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【Interview】キム・ドンヒョン 「アジアの後輩ファイターたちのために」

Kim Dong hyun & Hioki

【写真】RFCの翌週、月曜日と火曜日の2日間だけだが日沖発は、成長著しい韓国MMAの実状に触れたいとプサンのチームMADを訪れた。若き日に日本で出稽古を経験しているキム・ドンヒョンは誰よりも日沖の訪問を歓迎してくれた (C) MMAPLANET

11月10日(土・現地時間)にマカオのコタイ・アリーナで開催されるUFC FULE06「Franklin vs Le」のセミファイナルに出場、パウロ・チアゴと対戦するキム・ドンヒョン。

UFC戦績6勝2敗1NCという戦績は、アジア人では岡見勇信に次ぐ実績といえる。自分よりも大きな練習相手を求め、ラスベガスに滞在し現地でトレーニングを積んでいた彼が、インタビューでUFC批判ともとれる発言をしたことが話題になった。

その真意をさぐるべき――ということではないが、チアゴ戦に向けてプサンのチームMADに戻って調整を続ける彼に話を聞くには、その発言に触れないわけにはいかなかった。

――米国でスポンサーの件も含めUFCはアジア人に厳しいなど、UFC批判ともとれる発言をしたことが、日本のファンの間でも話題になっています。

「まぁ、あの発言をした背景には色んな事情があって、考えてのことなんだ。僕らは4日や5日前に米国に行き、そこで試合をする。時差もあり、言葉の壁もある。それだけもディスアドバンテージを抱えているのに、ファイトマネーに掛かる税金など、米国人ファイターとは全く違う環境、立場で戦っている。

それなのにスポンサーに関する条件などは、全てのファイターに同じルールが適用されているのが現状だ。ファイトマネーに掛かる税金は違うのに、スポンサーはUFCに5万ドルを支払うという条件を満たしているところしか認めてもらえない。

市場規模が違うから、韓国で僕がUFCに出るならサポートしようという人が出て来てくれても、その条件をクリアできないために結局、国内のスポンサーを諦めないといけなくなる。そういうことで、僕は何度となく応援してくれる人たちの厚意を無にしないといけなかったんだ」

――なるほど、海外の選手は税金も違ってくるし、それだけの市場もない。だからこそ、市場を活発化するためにも、足枷となる条件の適用に例外を求めてほしいということですね。

「米国はUFCがその人気を創ったということもあり、MMAに資金を投じる企業が結構あるよ。でも、米国の企業に必要なのは米国人で、僕ら韓国人はPPVで戦っていても、彼らの支払うスポンサーマネーでは最低ランクの支払いしか、期待ができない。

だから、国内のスポンサーを僕らアジア人ファイターには認めてもらっても良いじゃないかって思っているんだ。そういう想いをずっと持ってきた」

――でも、ドンヒョンはUFCに出場し、韓国のMMAファイターのなかではダントツで稼ぎが良くなったファイターですよね。

「そう。僕はUFCに感謝している。十分なファイトマネーを用意してもらっているからね。だから、本当のことをいえば、僕は不満を口にするべきファイターじゃないかもしれない。

でも、これからUFCに出ていく若い韓国人選手、アジアの後輩選手たちのためにも、少しでも良い条件を引き出すために、改善すべきと思っている事柄を口にし、問題定義することも僕の役割だと思っているんだ。それによって、少しでもアジアのファイターを巡る条件が良くなってくれればってね」

――韓国や日本のMMA巡る経済状況により、米国人やブラジル人との差が詰まらずに、広がる要因になることは十分に考えられます。

「韓国でも徐々にUFC人気が上がっている。同時にUFCで戦いたいって思う選手も増えているし、周囲の空気もそれなりに変わってくるに違いないよ。でも、日本はPRIDEとか大きな大会があったのに今のような状況になっているから、若い子たちがMMAファイターを目指そうと思わなかったり、応援してくれる人も必要以上にネガティブに見てしまうなど、深刻な状況なんじゃないかな。

僕も日本の状況を凄く心配しているんだ。だから、今こそ韓国と日本のMMA関係者が協力しあって、米国人に勝てる選手を育てるなど、動き始める時期がきたんじゃないかと思う」

――今回、日沖発選手がドンヒョンの所属するチームMADで出稽古を行ないましたが、実は韓日間には様々な歴史があり、そしてアジアのなかでも最大のライバルでもあるので、彼を友好的に迎え入れてもらえないのではないかという心配もありました。

「僕らは問題ないよ。とにかくMMAが好きな人間が集まっているので、日沖のように優秀な選手が練習に来てくれることは大歓迎なんだ。逆に僕らも日本に行って、日沖の所属するアライブで練習する――そんな環境を築くことができれば一番だよ」

この項、続く

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