【Pancrase366】杉山しずか、ラストマッチで盟友=藤野恵実と対戦「あるがままの私を出す」
【写真】引退発表よりも藤野との対戦のほうが驚かれたという。藤野戦に臨む今の気持ちは……(C)SHOJIRO KAMEIKE
23日(水・祝)、東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase366で、杉山しずかが藤野恵実を相手にラストファイトに臨む。
Text by Shojiro Kameike
今年3月、和田綾音を判定で下しフライ級QOPに返り咲いた杉山は、2カ月後に現役引退を発表した。その後、今大会で引退試合を行うこと、その相手が盟友である藤野恵実であることが明らかになった。これらの決定に驚いた人は多かっただろう。
大学時代に空手道禅道会に入門し、リアルファイティング空手道選手権大会の女子57キロ級で優勝。同時期にジュエルスでプロデビューし、約18年のプロ生活を送ってきた。2024年にパンクラスで、初のベルトを巻いたが、翌年3月にそのベルトを失う。そして和田との王座決定戦を制して再び王者となり、引退発表に至った。
対戦相手の藤野にとって、この試合はMMA50戦目となる。杉山とは練習を共にし、励まし合ってきた仲だ。パンクラスの公式リリースには「当初はエキシビションマッチとして予定されていた一戦」とある。格闘技界において、現役生活の最期に盟友とのエキシを行うことは多い。そんななか、なぜ杉山は引退とともに、藤野との公式戦に臨むことを決意したのか。杉山の想いが詰まった、現役最後のインタビューをお届けしたい。
プロとしてこれ以上、昇っていくことができないなら続ける必要はない。それが引退を決めた理由です
――現役としては、これが最後のインタビューになります。まず引退を決意したのは、いつ頃だったのでしょうか。
「前回の試合が終わった時、Me,Weの山﨑(剛)さんに『ありがとうございました』と伝えました」
――以前のインタビューでは「まだ強いから続ける」と言っていたことが印象に残っています。それゆえに引退を発表した時は驚きました。周囲の人たちも杉山選手の引退を知って驚いたのではないですか。
「いえ、そんなには……。藤野さんと試合することが発表された時のほうが、反応は大きかったです。引退セレモニーではなく、引退試合をすること自体もそうですし」
――確かに、盟友である藤野選手との公式戦を行うことは、もっと驚きました。パンクラスの公式リリースによると、当初はエキシとして行われる予定であったと。
「はい。私としては最初、試合をするつもりはなかったんです。これまで応援してくださった方々に感謝を伝える場が欲しい――パンクラスさんと話をしていくなかで、最後も公式戦で、と」
――なるほど。ではこのタイミングで引退を決意した理由やキッカケはあるのですか。
「いくつかありますけど、現実的に自分は39歳という年齢で。周りには、まだまだ私よりも頑張ってもらわないといけない人たちがいます。自分の子供も、そうですね。さっき言われたように、練習とかでは間違いなく強いし、試合でも勝つとは思うんですよ。前回の試合も5R戦って疲れた、というのもなくて。
ただ自分がこれ以上強くなるとか、上手くなるとか……試合で思うような動きが出せなかったし、これからも出せないだろうと思いました。プロとしてこれ以上、昇っていくことができないなら続ける必要はない。それが引退を決めた理由ですね」
――……やはりストイックですね。
「う~ん、どうなんだろう? ストイックなのかなぁ」
――これ以上出せないならプロとして続ける必要はない、という感情はファイターとして、真摯にMMAと向き合ってきた証しだと思います。周囲の人たちや関係者に現役引退を伝えた時の反応は? 皆は引き留めようとしませんでしたか。
「……そういう人は、いなかったですね(笑)」
――えぇっ!? それは……周囲の人たちは、どこか察していたのでしょうか。
「うん、それもあると思います」
自分ができることを出し切れずに後悔することもたくさんありました。そんな後悔がないように
――ラストマッチに関して言うと、ずっと一緒に練習してきた藤野選手と戦うことになり、複雑な気持ちはないですか。
「……最初よりも今のほうが、事の重大さを理解してきています」
――公式戦で藤野選手と殴り合うのは、どういうことなのか。
「そうです、そうです」
――それはやはり一緒に練習していて、藤野選手のスタイルと強さが分かっているからこそ……。
「事実としてそれもありますし、何か傷つけちゃったかな、とか」
――これが引退エキシであれば、今も一緒に練習することはできると思います。試合が決まってからは、練習もお話もしていないのですか。
「まず2人で話をして、会見の時にも喋っていましたけど、それ以降は――」
――これまでは藤野選手との練習があったから強くなれたし、試合で勝つこともできた部分は大きいと思います。一方で今回は藤野さんと戦うからこそ、藤野さんとの練習はない。それは、いちファイターとして不安要素にはなりませんか。

MMAPLANETでは2年前に藤野との対談を掲載。まさかこの2人が公式戦で向かい合うとは――(C)SHOJIRO KAMEIKE
「今回の試合は藤野さんに勝ちたいとか、負かしたいという気持ちは一切なくて。そういう目的の試合ではないかな、と思っています。その気持ちが負けに繋がらないよう、切り替えなきゃいけないんですけど」
――では最大の目的といいますか、藤野選手と戦う意味とは?
「今まで応援してくださった方々へ感謝を伝えるための試合です。この試合に勝って、さらなる高みを目指していくという、先はありません。もちろん藤野さんには、その先があるかもしれないです。ただ私にとっては、その面で内容が大事になるのかな、と。今まで勝利することが必要だった私にとっては、内容のほうを重視したい試合ですね」
――自身の中で、どのような内容をイメージしていますか。
「試合で勝つためには、どんな手段でも良かったです。グラップリングが弱い相手だったら、私はグラップリングで攻めていく。相手をどんどん疲れさせて……とか。でも今回の引退試合は、そういうことを考えなくて良い。戦略とかではなく、あるがままの私を出す。これまでの試合で、自分ができることを出し切れずに後悔することもたくさんありました。そんな後悔がないように、という試合なのかなと考えています」
――ということは、次の試合で藤野選手と思いきりド突き合うこともある、と。
「場合によっては、そういうこともあるかもしれないですね」
8割、9割方ボコボコになる試合ではありますけど、そんなところも見てもらえたらと思っています
――同時に、これまで自分のやってきたことを出し切れずに後悔したこともあったということですが……。
「前回の試合でいえば5Rあるなかで、練習ではもっと巧く攻めることができる。でも試合は相手があることで、怪我もあったりしたので自分は守りに入った部分もありました。思っていたように一本勝ちに向かうことができなかった。そういう部分で悔いがあります。
ただ、今までも悔いが残る試合は『次は頑張る』というモチベーションに繋がっていたんですね。でも私は引退することを選択して、もうやり直しがきかないと思っていました。それが今回、引退試合のチャンスをもらえて。100点を取りに行くとは言えないけど、合格点を取りに行きます」
――ラストファイトを控える選手のインタビューで、これまでのベストファイトを訊くことがあります。ただ、それも聞きづらく……逆に自分のベスト原稿は何かと訊かれたら、答えられないですよね。
「アハハハ。他人が読んで、評価するものですからね」
――それはファイターにとって試合も同じものだと思います。自分自身と他人では、一つひとつの印象も違うでしょうし。そんななかで杉山選手が一番思い出に残っていること、あるいは転機になった試合を教えてください。
「韓国で戦った時が一番大変でしたね。2019年3月にDouble GFCに出て(※後のUFCファイター、ジョン・チャンミに判定勝ち)、3R全力疾走で出し切りました。内容も良かったと思いますし、本当に疲れて楽しかった。それが一番印象深いです。こうやって疲れる試合をすると楽しんだ、と分かって」
――そう聞くと、やはりストイックなのだと思います。疲れる試合が楽しい、出し切ることが目的になるのは。
「まぁ、試合は疲れなくても勝つことができれば良いんですけどね(笑)」
――それはもちろんです。出し切れずに負けるのが一番、精神的に良くないと思いますし。
「ただ、今までそういう試合は、そんなになかったです」
――それも素晴らしいことではないですか。出し切れずに負けるファイターも多いなかで、出し切るために練習し、勝ってきたわけですから。だからこそ最後に、藤野選手を相手に出し切る、と。
「はい。今まで応援してくださった方に届けたい試合です。8割、9割方ボコボコになる試合ではありますけど、そんなところも見てもらえたらと思っています。この試合で別に格闘技界を去るわけではないので、引退試合の後も引き続きよろしくお願いします!」
■視聴方法(予定)
9月23日(水・祝)
午後2時45分~U-NEXT
■Pancrase366 計量結果
<ストロー級QOPC/5分5R>
[王者] 本野美樹:52.05キロ
[挑戦者] SARAMI:51.95キロ
<女子54キロ契約/5分3R>
杉山しずか:53.75キロ
藤野恵実:53.5キロ
<女子ストロー級/5分3R>
KAREN:52.05キロ
キアラ・ペンコ:52.45キロ
<ライト級/5分3R>
鈴木慈也:70.45キロ
藤村健悟:70.25キロ
<64キロ契約/5分3R>
髙木徳三:64.0キロ
ジョン・ダウン:63.5キロ
<フライ級/5分3R>
齋藤楼貴:57.1キロ
嶋田大輝:57.0キロ
<フライ級/5分3R>
嶺大基:56.95キロ
伊藤勇輝:56.9キロ
<バンタム級/5分3R>
小山敬司:61.45キロ
前田壮吉:61.35キロ
<ライト級/5分3R>
畑大晴:70.2キロ
濱地虎男:68.25キロ





















