【ADWP】無差別級レポート<01>プレギーサが世界王者対決制し、キーナンはまたも涙……
4月19日(現地時間・火)から23日(同・土)にかけて、アラブ首長国連邦アブダビのZAYED スポーツシティ内のIPICアリーナにて、アブダビ・ワールド・プロフェッショナル柔術チャンピオンシップ2016が開催された。
大会レビューの5回目となる今回からは、優勝賞金30000ドルを目指して競われた黒帯アダルト男子無差別級の模様を報告したい。55名もの黒帯選手がエントリーし、2日間に渡り激闘が繰り広げられた一大トーナメントを──ここでは便宜上準決勝までをAからDまでの4つのブロックとし、まずはA&Bブロックの注目試合をレポートしたい。
<無差別級2回戦/6分1R>
フィリッピ・ペナ・プレギーサ(ブラジル)
Def. by 4-2
クラウジオ・カラザンス(ブラジル)
まずはAブロックから──2回戦で一昨年の世界柔術ヘビー級を制して世界を驚かせたペナは、初戦で軽量級のマーシオ・アンドレの仕掛ける果敢なパスを凌いで、得意のスイープを2度決めて勝利。準々決勝では、昨年のミドル級世界王者カラザンスとの階級を超えたファン垂涎の対決が実現した。
引き込んで得意のオープンガードやハーフガードから仕掛けるペナに対して、カラザンスは腰を引いて頭を低くして対応する。やがて横回転したペナがカラザンスの右足を掴んで引き出す得意の形を作りかけると、カラザンスはアンクルで反撃。しかしそれを凌いだペナがすかさず上を取ってまず2点先制した。
しかし、カラザンスは下になりつつも50/50のポジションを作ってスイープを狙う。すると今度はペナが上からアンクルで攻撃。それを凌ぐためにカラザンスが回転すると、両者は場外へ。ここで再びペナに2ポイントが入り、スコアは4-0となる。
残り時間が少なくなり、苦しくなったカラザンスは得意の立ち技で仕掛ける。豪快な大外刈りを放つと、点数に余裕のあるペナはあまり抵抗をせずに綺麗に投げられて4-2となる。そのままシッティングガードを取るペナに対して、カラザンスはズボンを掴んで左右に跳んでのパスを試みるが、ペナの鉄壁のガードは超えられず試合終了。アンクルの攻防でうまく点を稼いでみせたペナの作戦勝ちとなった。
なお、ペナは続く準々決勝もアトスのダニー・ジェラード相手に勝利(下から攻めるペナに右足を引き出されたジェラードが、負傷して途中棄権)してAブロックを制覇、順当に準決勝に駒を進めた。
<無差別級準々決勝/6分1R>
アレキサンダー・トランス(デンマーク)
Def. by アドバンテージ 1-0
キーナン・コーネリアス(米国)
続いてBブロックはその最終試合に当たる準々決勝。ワームガードの開発者として名高いアトスのコーネリアスは地元の英雄フィサル・アルキトビからスイープ、バック、襟絞めと畳み掛けたうえで腕十字を極めて勝ち上がる。そのコーネリアスを準々決勝(Bブロック決勝)で待ち受けたのは、最重量級の優勝候補の一角であるトランス。重量級テクニシャン同士の一戦が実現した。
同時に引き込む両者。するとコーネリアスが間髪入れずにベリンボロへ。バックに付きかけるがトランスも脚関節で対抗し、膠着状態でブレイクに持ち込んだ。
再開後、再び両者が同時に引き込み。今度はトランスが上を選択し、アドバンテージ1を獲得する。コーネリアスはスパイダーガードの形を作り、またトランスの裾を引き出して得意のラペルガードを作ろうとするが、トランスは頭を下げて腰を引く固い防御の姿勢でそれを許さない。やがて両者にマイナスが与えられるが、トランスは腰を引いての防御を続ける。
時間のないコーネリアスは横回転してインヴァーテッド・ガードからの仕掛けを試みるが、トランスはひたすら腰を引いて頭を低くした状態で、コーネリアスの両足に噛み付き続けて攻撃させず、そのまま時間切れ。ダブルガードから上を選択して取った1アドバンテージを、膠着戦法で守り切る形で準決勝に進出した。
こうして脱落したコーネリアスは階級別も負傷により欠場し、またしてもビッグタイトルに届かなかった。このところギあり柔術&ノーギ・グラップリングの両方において、世界最高峰を相手にすると、ガードから攻撃を腰を引かれて守り切られてしまうパターンが続いている。一世を風靡したラペルガード/ワームガードからの攻撃に対する防御法が浸透した感のある現在、創意工夫の天才が再び世界を驚かせてくれることに期待したい。