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【DEEP125】牛久絢太郎を相手にバンタム級王座決定戦、福田龍彌─01─「取っ払わな。格闘技も、狩猟も」

【写真】(C)MMAPLANET

5月5日(月・祝)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP125 IMPACTで福田龍彌が牛久絢太郎の挑戦を受け、DEEPバンタム級王座初防衛戦を戦う。
text by Manabu Takashima

福田は昨年3月の雅駿介戦でバンタム級転向を果たすと、9月には瀧澤健太との王座決定戦、大晦日の芦澤竜誠戦と3試合連続で初回KO勝ちしている。フライ級とバンタム級、DEEP史上2人目の同時に階級制覇を果たした福田は、コアファンの誰も認める実力者振りと一発に賭ける気持ちの強いファイトを全国区にしつつある。

大晦日の勝利も、DEEPで王座防衛戦を律義に戦う福田の生活は、世の中の普通とされるモノと明らかに一線を画している。同時にプロMMAファイターとしての生き方も、他と明白に違う福田にまずは釜谷真とのミット打ち、そしてバンタム級転向と職業格闘家として流儀を尋ねた。


──牛久選手との防衛戦を控え、今日は釜谷さんとのミット打ちを見させてもらいました。去年の4月に取材させてもらった、大森惇平さん(福田がボクシングジムに通っていた頃からの友人。2013年ボクシング・フライ級西日本新人王)とのミット打ちともまた違っていました。

「今日のミット打ちやったら、実戦に近い。まぁ全部、実戦に近いことをするんですけど、打つまでの方を意識しているかな。打つまでのところのやりとり、みたいなんが月曜日(釜谷氏とのミット打ちが月曜に行われる)は多いです。そこに重きを置いてやっているから」

──惇平さんとのミット打ちは、やり合う。ミット打ちでも打ち合うという風に見えました。

「惇平とのは……100を101にするみたいな。今日のは牛久選手っぽくしている釜谷さんが、何を狙うんか。自分の対象物が何をしてくるんかなぁって。何をどうするんやろうっていうのを観察する」

──それは釜谷さんが牛久選手になり切っていなくても、成立する?

「いっしょなんですよ。だから、釜谷さんは色々と構えを見せてくれたりとか。体の振り方とか、寄せてくれたりとか。牛久選手の試合を見て、やってくれるんですよね。僕はその釜谷さんは、どう動くんか。どういう生き物なんかを観察して、捕まえるつもりでやる」

──それはやはり猟をするのに、通じてくるモノがあるのではないでしょうか。

(C)RYUYA FUKUDA

「通じてくるモノはあるッスよ、やっぱり。なんか、その反射を読むじゃないですけど。どう動きよるんやろうっていうようなのを見て、感じて、それに合わせる。そこは似ている感じはあります」

──仕留め切るわけですよね、動物や鳥は。

「そう、そう、そう。仕留め切らなあかへんス。仕留め切らないと、反撃を食らうヤバさもあるッスよね。だから、躊躇したら危ない」

──ファイターとしては尊敬しますが、街で肩が当たった時とか福田選手のような人間が含まれていると思うと怖いですね(笑)。

「いや、いや、いや(苦笑)。そんなんで怒らないですけど、まぁ、そこを取っ払わな。格闘技も、狩猟も。どっちかという自分のベストがどうなんか。そこに重きを置いている」

──そこまでの取り組み方ですと、オフが凄く大切になってくるかと思います。

「オフは必要やと思いますけどね。動物でも、そうやし。ニュートラルがどのラインかっていうだけで。オンのクオリティをめちゃくちゃ上げていく部分もあれば、平常時──ニュートラルをどの高さにするか。そういうところも大事なんかなと。

自分のなかで一番集中できる感覚って、あんまり長いことはもてへんのですよ」

──では、そういうなかでのオフの過ごし方というのは?

「何も考えずに、ボォっと(笑)。山、見て。山の中を歩いたり。普通に子供とひたすら遊んだり。何気ない時間を、ただただひたすら過ごしています」

──その話を聞いていると、バンタム級転向が理に適っていたと納得できます。フライ級への減量で、前日にあれだけフラフラになっていると生物的に弱くなってしまっていたかと。

「そうです(微笑)。だからクオリティはこんなんと違うねんけどなぁというのは、日々感じていました。なんか、減量しんどいな。そこを惰性で生きていたんですよ、俺。今までずっとフライでやってきたしな、みたいな。

階級を上げたら良かったんやけど。バンタム級に上げるの妥協してんのとちゃうかな、みたいなぁ。そんなこと思うんやったら、辞めた方が良いとなっていた時期もあったし」

──減量の厳しさから逃げるのは、戦いから逃げるものだと?

「そう、なんか……。なんか、分かっていなかったです。試合はフライ級でやるもん、みたいな。階級変更という選択肢がなかった」

──バンタム級で戦うようになって、体が健康。なら、心も健康ということは?

「あぁ、それは思います。イィ感じには。したいことに目を向けられることが増えたし。毎日、目的をもってビシバシできているんで。前はホンマに余裕がなかったです。今も余裕があるかないかでいえば、ないんやけど(笑)。注ぐべきところに労力を注ぐことができる環境にいられるようにはなれたかな、と。今、そうですね……。昔はあんまりやりたくないことをしないとアカン時間も多かったから。

会社員の時からずっとそうやし、選手専門になりだしてからもそうやし。プライベートでも、父親になって。人それぞれが経験していることやろうけど、父としてとか、人としてとか。そういうこともあるから。格闘技だけしているというても、そういう部分はある。

普通の父親として、保育園に子供も送っているし。普通の父親として息子の保育園での様子を聞いて、『えっ、マジですか』とかやっているし(笑)。奥さんから『こんなことあってん』と聞いたら、『そっかぁ』と思うし。そっちが僕の本質で、ファンの人が見てはるのは僕の一部で(笑)」

──試合が決まると、その比重は変わってくるのですか。

「それがお仕事なんで。僕が人として、ソレを選んでやっていることやから──生業にして。そこで見せることが、僕の商品価値に通じてくるんで。当日、後楽園ホール、長くても15分間だけ。そのクオリティを上げるための日々を送ります。そこで良いモノを提供しないといけないので」

──昨年は5月大会を負傷欠場、9月に王座奪取。12月はRIZIN大晦日大会で芦澤竜誠選手をKO。商品価値とうい部分も踏まえて、あの試合はMMAファイターのキャリアを積むうえで、どのような意味合いがあったのでしょうか。ある意味、日本で最もMMAが注目されるイベントです。

(C)RIZIN FF

「あの試合に関しては、勝ち方。

結果を創るのはイージー。それは評価には繋がらないから。どういう勝ち方をするかが、商品価値。漬けて勝つとか、ちゃんとMMAをしてポジションキープしてとか。それを続けるみたいなんは多分、他の選手でもできる。それは。やっぱ俺にしかできへん勝ち方したるっていうのは思って、そこには拘っていました。

だからキャリアとしては、結果よりも内容が問われる試合やった。『その内容で、商品価値を知らしめてあげてくださいね』って、なんかそう言われているように受け止めていました。そういう気持ちで戦っていた、と(笑)」

<この項、続く>


■DEEP125 視聴方法(予定)
5月5日(月・祝)
午後5時50分~ YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ、U-NEXT、サムライTV

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