【EJJC2017】岩崎正寛、ムンジへの期待膨らむライト級3位=表彰台。フェザー級はコブリーニャが優勝
【写真】残念なことにオフィシャル・アルバムには岩崎が目を瞑っている表彰台の写真しかなかったのだが、そんなことは目を瞑っても構わない──今後への期待が高まるヨーロピアンだった (C)IBJJF
17日(現地時間・火)から22日(同・日)にかけて、ポルトガル、リスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスにてIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権が開催された。ヨーロッパを中心に、各国から強豪が参戦した今大会。レビュー3回目となる今回は、ライト級の模様を日本の岩崎正寛の活躍を中心にお届けしたい。
日本期待の岩崎正寛は1回戦でフランスのチボー・オリバーと対戦。引き込んで得意のディープハーフガードを作ると、相手の道着の裾を引き出して掴み、さらに帯を掴んで勢いよく反転してのスイープで先制。その後は重心を低くした盤石のベースからパスのプレッシャーを掛けつつ、上をキープして勝利した。
2回戦でポーランドのカスパー・ロットと当たった岩崎は、ここでもやはり引き込んでハーフを作る。腰を切ったロットが脇をすくい、足を抜きにきたタイミングで反転し、そのまま上を取り切って2点先取。その後安定したトップゲームを展開した岩崎は、横に動いてのパスでサイドを取りかけるなどアドバンテージを重ねて勝利。準決勝進出を果たした。
<ライト級準決勝/10分1R>
ルアン・カルバーリョ(ブラジル)
Def. by 三角絞め
岩崎正寛(日本)
準決勝で岩崎を待っていたのはルアン・カルバーリョ。昨年のワールドプロで世界最強のライト級柔術家のルーカス・レプリ相手に大健闘。不可解な裁定だったとはいえ、レフェリー判定勝ちを収めた選手だ。
スタンドの攻防から始まったこの試合。まずは奇麗なダブルレッグを仕掛けた岩崎が、腰の強さを活かして粘るカルバーリョを一瞬倒してアドバンテージを先制。その後再びスタンドに戻ると、袖と襟を掴んで組み合う両者。崩し合いが続くなか、カルバーリョがヒザを付きながら岩崎を下に崩しての投げを放つと、岩崎はたまらず横転。カルバーリョが2点を先取した。
なんとか脚を絡めてハーフを作った岩崎に対し、カルバーリョは巧みに上半身を離して距離を作り、ニースライド・パスの体勢に。そのままヒザを抜きにかかるが、カルバーリョの裾を引き出して持った岩崎も立ち上がり、倒そうと押し込むが場外に。試合はまたスタンドに戻った。
両者が組み合うと、今度はカルバーリョの方が引き込んでクローズドガードを取る。ここから岩崎の右腕を深く抱えて、ハイガードの仕掛けを作る。岩崎は腰を上げ、体重をかけてスタックを試みるが、カルバーリョは(抱えた右腕ではなく)左腕に腕十字を仕掛ける。そして次の瞬間、防御しようとして岩崎が引いた左腕を右足で超えての三角ロックをカルバーリョが完成させる。
今度は右腕に三角十字を狙うカルバーリョは、前方に体重を掛けて防ごうとした岩崎を、後転しながら崩して三角マウントの体勢に。流した岩崎の右腕に上から体重をかけてタップを奪ってみせた。
この後カルバーリョは、ノヴァ・ウニオンの同門にして本命のマーシオ・アンドレと優勝をシェア。見事な柔道技と──レプリにさえスイープを許さなかった──ハーフガードへの対処、そして流れるように右、左、右と狙いを変えての腕狙いと三角のコンビネーションで、岩崎に一本という形で、世界の頂上の高さを見せつける形となった。
しかし、この岩崎の国際大会における中量級でのメダル獲得は、日本人としてはまぎれもない快挙といって良いだろう。最初の2戦で岩崎は、ハーフガードからスイープ&トップキープという勝利パターンが国際大会でも通用することを改めて見せつけた。
そして、その2試合で見せたハーフからの力強い反転と上を取りきる動きは、かねてから取り組んでいるレスリングとフィジカルの向上が、トップゲームを強くするだけでなく、岩崎のスクランブル力の向上にもつながり、もともと得意だったハーフガードスイープの威力を増していることを示していた。
敗れた準決勝でも、カルバーリョから先制のアドバンテージを取ったダブルレッグ、さらにニースライドを防ぎ立ち上がってみせたところに、その進化が如実に表れている。本人の想いは別として、第3者の立場から検証すれば、ムンジアルへ向けてさらなる可能性を感じさせた──希望に溢れたヨーロピアン銅メダル戴冠だったといえるのではないだろうか。
なおフェザー級ではコブリーニャことフーベンス・シャーレスが、ジャンニ・グリッポとのアリアンシ同門対決を制して優勝に輝き、38歳にしてレジェンド健在を示している。
■リザルト
【フェザー級】
優勝 フーベンス・シャーレス(ブラジル)
準優勝 ジャンニ・グリッポ(米国)
3位 ガブリエル・マランゴーニ(ブラジル)
3位 イサッキ・パイヴァ(ブラジル)
【ライト級】
優勝 マーシオ・アンドレ(ブラジル)
準優勝 ルアン・カルバーリョ(ブラジル)
3位 アンドリス・ブルノフスキス(米国)
3位 岩崎正寛(日本)