この星の格闘技を追いかける

【a DECADE 07】10年ひと昔、2003年5月31日Midwest FC

2013.05.31

Jake Shields vs Milton Vieira

【写真】人知れず行われたといっても過言でない、ジェイク・シールズ×ミウトン・ヴィエイラの名勝負。こうやって写真を眺めると、ジェイクも若い。10年の歳月を思わずにはいられない。

MMAPLANET執筆陣の高島学が、デジカメにカメラを変更し取材するようになってから10年が過ぎた。そこでMMAPLANETでは、10年周期ということで高島が実際に足を運んだ大会を振り返るコラムを掲載することとなった。a DECADE、第7回は、10年前の5月31日。インディア州ハモンドで行われたMidwest Fighting Championshipを振り返りたい。
Text & Photo by Manabu Takashima

米国でニューヨーク、ロスアンゼルスに次ぐ都市圏人口を誇るシカゴ。この大都市でMMAの興行が打たれるようになったのは、2007年のIFLから。以降、アドレナリン、UFC、WECと続々とビッグショーが開催されるようになった。とはいっても、IFL以前にシカゴにMMA文化が根付いていなかったわけではない。イリーガルファイトは別にしても、1999年にアイアンハート・クラウンが旗揚げ、パウンド禁止のMMAイベントを3年に渡り年に一度開催してきた。

そのIHCは2004年より、シカゴより東へ車で30分、州境を越えたインディアナ州ハモンドでパウンド有りのMMAイベントとして人気を博するようになる。UFC殿堂入りが噂されるステファン・ボナーもIHCでMMAデビューを迎えるなど、中西部のMMAの普及にIHCとハモンドは無くてはならない存在であった。そんなIHCに出場経験の持ち、シカゴ郊外にムエタイのジムを経営していたフィリピン系米国人のジェイソン・リグツが、インターナショナル修斗コミッションの認可を受け、ミッドウェスト・ファイティング・チャンピオンシップを旗揚げした。

2002年の年頭に、某CSTV局が週一の修斗・海外公式戦の帯番組を持つことを決定したことを受け、国外での公式戦の実施が後押しされた流れを受け、その影響からか帯番組は終了しても、同プロモーションのように新たに修斗公式戦を開催する臨むケースがまま見られていた。中西部では同じインディアナのHnS、テネシー修斗、前述したIHCに続き、4つ目の公式戦認可イベントとなった。

Luis Busucape vs Tom Kirk【写真】ブスカペと対戦したタム・カークは、この後の名古屋の修斗ALIVE興業に来日し杉江アマゾン大輔と対戦している。

メインはジェイク・シールズとブラジルのミウトン・ヴィエイラの修斗ミドル級(76キロ)戦、セミもブラジルからルイス・ブスカペが飛来しトム・カークと対戦。ブラジル勢は後のATTコンディショニング・コーチで、現在はブラジルに戻った――当時はウニベルソ・アトレチコというジムを経営していた――アンドレ・ベンケイの下でトレーニングしていたファイター達だ。それ以外の出場選手達も、全米第三の人口圏ということ、カーウソン・グレイシーJrがアカデミーを開くなど、柔術人口も多い土地柄、ポテンシャルの高いファイターが揃っていた。

シールズ×ヴィエイラは、今でいうスクランブルの攻防が連続した好勝負に。そのスクランブルを制するのは決まってシールズだが、ヴィエイラもガードから三角絞めを極め掛かるなど、存分に持ち合いを発揮した。ある意味、歴史に埋もれてしまうようなイベントのなかで、非常に質の高いワールドクラスのファイトが繰り広げられ、結果はシールズが判定勝ちを手にしている。前年の12月に日本で桜井マッハ速人を破ってなお、評価は決して高くなかったシールズ、その実力を改めて世に示すような内容ではあったが、彼の力が世に認められるのは、まだまだ先になることは先刻承知のことだろう。

Eddie Wineland vs Mustafa Hussani【写真】エディ・ワインランドは、この試合がプロ2戦目。サラサラ・ヘアーが今と全く違う雰囲気を醸し出している。

オープニングバウトには、この7月にヘナン・ベラォンの持つUFC暫定世界バンタム級王座挑戦が決まっていたエディ・ワインランドが出場し、ホワイトタイガー・ケンポー……、イーグルタロンのキース・ハックニーの教え子ムスタファ・ハッサーニと対戦して、ドローという結果に終わっている。シールズ&ヴィエイラ、そしてワインランド以外にも、ギディオン・レイ、パート・パラゼウスキー、ドリュー・マクフェドリースらシカゴ地区&中西部縁のファイターたちが、その後UFCでの出場機会を得ている。出場ファイターたちの出世とは対照的に、同大会はチケット販売が伸びず赤字を被ったリグツにとって、最初で最後のイベント開催となった。

Bart Palaszewski vs Kendrick Jonshon【写真】タトゥーのないバート・パラゼウスキー、一見、今と同じ人物には見えない。

シカゴ在住のUSA修斗事務局長リッチー・サントロ、そのスポーツ的なMMA普及という夢を一緒に見ようとしたリグツ。今、UFCという頂きを持つようになったMMA界にどのような想いを抱いているのか。多くの人々が夢を見て、夢を散らしていったMMAワールド。オープニングアクトとヘッドライナー、イベントの初めと終わりに出場したファイターが、10年後にそのUFCで夢を掴みかけている。そんな大会を開いた2人だからこそ、最もMMAが盛んになった国で、隣近所の友人や親せきたちに、今の北米MMAでは考えられない1大会で3試合もドローのあるMMAイベント=一夜限りのミッドウェスト・ファイティング・チャンピオンシップの開催を良き思い出として、あるいは自慢話として、笑顔とともに振りかえることができる人生を歩んでいることを心から願う。

■2003年5月31日Midwest Fighting Championship@ ハモンド・シビックセンター、ハモンド:米国 試合結果

<修斗ミドル級/5分3R>
ジェイク・シールズ(米国)
Def.3-0
ミウトン・ヴィエイラ(ブラジル)

<修斗ミドル級/5分3R>
ブライアン・ガザウェイ(米国)
Draw. 1-1
ギディオン・レイ(米国)

<修斗ウェルター級/5分3R>
ルイス・ブスカペ(ブラジル)
Def.2R1分59秒by 腕十字
トム・カーク(米国)

<修斗ライト級/5分3R>
ライアン・アッカーマン(米国)
Def.3-0
ジョー・ジョーダン(米国)

<修斗ライトヘビー級/5分2R>
ドリュー・マクフェドリース(米国)
Def. 2R2分37秒by TKO
ラファエル・ビスチュク(米国)

<修斗ウェルター級/5分2R>
パート・バラゼウスキー(米国)
Def. 1R2分10秒tap put by G&P
ケンドリック・ジョンソン(米国)

<修斗ライトヘビー級/5分2R>
アダム・ギブソン(米国)
Draw.
ケビン・クナヴァン(米国)

<修斗フェザー級/5分2R>
エディ・ワインランド(米国)
Draw.
ムスタファ・フッサーニ(米国)

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