【Pancrase368】初黒星から9カ月――松井涼、ヘルクラーノと再起戦「何て言うんだろう……軽いんです」
【写真】これは撮影用の笑顔ではない。9カ月というブランクで得た、自身の力への笑みだった(C)SHOJIRO KAMERIKE
8日(日)、東京都港区のニューピアホールで開催されるPancrase368で、松井涼がブラジルのルイス・ヘルクラーノと対戦する。
Text by Shojiro Kameike
松井は全日本選手権グレコ63キロ級準優勝というレスリングのベースを生かし、2024年8月のプロデビューから4連勝を収めた。しかし、今年2月の宮城成歩滝戦でKO負け。プロ初黒星から9カ月、再起戦で強豪を迎え撃つこととなった。
対戦相手のヘルクラーノは7勝1敗で、7勝のうち判定決着は一度のみ。キャリア序盤は一本勝ちが多いものの、パンチ、ミドル、ローといった強い打撃にも大きな特徴がある。前戦はLFAでルカス・ゴウヴェイアとの無敗対決で初回KO負けを喫したものの、アグレッシブなステップイン&アウトは脅威だ。
そのヘルクラーノを迎え撃つ復帰戦を前に、松井は曇り一つない笑顔を浮かべた――。
来年のRTUを目指しているので、こういうレコードの相手に勝たないといけない
――今年2月のKO負けから9カ月、国際戦で復帰することになりました。
「ビックリしました。こういう相手とやらせてくれるのか、自分がやっていいのか、と――。相手、強いですよね」
――正直に言って、松井選手にとっては過去最強の相手ではないかと思います。
「そうなんです。試合映像はLFAの2試合しか見ることができていなくて、前回はKO負けしているけど、それでも強いことは分かります。過去のレコードを見ると一本勝ちも多いし、何でもできるファイターなのでしょうね」
――復帰戦が正式決定したのは、いつ頃だったのでしょうか。
「1カ月ぐらい前だと思います。11月に試合をしたいという話をさせてもらっていて、何人か相手の候補も出してもらっていましたが……全部、海外の選手で。イジメなんじゃないかと思いましたよ(笑)」
――いやいや、それは『松井選手なら大丈夫』という、パンクラスからの評価ではないですか。
「アハハハ、そうだったら嬉しいです」
――復帰戦でこの強豪を迎え撃つという点で、不安はなかったですか。
「それよりも試合がしたいという気持ちが強くて。やっぱり僕はUFCに出たい。そのためにRoad to UFCのことを考えたい。だから、ここでRTUにつながるような相手と戦いたいと思ったんです」
――ヘルクラーノはここまで7勝1敗。敗戦は前回のルカス・ゴウヴェイア戦のみです。敗れたとはいえ、LFAのメインカードで無敗対決が組まれていたということは、それだけ評価されている選手なのだろう、と。
「そのレコードを見て決めました。決めた後に試合映像を見たんですけど、強い。でも僕は来年のRTUを目指しているので、こういうレコードの相手に勝たないといけない。僕には時間がないので」
今までになかった柔らかい動きができるようになっている
――年齢的な面も含めて『時間がない』と以前からおっしゃっています。もちろん、ここ数年のRTUを考えると、パンクラスでベルトを巻くことがRTUやDWCSへの最短距離かもしれません。しかし、前回敗れたことで、ベルトもRTUも遠のいたと思いましたか。
「はい。ショックでしたね……。ただ、あの負けに関しては僕の完敗なので仕方ないです」
――1R、2Rとトップをキープし続けていて、3R開始早々に右を食らってKO負けでした。
「僕が打撃を甘く見ていたんです。あの頃は打撃を結構練習していたので」
――まず2Rに右ストレートの直撃を受けていました。『甘く見ていた』というのは、2Rに『この右を受けても大丈夫だ』と思っていたのでしょうか。
「そういうわけではないんですよ。あんまり右を受けた感覚がないというか……。周りからは『効いていた』と言われますけど、そんな感覚はなくて。でも試合映像を見返したら、思いっきりもらっているし、効いていましたよね(苦笑)」
――その敗戦から9カ月も試合間隔が空きました。ブランクの理由は何だったのですか。
「2月の試合後、3月に怪我をして、5月に手術したんです。練習中に怪我をしてしまって」
――えっ……。
「5月の手術後から9月までは全く動けませんでした。ショックでしたね。負けた直後で、さらに大きな怪我もして……。『自分のキャリアはどうなっちゃうんだろう?』と。
だからビックリしましたけど、今回のオファーについては嬉しかったんです。もう年内にタイトルマッチというのは難しいじゃないですか。であれば、次に実績のある選手とやって、もう1試合クリアしてRTUに出られないかな、と思いました。そのためにはもちろん、さらに強い相手に勝たないといけないですけど」
――と言いながら、今日は笑顔が続いています。こういう相手と戦うこと以外にも、嬉しさがありそうですが……。
「アハハハ、分かりますか。先ほど言ったとおり、5月から体を動かすことができなくて。少し動かせるようになったのが9月なんですよ」
――それは不安につながらないのですか。
「何て言うんだろう……軽いんです。今までになかった柔らかい動きができるようになっている、というか。何がどうなって、そうなっているのかは分からないんですけど」
――どのような時に『動きが軽い、柔らかい』と感じますか。
「たとえばスパーリングをしている時に、体の感覚として『次はこう動けるな。相手がこう来たら、こっちにも動ける』ということが多くて。そうすると、パスとかパウンドを落としたりすることにも影響が出てきたんですよね。僕、今までの試合では硬かったじゃないですか」
――テイクダウンしてトップをキープし続ける、という展開ですね。
「僕は試合中に自分と対話するんです。たとえばクラッチしてトップを奪う。その時に『クラッチを外して、相手がこう動いたら自分も動けるよ』って。でも、そう自分に言ってもクラッチが外れないんですよ」
――えっ、どういうことですか。

昨年9月に初の国際戦で、ロシアのチェルバエフをコントロールし続けた松井。それだけの力があるからこそ「上を目指すなら、その先を……」という意見があったのも確か。力を解放した松井が見たい(C)MMAPLANET
「やっぱり、恐怖ですよね。クラッチを外したら、相手に反撃されるかもしれない。自分でも相手を動かしたほうが次の展開をつくれることは分かっている。そのままポジションをキープするほうが疲れることも分かっている。でも体が言うことを聞かない。結果、有利に進めている自分のほうが疲れてしまい、最後に負ける――前回がまさにそういう試合でした」
――確かに前回の試合は、テイクダウンに成功しても、初回は削りながら宮城選手の背中を着けきれていませんでした。対して2Rは、背中を着かせると逆に自分の手が出ない。
「あぁ、そうですね」
――もちろん、宮城選手のディフェンス力が強かったという要素もあります。ただ、松井選手がしっかり抑え込みつつ打つことができれば、どれだけ強いのだろうかと思いました。
「やっぱり自分では『テイクダウンして固める』という意識が強くて、その先に動くことができていませんでした」
対戦相手がどうこうとか、対策とかじゃない。自分が練習で感じているものを試合で出したい
――『その先』というのは、競技性の違いも関係しているのでしょうか。レスリングでは相手の両肩を1秒以上マットに着ければフォール勝ちとなります。しかしMMAには、その先があります。
「まさに、そうなんですよ。自分は20年近くレスリングをやってきて、フォールすることを突き詰めてきました。でもMMAには抑え込んでから先がある、競技が違う。難しいですよ。でも、だから面白いんですけどね。その先にやるべきことが、まだまだ多くて」
――その先にやるべきことが分かっていたものの、今ようやくできる兆しが見えている。だから嬉しい、ということですか。
「はい。もちろん、まだ練習段階で感じているだけなので、試合をしてみないと、どうなるか分からないです。もしかしたら試合が始まると、いつもと同じようにテイクダウンして固めるかもしれない。だから、試したいんです。次は対戦相手がどうこうとか、対策とかじゃない。自分が練習で感じているものを試合で出したい。相手にぶつけたいという気持ちのほうが大きくて」
――『軽い』という感覚は、今まで自分が命令してもクラッチを離さなかった何かが……憑き物が落ちたのかもしれませんね。
「アハハハ、確かに。もうソイツはいないですから」
――ヘルクラーノはパンチとミドルが強く、特にあのミドルがあるとテイクダウンにも入りづらくはないですか。
「そう。それと、あの足払いみたいなローですよね。あれを食らってしまうと、どうなるんでしょうね。やっぱり強いよなぁ……」
――そう言いながらも、表情には曇り一つありません。
「やっぱり、あの打撃を持っている選手と対戦するのは怖いですよ。でも、その恐怖より、今は体の軽さや、それを試合で出したいという気持ちのほうが上回っていて。……うん、とにかく勝ちたいです。勝ったら次につながる相手を用意してくれたと思うので、勝ちます」
■視聴方法(予定)
11月8日(日)
午後1時15分~ U-NEXT
■Pancrase368 対戦カード
<ウェルター級/5分3R>
菊入正行(日本)
平信一(日本)
<フライ級/5分3R>
眞藤源太(日本)
ダヴィ・チュン(ブラジル)
<ミドル級/5分3R>
林源平(日本)
シーザー・カワハラ(米国)
<ミドル級/5分3R>
手塚晴希(日本)
荒井勇二(日本)
バンタム級/5分3R>
前田浩平(日本)
合島大樹(日本)
<バンタム級/5分3R>
松井涼(日本)
ルイス・ヘルクラーノ(ブラジル)
<フライ級/5分3R>
平賀丈一郎(日本)
牛久保遼(日本)
<フェザー級/5分3R>
田口翔大(日本)
山田浩平(日本)
<フェザー級/5分3R>
ギレルメ・ナカガワ(ブラジル)
林田大寿(日本)
<バンタム級/5分3R>
伊藤一輝(日本)
松岡拓(日本)
<バンタム級/5分3R>
木村耀人(日本)
遠藤大地(日本)

















