【LFA242】再起戦でブレノと激突。上久保周哉「途中の攻防の一つひとつが、どういう意味を持っているか」
【写真】前日計量を134.8ポンド=61.14キロでクリアした上久保。取材は現地に到着後、9月15日に行われた(C)LFA
18日(金・現地時間)にミネソタ州プライヤーレイクのミスティックレイク・カジノホテルで開催されるLFA242。同大会では上久保周哉が、ブラジルのマルコス・ブレノと対戦する。
Text by Shojiro Kameike
今年2月、ムリシャことハファエル・ド・ナシメントに判定で敗れて以来の再起戦となる上久保。LFA三戦目だったムリシャ戦では最終3R、上久保がバックをキープしていた時間に不可解と思われるブレイクがあった。その内容と、上久保の見解はすでに報じられているとおりだ。
そんな敗戦から約7カ月――当初は6月26日のLFA236で戦う予定だったが相手が決まらず。さらに今大会では無敗のキルギス人ファイター、ダニエル・トイチュベク・ウールの対戦することが発表されていたが、トイチュベクの契約問題が発覚し、相手がブレノに変更されている。
こうした北米で戦うことの難しさについて、上久保は苦笑いを浮かべながら「もう慣れました」と語る。結局のところ、やるしかない。そして勝つしかない。LFA四戦目に臨むため現地入りした上久保に、ブレノ戦について訊いた。
ブレノは決して弱い相手じゃない。だから自分もずっと、気の持ちようを変えちゃいけないと思っていました
――今回は日本時間の9月13日に出発し、同14日に米国ミネソタ州のミネアポリスに到着したそうですね。
「はい。ミネアポリスの空港から割と近いホテルに泊まっています」
――ミネアポリスから、大会開催地のプライヤーレイクまでは車でそれほど遠くはない。一方で日本からミネアポリスまで、移動時間はどれくらい掛かったのでしょうか。
「まず日本からカナダのトロントまで12時間ぐらい。トロントでのトランジットが2時間ぐらいの予定でしたけど、それが3時間遅れて……合計5時間待ったあと、飛行機に乗ってミネアポリスまでは2時間ぐらいでした」
――海外に行くとトランジットに関する問題は多々あるかもしれませんが、それが減量気に入っているとキツイかと思います。現時点のコンディションはいかがですか。
「まぁまぁ、そういうこともあると思っていたので大丈夫です。慣れました(笑)」
――それは良かったです。今回のLFA出場でに関しては、大会直前で対戦相手が変更される問題もありました。とはいえ毎回そうといえば、そうで。そんなトラブルも慣れていますか。
「対戦相手の変更はLFAに限らないことで、それも慣れましたね」
――対戦相手として発表されていたトイチュベクは韓国ブラックコンバットとの契約があり、代わりにブレノと戦うことになりました。対戦相手変更の話が挙がった時は、すでにトイチュベク対策の練習も始まっていた頃ですよね。
「そうですね。ずっとトイチュベクと思って準備していました。ブラックコンバットとの契約があると分かってからも、とりあえずトイチュベクだと思って」
――なるほど。契約問題が解決して相手がブレノと正式決定するまでの期間は、いわば宙ぶらりんの状態で……。その状態では、選手とすれば何もしようがないといいますか。
「そうなんですよ(苦笑)。正式決定したのは結構ギリギリでした。LFAから『トイチュベクに関して契約問題がある』と言われてから2週間ぐらいは、相手が変更になるかどうかも分からなくて。その期間も、自分としてはトイチュベクと対戦するつもり練習していました。ブレノに変更されることが正式決定したのは、8月後半だったと思います」
――ブレノは昨年8月、上久保選手にとってはLFA二戦目の相手として発表されていました。その後ブレノが欠場となり、代わりにエリック・シェルトンと対戦しています。今回は逆に大会ギリギリで対戦相手がブレノに変更されていますが、急きょ変更された相手が以前に自身が対策や研究を行っていたファイターであることは、メリットになりますか。
「あまり変わらないですね。もともとトイチュベクという強い相手と戦うために、気持ちを創っていました。ブレノは代役といっても、彼も8月に試合をする予定がなくなり、改めて僕と対戦することになって。だから仕上がっている状態であることは間違いない。ブレノもベラトールやPFLでトップどころと戦ってきたファイターで、決して弱い相手じゃないです。だから自分もずっと、気の持ちようを変えちゃいけないと思っていました。誰が相手でも楽な試合にはならないし、トイチュベクもブレノも危険な武器を持っているファイターであることは変わらないので」
自分のやっている動作のほとんどは、言語化できる根拠があり、試合では無意識に動けるようになっている
――これは試合の話から逸れてしまうかもしれませんが……、失礼ながら個人的に、上久保選手はあまり喋りが得意ではなさそうなイメージを勝手に持っていました。しかし昨年2月のBreakthrough Combat03で、ライブ中継の解説を聞いていて驚いたんです。攻防一つひとつの説明が丁寧で分かりやすく、しかも早くスラスラと。
「えっ、そうですか。あまり解説をやることがないので嬉しいです(笑)」
――解説にも表れているように普段から一つひとつ攻防に対して意味を持ち、理解しながら進めているのでしょうか。
「はい。何のためのその位置取りをするのか。相手が動きているのは何のためなのか。そう考えながら相手にとってやりづらい位置取りなどを考え、普段から意識して練習しています。すると、たとえば普段は練習で起こることが少ないシチュエーションになったり、相手が予想しにくい動きをしようとしたとしますよね。その時も今の自分の位置取りと、相手ができることを考えると、そこからどう動こうとしているのかは分かる気はします」
――さらにその意識を高い水準で言語化できているからこそ、「予想していない事態」にすぐ対応できるのではないでしょうか。
「全シチュエーションが頭に入っているというよりは、まず『立つためには何が必要で、どういう動作になるか』には、ある程度決まったものがあります。そこに当てはめていくと次にどう動くかが分かる、というところはありますね」
――パターンを一つひとつ覚えて徹底することも重要ですが、そのパターンの組み合わせを構築していくこともまた必要なわけですよね。特にMMAほど、やるべきことが多い競技の場合は。
「そうですね。僕は言語化したり言語化されたりして、それを自分で解釈して理解するほうが分かりやすいというか。頭で理解して体に覚えさせたほうが、動きを入れやすいタイプなんです。ガムシャラに動いてどう、というのはあまり向いていなくて(苦笑)。『何のためにこの動作をやっているのか』という理由が、僕が動くために必要で――そのために自分のやっている動作のほとんどは、言語化できる根拠があり、試合では無意識に動けるようになっている面もあるという感じですね」
――今回はいつも指導を受け、セコンドにも就いている頂柔術の礒野元さんが同行できず、ロータス世田谷の八隅孝平さんがセコンドを務めると聞きました。
「代わりのセコンドを探さなきゃいけなくなった時、第一に浮かんだのは八隅さんでした。まず八隅さんに聞いたら、すぐにスケジュールを調整してくれて。出発まで1週間を切っていましたし、これはセコンドが見つからなかったらどうしよう……と思っていたんです。八隅さんもジムのこともあるのに調整してくれたので、凄く感謝しています。
礒野さんと八隅さんは、言葉のチョイスは違うけど動きに全部理屈があって、凄く自分の体に入りやすいです。どちらも再現性のある動きを求めていく部分は一緒で。教えてもらったことに合わせて動けば、僕も同じ動きを再現できるという部分で、技術に信用と信頼を置ける方たちです」
練習の内容や自分がやるべきことの道筋は整えてきました。まだ僕は強くなれる。
――試合の話に戻すと、LFA2戦目でブレノと対戦予定であった時、すでに対策とか研究はしていたのでしょうか。
「もちろんしてはいましたけど、言っても1年ぐらい前なので。でもここで巡り合ったことで、あの時間は無駄にならなかったかなと思っています(笑)」
――ブレノも2024年10月のラフェオン・スタッツ戦以来、試合が決まっても中止となることが続き、ここまで試合をしていません。
「彼はまだ年齢も若いし、この試合をしていない期間に強くなっているんだろうなって思います。だから映像を視ているよりは、実際に肌を合わせてみたら全然違う印象になるでしょうね」
――過去の映像を視るかぎりは、ブレノに対してどのような印象を持っていますか。
「彼自身は、昔から柔術をやっていて黒帯を巻いているというバックボーンを持っています。けど試合はオーソドックスに右のパンチと蹴りは威力があると思いますね。パンチのコンビネーションも速いですし、相手をよく見ながら打っているので、気をつけなきゃいけない。打撃に関しては、僕が戦ってきた相手の中では一番じゃないかなと思って、警戒はしています」
――ダニー・サバテロやスタッツがブレノと対戦した時は、序盤は非常に入りにくそうにしていました。足に触っても倒しきることができない。それはブレノの打撃の圧が強かったからでしょうか。
「打撃の圧が強いのと、組みは組みで割り切って、切ることに徹している。自分の中でやることをシンプルに切り分けているのは、試合で良いほうに働いているんじゃないかな、と思いますね。パンチに集中して、組みは切りきる。シンプルですけど、それができればストライカーは強いですよ」
――それが後半になると、スタッツはジャブからレベルチェンジで組むことができるようになり、サバテロも一度ジャンプしてから組んでいく展開もありました。
「ブレノは出力が高いタイプだから、しつこく組みつかれると後半は組みを切る方法や体力が削られているのかな、と。サバテロも1回で組み切れなくても、次々と組みを繋げて最後はポジションを取ったりしていましたね。そういう意味では自分も、1回切られても次に繋げていく。どんどん打撃と組みを繋げていかないと、1回のアテンプトでは取れないかな……と思っています」
――前回の試合、ムリシャ戦のブレイクについては以前に話されています。次の試合に向け、あのブレイクのタイミングについて意識することはありますか。
「まぁ……前の試合が終わってから、ブレイクされうるポジションだっていう解釈で、練習はしているというか。僕の中では……、……う~ん、……バックから攻めていても、外から見て攻めているという印象がなければブレイクされる。それはゼロ点のポジションだと思っています。だからバックを奪ったら攻めなきゃいけない。その『攻める』というのは、う~ん……」
――問題は、その「攻めているという印象」の定義ですよね。
「殴ることでは、おそらくポイントが入らないと思っていて。要は……バックを取るということは、取っている側からすればプラスになるポジションではない。そう考えて練習するようになりました」
――先日はRIZINの平本×ダウトベックの裁定が話題となりました。ダウトベックのテイクダウンについて「攻め」とみなすのか、それとも……。
「あの裁定については仕方ないと思うんですよ。僕は妥当な判定結果だったと思っていて。テイクダウンも攻撃だから、打撃をかいくぐってテイクダウンに入るのは、同じように打撃をかいくぐってパンチを当てることに等しいんじゃないか、とは思います。ただダウトベックもテイクダウンしたあと、攻めることができなかったのは事実だから。それは僕がムリシャ戦でバックを取ったけどRNCを極められず、ただ後ろについているだけだった。小突いてはいたけど、それが攻撃だとはみなされなかったこととイコールで」
――世界的に見ても、最近のレフェリングや採点の傾向を考えると大きく変化してきました。ファイターとしては、その変化にどう対応するかが重要となります。
「採点基準が変わることに不満がないといえばウソになるけど、僕たちが言っても基準が変わるわけじゃないですからね。僕たちファイターは、その基準に沿ってフィニッシュを目指す。フィニッシュを目指すというゴールは変わらないんですよ。でもそのゴールに至るまでの過程――途中の攻防の一つひとつが、どういう意味を持っているかを、僕たちはちゃんと理解して試合をしなきゃいけないと思います。
前回の試合に関しては、僕の中のアップデートが足りなかった。ある程度は折り合いをつけて、変えていかないといけない。今までどおりじゃダメなんだと思って、練習の内容や自分がやるべきことの道筋は整えてきました。整えてきたし、まだまだもっとよりよくできる。まだ僕は強くなれる。
道筋を整える、とは全く新しい道に変えることではなく、僕が持っている武器の方向性を整えるということです。そうして整えてきたものを今回の試合で出したいし、出すことができると思っています」
■視聴方法(予定)
9月19日(土・日本時間)
メインカード午前10時~LFA Fight Network
■LFA242 主な対戦カード
<フライ級/5分3R>
デヴォン・ロジェイ(カナダ)
ダヴィ・ビテンコート(ブラジル)
<バンタム級/5分3R>
上久保周哉(日本)
マルコス・ブレノ(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ケヴィン・キャリアー(米国)
スティーブ・コリンズ(米国)
<ライト級/5分3R>
ケルトン・スニーヴィ(カナダ)
ジュリオ・セザル・シャーヴィス(ブラジル)
<キャッチウェイト/5分3R>
マーカス・ナッシュ(米国)
ウィラー・アウベス(ブラジル)
<フェザー級/5分3R>
エリアス・ロドリゲス(米国)
ロメロ・ユニオン(米国)
<キャッチウェイト/5分3R>
ノア・ガショ(米国)
アドリエン・スピンクス(米国)























