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【Pancrase354】田嶋椋と対戦、18歳のKOファイター山木麻弥「最年少でパンクラスのチャンピオンに」

【写真】ALIVE栄支部に貼られている久米のポスターとともに。久米は7月27日Pancrase355で引退セレモニーが開催される。ALVE鈴木社長曰く、山木から久米に対する絶対的な信頼が感じられるという(C)SHOJIRO KAMEIKE

6月1日(日)、東京都港区のニューピアホールで開催されるPancrase354で、山木麻弥が田嶋椋と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

プロデビュー以来3連続KO勝ち中の山木は現在18歳。まだプロデビューして1年も経っていない。そんな彼の強さを裏付けるのは、練習仲間でもあるフェザー級KOPの三宅輝砂が「あのメンタルはヤバい」と言うほどの気持ちの強さだ。両親の影響で幼少期よりスポーツに明け暮れてきた山木は、このまま一気に頂点まで駆け上がることができるか。そんな山木に初インタビュー!


日沖さんだろうと久米さんだろうと「やってやるぞ」と思っていました

――今、18歳なのですね。

「そうです!」

――その世代だと、多くは親御さんが格闘技を好きで子供に習わせるというケースが多いですよね。それこそK-1の魔裟斗さん、MMAの山本KID徳郁さんや五味隆典さんを見ていて。

「それってよく言われるんですけど、全く違うんですよ。格闘技を始めたキッカケは、いとこがフルコン空手をやっていて。『俺もやりたい!』という感じで、空手の道場に通わせてもらっていました」

――両親の影響で格闘技を始める環境ではなかったのですか。

「そうではなかったです。でもスポーツ一家ではありました。父は中学校から高校まで野球、母は水泳で実績を残しているような家族で。だから僕も小さい頃から野球と水泳と体操を、空手と並行してやっていましたね。なので小学校の時は週5で習い事をやっていて、友達と遊ぶのも週1ぐらいでした。週5の習い事も全てスポーツで。

親は『水泳と体操は小さい頃に習わせておいたほうが良い』と考えていて。小学5~6年生になると水泳と体操は辞めて、野球と空手の2つに絞りました。でも中学生になって『野球と空手、2つを並行して続けるのは難しいな』という話になったんです。どちらを選ぶか、という話になって僕は空手を選びました。僕が空手を選んだ理由は二つあって。一つは、朝がメッチャ弱いんですよ」

――……えっ。

「野球って朝練とか、朝メッチャ早く起きないといけないじゃないですか(苦笑)。あと一つは、中学生って『格闘技をやっている』と言ったら周りから驚かれる時期で。『凄いね』とか言われるのが気持ち良くて、その二つの理由で空手を選びました。空手のほうは小学5年生で全日本ジュニアのベスト8、中1で国際大会のベスト8になりました。それで空手は終えたという流れですね」

――空手は中学1年の時に辞めているのですか。

「全日本でベスト8になった時、空手に対しては少し冷めていました。その頃には『将来はMMAをやりたい』と考えていたので。親からは『MMAを始めるなら、中途半端なレベルで辞めるなよ』と言われて中3の時、アライブに入門しています」

――MMAを始めるうえでアライブを選んだ理由は何だったのでしょうか。横に鈴木陽一社長がいるので言いづらいかもしれませんが……。

2024年4月の山木。まだプロデビュー前だった(C)SHOJIRO KAMEIKE

鈴木 そんなことはないでしょう(笑)。

「家の近くにもMMAのジムはあったんですけど、指導者として日沖発さんと久米鷹介さんの名前があったので、アライブを選びました。親からも『MMAのプロで食っていけるようになれ』と言われていて」

――空手の実績はもちろん、小さい頃からスポーツを続けてきていただけに、ジムに入門したばかりでも腕に自信はあったでしょう。

「ありました。それこそ日沖さんだろうと久米さんだろうと『やってやるぞ』と思っていましたね。そうしたら日沖さんや久米さんの前に、一般会員さんにボコボコにやられてしまいました(苦笑)。アライブって、出稽古に来た他のジムのプロ選手を極めちゃう一般会員さんがいて……」

――流石です(笑)。その状態から、どれくらいで試合に出られるようになったのですか。

「入門は中3の春だったんですけど、怪我があって本格的にMMAの練習を始めるのは1年後になってしまったんですよ。そこから一般クラスで1年、アマチュア時代が1年――2年でプロデビューしました」

――ということは、まだMMAを始めて3年しか経っていないのですか。

「はい。自分としては練習を始めて半年ぐらいで『行けるだろう』と思うようになっていました。周りからも『もう試合いけるんじゃない?』という評価はもらっていて。でもアライブでは1年ぐらい練習しないと試合には出さない、という感じで。しっかり1年間練習したあとアマチュアの試合に出て、アマチュア戦績は7戦全勝。そのうち4勝が一本、2勝がKOでした」

相手は2位の実力じゃない。どうやったら自分が負けるのか分からない

――7戦のうち6試合でフィニッシュ……むしろ1試合だけ、なぜフィニッシュできたかったのでしょうか。

「初めてヘッドギアなしで、5分2Rの試合に出た時ですね。ペース配分の問題もあったし、単純に相手が強くて」

――鈴木社長、山木選手の場合はアマチュア時代から試合内容は圧倒的だったのですか。

鈴木 圧倒的というより、試合の中で要所が分かっていますよね。「ここで殴らないといけない」「ここで極めないと――」というポイントを認識できる。アマチュアだと試合でバタバタしてしまう選手も多いじゃないですか。でも麻弥の場合は、それがない。セコンドが大きな声を出さなくても自分で感じて、自分で動くことができる。だから久米も麻弥のミットを持ちながら、いつも「丁寧にやれば試合では勝てる」と言っています。

「僕の場合は『試合になると自分じゃない』という感じなんです」

――というと?

「プロデビューして3試合とも、何も考えずに戦っていて。もう生物的な感覚というか、『ここは行ける!』と思う前に、いつの間にか行っていますね。試合後に映像を視ても『なぜここで行けたんだろう?』と思うこともあります。

デビュー戦は特に1Rでバテていて、インターバルの時に社長から『手を出せ』と言われました。その時点では僕も結構ネガティブ思考になっていたんですけど、そう言われてスッと疲れが消えていて。2Rが始まったら、いつの間にかKO勝ちしていました。その時もテイクダウンした時に久米さんから『軸を保て!』と言われたことしか記憶がないです」

鈴木 そこには麻弥から久米に対する絶対的に信頼感があるんですよね。久米が普段から「手を出せ」「軸を保て」とか、麻弥によく言っている言葉があって。自分はその言葉をメモしていて、インターバル中に僕から伝える時があります。すると麻弥の中で、久米と練習でやっていることが思い起こされる。

あと麻弥は相手のこともよく見えているし、会場のことも見えていたりするんです。たとえば日沖は試合前、リングに入った時「会員の××さん、この席で観てくれていますね」とか言っていて。麻弥の場合、それが最初からできていたから驚きますよ。

――日沖発+久米鷹介の要素とは、まさにアライブの選手ですね。あとは竹本啓哉選手の逆立ち計量と。

これまでALIVE鈴木社長の連載企画で何度か登場している(C)SHOJIRO KAMEIKE

「減量も余裕はあるので、逆立ちはしなくて大丈夫です(笑)」

――アハハハ。山木選手はプロデビュー以降、ここまで3戦全KO勝ちを収めています。自身のキャリアについて、どのように感じていますか。

「思っていることが全て実現しているような感じですね。アマチュア時代から紙やSNSに『9月、東海選手権優勝。そのあと全日本で優勝してプロデビュー』と書いていて。それが実現しているのは自分の努力なのか、運が良いのか、それ以上のものなのかは分からないですけど……」

――今はどのようなことを思い描いているのでしょうか。

「年末にタイトルマッチ、ですね」

――おぉっ!!

「その想いを実現するために、フィニッシュにはこだわっています。自分が他の試合を視ていて『これは面白い』と思うのは、フィニッシュしている試合もそうだし、フィニッシュに繋がる動きがあるかどうかで。第三者として自分の試合について考えても、ヌルい内容だったら誰も見てくれないし。絶対フィニッシュすることを目標にして試合に挑んでいます」

――年内にベルトを獲得した先については?

「日本で一番有名な団体はRIZINなので、RIZINにレギュラー参戦してからUFCに行くのが理想です。知名度を上げて、金を稼ぎ、強さを追求していく。そのためにMMAを始めたので」

――6月に対戦する田嶋選手は現在、バンタム級2位です。ここで勝てば理想にグッと近づくことができます。田嶋選手に対する印象を聞かせてください。

「実力でいえば『なぜランキング2位なんだろう?』という感じですね。体つきや柔術の技術もレベルは高いと思うけど、2位の実力じゃない。どうやったら自分が負けるのか分からないです」

――では、どうやって勝ちますか。

「テイクダウンを切って切って、打撃で勝つことしか考えていません。今までパンクラスのベルトを最年少で獲得したのが鶴屋怜選手で、当時20歳だったんですよ。だから自分が一気に駆け上がって、最年少でパンクラスのチャンピオンになります!」

■視聴方法(予定)
6月1日(日)
午後13時05分~ U-NEXT

■Pancrase354 対戦カード

<フェザー級KOPC/5分5R>
[王者] 三宅輝砂(日本)
[挑戦者] 中田大貴(日本)

<フェザー級/5分3R>
平田直樹(日本)
栁川唯人(日本)

<バンタム級/5分3R>
田嶋椋(日本)
山木麻弥(日本)

<ミドル級/5分3R>
長岡弘樹(日本)
平田旭(日本)

<ストロー級/5分3R>
寺岡拓永(日本)
飯野タテオ(日本)

<フェザー級/5分3R>
岡田拓真(日本)
中村晃司(日本)

<ライト級/5分3R>
丸山数馬(日本)
後藤亮(日本)

<女子フライ級/5分3R>
和田綾音(日本)
オノダマン(日本)

<フライ級/5分3R>
萩島answerタクミ(日本)
加藤和也(日本)

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