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【European Open 2016】岩崎正寛&玉木強、ヨーロピアンでかく戦えり

ポルトガルのリスボン、パヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスで20日から24日(日・同)まで開催されていたIBJJF主催のヨーロピアンオープン柔術選手権。

アダルト黒帯の部に日本から参戦した芝本幸司(トライフォース)、岩崎正寛(カルペディエム)、玉木強(カルペディエム)の3人は、いずれも現在柔術界の最高峰に君臨する超強豪たちとの対戦を実現させた。ここでは岩崎&玉木、カルペディエム勢のミヤオ兄弟との対戦を振り返りたい。

<フェザー級2回戦/10分1R>
パウロ・ミヤオ(ブラジル)
Def. by 5-0
岩崎正寛(日本)

初戦でヘナン・サントスと当たった岩崎は、引き込んで得意のディープハーフガードを作ってのスイープに成功。その後はフィジカルを活かしたプレッシャーとボディバランスをもって、相手のあらゆるスイープを凌いで上をキープして2-0で快勝。長年鍛えたディープハーフゲームと、近年強化したトップゲームを駆使した末の勝利を土産に、2回戦で昨年の同級世界王者パウロ・ミヤオ戦に挑んだ。

試合開始早々、パウロにタックルを仕掛けた岩崎。しかしパウロは腰を引いてかわすと、次の瞬間引き込みに成功。迅速かつ失点しない見事な技術だった。そこからパウロは岩崎のラペルを引き出して搦めてのラッソーガード等で揺さぶるが、トップガームを鍛えてきた岩崎も前傾姿勢で対処。パウロが股間をすくいに来ても、すぐさま腰を引いて守ってみせた。

やがてハイガードを取ったパウロは、手で自らの左右の足首を掴んでのオモプラッタ狙い。左足で行くと見せかけて変化して右足首を岩崎の顔面横に前にこじ入れると、左足と組んで四の字を作ることに成功する。さらに岩崎のギの背中の部分を掴んで体勢を固定したパウロは、そのまま岩崎から距離を取るように体を離してゆく形で肩を極めに行き、そこで体勢が崩れた岩崎の上にのしかかりながら瞬時に足のクラッチを組み替え――三角マウントの形で岩崎の上に。先制点を奪ってみせた。

ピンチかと見えた岩崎だが、体をずらして得意のディープハーフの形を作ってみせる。しかしパウロは岩崎の足首のあたりのズボンの部分を掴んで引き寄せてバランスを保つと、腰を横にずらしてリバースハーフの状態を作って、足を抜きにかかる。ここをこらえた後、もう一度ディープハーフを作り直すことに成功した岩崎だが、パウロも再び腰をずらしてリバースハーフからの足抜き狙い。マットに横半身を密着させるようにして、岩崎の下からのスイープの揺さぶりを殺したパウロは、一瞬で右足を抜いて岩崎の足の下に差し込んでパスを成功させ、リードを5-0と広げてみせた。

その後下からスクランブルして立ち上がることに成功した岩崎だが、無理せず下になったパウロの足を超えることはかなわず、結局5-0のポイント負け。トップゲームとディープハーフという、一回戦で自らに勝利を運んでくれた二つの武器を、恐ろしいほどの技の切れを発揮したパウロに正面突破されての敗北。それはすなわち、世界最高峰を相手に現在の自分の力を出し尽くしての戦いだったともいえるだろう。

<ライトフェザー級2回戦/10分1R>
ジョアオ・ミヤオ(ブラジル)
Def. by 送り襟絞め 
玉木強(日本)

黒帯としてヨーロピアン初参戦となった玉木強は、1回戦タニエル・ジ・ジェススと対戦。序盤に相手が足を飛ばして来るところで引き込んで2点を失ったものの、相手のフィジカルに得意のガードワークで対抗。後半疲弊したところでスイープ、パスを決めてバックに回った玉木。最後はボー・アンド・アローチョークを極めて見事な一本勝ちで初戦突破し、ジョアオ・ミヤオとの試合に駒を進めた。

引き込んだジョアオは、ベリンボロをはじめとした回転系の波状攻撃。さらにアンクルを狙って玉木の場外逃避を誘うなどポイントでリードする。その後玉木も逆にアンクルを狙ってゆくが、ジョアオはその玉木のズボンの尻の部分を掴むことに成功。これを引き下げるようによじのぼりながらレッグドラッグにつなげて上を奪取すると、そのまま背後に付いて送り襟絞めを極めてみせた。

1回戦は持ち味を発揮したが、ジョアオ相手には常に後手に回っての対応を余儀なくされ、そのまま仕留められてしまった玉木。世界の舞台での勝利と、頂点との遭遇。この貴重極まりない経験を玉木がいかに自らの糧としてゆくか。今年から英国ロンドンで指導者となるだけに、現役としてはヨーロピアンが主戦場となるかもしれない玉木の今後に期待したい。

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