくれた(C)ONE
2月から始まった──過去、1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ3月の一戦=その壱は11日のONE52からサゲッダーオ・ペットパヤータイとケルヴィン・オンを語らおう。
──前回のインタビュー(※2月21日)から、今日(※3月24日)までの約1カ月、青木選手のなかでコレはと思う試合は?
「サゲッダーオ・ペットパヤータイの試合ですね。MMAPLANETではセゲタオ・ペッペヤタイになっていて、あぁ響いていないなって思いましたよ(笑)」
──それは申し訳なかったです。本当にタイのローカル大会から誰か出て来たのか……ぐらいの認識でいました。名前の表記もここからサゲッダーオにさせていただきます。
「サゲッダーオはルンピニーは3階級、ラジャではフェザー級王者、そしてWBCムエタイで世界スーパーフェザー級王者になっている超一流の選手です。日本では大和哲也選手のヒジで鼻が折れたってことで負けになっていますけど……日本では、そればっかりであまり知られていない。
サゲッダーオはムエカオ……ヒザの選手なんです。もう1人、イヴォルブにいるペップンチュー・FAグループはパワー型の首相撲。でも、サゲッダーオとはテクニカルな首相撲なんですよ。そんな超一流のムエタイの選手がMMAを戦う。勝ち負け云々でなく、こういう選手がMMAを戦うことがワクワクします。
サゲダーオがMMAを戦うというのは、やっぱり幻想がありますよ」
──この試合でも何気なく出している左ミドルが、これまでMMAで見てきたものではないんですよね。
「テンカオもヒザが刺さっていますよね(笑)。点で差し込むような……ヒザがギュンっていう」
──シッティチャイがGLORYで使っているような蹴りをMMAでも使いこなしている。それも驚きでした。
「ホント、その通りで。そして、最後はクリンチからヒジ、首相撲でヒザ蹴りを連打して、パンチで仕留めました」
──青木選手もイヴォルブでは、サゲッダーオと練習をしてきたわけですね。
「ハイ。サゲッダーオもペップンチューも、僕じゃ話にならないくらい首相撲が強いです。本当にあのサゲッダーオがMMAを戦うのに、MMAの人もキックの人も話題にしていない。勿体ないなぁって。ここはだから、触れておきたかったです」
──猛省です。視野を広げなければ。あの試合、タイでのMMAデビュー戦でしたし……。
「アップのマッチメイクでしたよね(笑)」
──ハイ。だからこそ、本当に勝敗云々ではなくサゲッダーオにはストライカーではなく、フリースタイルで足に触って来るレスラーと戦うところがみてみたいです。
「ムエタイは足への組みがないから、そういうところは幻想がある。ルンピニーでもタイナーも3歩までだとか、ムエタイも制限が増えてきています。でも、MMAだと関係ない」
──ハイ、リアルといえばおかしい話ですが、より許容範囲の広いムエタイ原体験のような試合がMMAでは見られるか。
「それがリアルで、ファンタジーなんです。僕はタイに夢見た世代なので。ケージの組みって、金網を背負った側はレスリングではスイッチとかでしか、逆転はなく耐えるっていう展開になるじゃないですか」
──ハイ。スイッチやコブラだと一気にバックを取れるかもしれないですが、それも多く見られるシーンではないです。
「これがムエタイだと、金網を背負っても不利じゃない。ヒジもあるし。だいたい、イヴォルブにいると、首相撲だったらリッチ・フランクリンがオロノ・ウォーッペッブンに吹っ飛ばされているのも見ているし」
──体重差25キロはありそうですが……。
「MMAのトップ選手が来ても、彼らは首相撲だとブッ飛ばします。僕、それを生で見てきたから。タイロン・ウッドリーとか、ユライア・フェイバーとか皆、やられるんです。首相撲は誰も勝てない。それを見ているから──こその幻想があります」
──羨ましい限りです。
「でも、デェダムロンの成功があるし、サゲッダーオに限らず、MMAで一攫千金を狙ってくるムエタイのトップ選手は増えると思います。ペップンチューもやり始めたみたいだし。MMAだとバンタムとかフェザー、ライトまでは面白くなると思います。ああいうタイ人が増えてくると」
<この項、続く>