【ROMAN02】打撃有りは85カ月振り=松本大輔戦、教祖 門脇英基「人に聞いて、情報を入れて、整理する」
【写真】49歳になった教祖。2002年!!!にはフランスのゴールデントロフィー的な袖なし道着を着用したORGでも戦っている (C)TAKUMI NAKAMURA
27日(日)に東京都新宿区のGENスポーツパレスで開催されるROMAN02にて、門脇英基が松本大輔とROMAN COMBATルール=道着着用MMAで対戦する。
text by Takumi Nakamura
アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラと日沖発の修斗フェザー級王者旧旧対決が組まれた今大会で、この二人とも拳を交えているもう一人の元修斗フェザー級王者――門脇が2018年3月のGRANDSLAM07における稲葉聡戦以来、85カ月ぶりにMMAでの戦いに挑む。
一部で教祖と称される門脇が試合から離れている期間にどう格闘技と向き合ってきたのか。門脇ワールド全開のインタビューをお届けしたい。
何十年もやってきましたけど、結局分からないことだらけ
――門脇選手のROMAN02参戦、道着MMA出場には驚きました。かなり久々の試合になりますが、ROMAN参戦を決めた理由から聞かせてもらえますか。
「ROMANの方から話をいただいて、それがきっかけですね。試合そのものは……大分久々ですね」
――こちらで調べる限り、2021年11月のUNRIVALED01でグラップリングルールで米倉大貴選手と対戦して以来、打撃ありのMMAの試合は2018年3月のGRANDSLAM07での稲葉聡戦以来になります。試合そのものはオファーがあればやりたいという気持ちはあったのですか。
「それはどこかにあったのかもしれないですね」
――では米倉戦以降は、いつかまた試合をしようというより、自然に過ごしていたのですか。
「そうですね、はい。だから試合の話が来てちょっと慌てました(苦笑)」
――門脇選手は試合から離れている期間はどんな練習をしていたのですか。
「自分は格闘技を何十年もやってきましたけど、結局分からないことだらけなんですよ。それを自分のなかで一つずつ整理していましたね。練習量は若い頃よりだいぶ減りましたが、その整理する作業が楽しかったですね」
――分からなかったことを整理する。それは具体的にどのような作業なのですか。
「それはもう組技も寝技も分からないことだらけだし、例えばレスリングのテクニック、練習方法さえも自分は分かってなかったんです。というか…もう全部ですね。結局若い頃はみんな“なんとなく”で練習して、その理解で突っ走る人もいますけど、自分は不器用だから“なんとなく”の理解で体を動かすことが出来なかった。それでずっと引っかかっていたことがあったので、それを一つずつ整理していました。なんて言うのかな…このまま死んだら『あれってなんだったんだろう?』というのが多すぎたので、それを練習しながら整理していました」
――その整理のために各競技の専門家の指導を受けることもあったのですか。
「練習でそういう人を見かけたら、自分が分からなかったことを『教えて、教えて』と声をかけまくっていました。なかなかみんな教えてくれないんですけど(苦笑)。あと今はネットに色々な技術や練習方法が動画で転がっているので、そういうものを集めたりもしています。自分でもたくさん考えるんですけど、今思えば昔の自分は本当にスカスカでした。スカスカだったからこそ人に聞いて、情報を入れて、整理する。それの繰り返しです」
――整理する材料としてUFCなどのMMAの試合を見ることもあるのですか。
「そういう今のMMAの試合も見ますけど、やっぱり自分はもうちょっと絞った技術を見ることが多いですね」
――主な練習場所は所属しているURUSHI DOJOになるのですか。
「そうですね。そこで色んな人と練習しながら、動画見ながら、日々いろんなことを考えて…です」
――この数年で格闘技関連の動画は爆発的に増えたと思うのですが、得られる情報は増えていますか。
「情報源はいくらでもあるんですけど、しっかり理解できない、抽象化できないというか、時間がかかりますよね。特に僕の場合は。今思えば僕は見たことや教わったことをパッとできるようなタイプじゃないんで、しっかり頭で理解しないと動けないんです。そういう不器用なところがあるから、ちゃんと時間をかけないといけない。そのための時間はいくらでもあると思ったんで、そこを整理整頓していました」
――そうしているうちにあっという間に時間が経っていたという感覚なのでしょうか。
「そうかもしれないです。ただ時間そのものは何年も過ぎたんでしょうけど、なかなか整理できないし、時間がかかるんですよね。さっきも言ったみたいに自分は不器用で、体の才能があるわけではないんで」
センスがないから人が使わない動きとか、人がやらないような動きばっかりやっていたんです
――例えばここ最近見た動画で最も印象に残っているものは何になりますか。
「特別なものじゃなくて、レスリングのウォームアップでやるような基礎的なことをやっている動画ですかね。この人たちはこういうウォームアップの動きを積み重ねて、ものすごい技を使うようになるんだなと思って、そういう基礎中の基礎みたいな動画ばっかり最近は見ているかもしれないです」
――いわゆる教則的なものではなくて、ウォーミングアップしている動画でも得るものがあるんですね。打撃で言うならシャドーボクシングをひたすら見ているような感覚ですか。
「ただ打撃は映像を見ても、やっぱり難しいんですよ。組技は相手と接している面があるから動きが限られるんですけど、打撃は基本的に相手と離れているから手数が無限にある、なかなか積み重ねていく速度が違うというか。僕は積み重ねていく感覚で打撃はできないですね」
――なるほど。相手に触れる・触れないで大きく違うわけですね。
「僕の場合は、ですよ。相手と接している=動きが限られる組技の方がイメージしやすくて、相手から離れている打撃やスタンドの攻防はイメージするのが難しいです」
――かなり深い格闘技トークになってきましたが、門脇選手ほど長く格闘技をやっていても今ようやくウォーミングアップに辿りついたくらいなんですよね。
「僕は本当にそのレベルなんですよ。重要なことに気付くのが人より10倍、20倍遅いんだと思います」
――他の選手はそこまで深く考えていないから、自分が気付いてるかどうかも分かっていないのではないでしょうか……。
「それでもみんな動けちゃうわけですよ、深く考えなくても。でも自分はそれが出来ない。だから頭でしっかり理解するという段階を踏まないと、僕は自分の体に反映できないんです。僕はそれを言葉にしたものが“センス”だと思うんですけど」
――見ている側すると門脇選手は門脇スペシャルというオリジナルの動きを開発したり、独創的な部分やセンスがあるように思うのですが、門脇選手本人は違う認識なのでしょうか。
「逆に僕はセンスがないから人が使わない動きとか、人がやらないような動きばっかりやっていたんです。みんなが当たり前に出来ること・やっていることを自分は理解が足りなくておざなりにしてしまったり。格闘技の全体像が見えてなかったんですよね。だから目先のことしか見ていなかったんだと思います。本来なら格闘技をやる上で効率のいい、学んでいく順序とかあるわけじゃないですか。そういうのが全く見えてなかったんだと思います。だから人がやらないことをやっていたんでしょうね」
『うわっ、俺まだやってるわ』みたいな感じで、自分にちょっとびっくりすることはあります
――そして今回のROMAN02では道衣着用のMMAルールで戦います。門脇選手のいう格闘技の整理の中に道衣の技術は含まれていたのですか。
「これに関しては本当にチャレンジですね。ROMANから話をいただいた時、ちょっと考えさせてもらったのがそこ(道衣)なんですよ。この試合が決まるまで道衣の練習は疎かになっていて、道衣の技術は分からないことが多いんで、そこに対応するのはちょっと厳しいのかなと思います」
――その上で門脇選手が、イメージしている動きとは?
「若い時の僕は若いの時の僕で頑張っていました。ただ頑張っていたけど、全体像が見えないような動きになっていたので、そこを整理した分、今までとは違う動きが出せれば良いのかなと思います。当たり前のことが少しずつ分かってきたというか、少しずつ埋められるようになってきて。自分は性格が歪んでいたのか、昔は当たり前のことや効率の良さがあんまり分からなくて。めちゃくちゃ頑張っていたのに、今思うと効率はとても悪かったし、本当に何も分かっていなかったと思います。それは動きもコンディションも含めて。だから昔の試合を見たら『厳しい戦いをしてるな』とか『それじゃキツイよな』と思うと思います。自分の頑張りが反映されないというのは、自分の下手くそなところですね」
――では対戦相手の松本大輔選手の印象も聞かせてもらえますか。
「もうほとんどの選手は自分よりも動けるし、年齢的にも若い選手ばっかりで、松本選手もそうだと思いますし。ちゃんと責任を持ってしっかり動けるようにしないといけないなと思います。特に道衣の練習は最低限、付け焼き刃だったとしてもやっておかないといけないと思っているところです。あとはグラウンドの攻撃(打撃)がどこまで有効かでも大分変ってくると思うので、そこはルールと相手選手と道衣の技術…そこら辺をまさに整理しているところです」
――このタイミングで道衣の試合をすると、また新たに整理しなければいけないことが増えてしまいそうですね。
「そうなんです。自分は色んなものに手を出すと混乱しちゃうんですけど、今回は試合を受けたので混乱しないように頑張ります(苦笑)」
――ROMANという大会そのものが他のMMAとは違う色のある大会ですが、これから門脇選手はどんなことを目標に格闘技を続けていこうと思っていますか。
「はい。試合がどうなるかは分からないですけど、自分のやりたいことはずっとやっていきたいです」
――門脇選手と同世代の選手の多くが引退していると思うのですが、門脇選手は生涯格闘家として自分が思う格闘技を追及していきたいですか。
「いやぁ…それはちょっと分からないですね。ただ若い時から分からないことを探していたら、周りはみんな引退という状況になっていて、『うわっ、俺まだやってるわ』みたいな感じで、自分にちょっとびっくりすることはあります」
――それでは門脇選手の久々の試合を楽しみにしている人たちにメッセージをいただけますか。
「とりあえず色々と悩みながら試合に向けて頑張っている最中です……そのくらいですかね」
――今日は門脇選手にしかできないディープな格闘技談義をありがとうございました。試合も楽しみにしています。
■視聴方法(予定)
4月27日(日)
午後12 時00分~Twit Casting LIVE
<R.O.M.A. RULES無差別級/時間無制限>
関根秀樹(日本)
ゲイ・ババカール(セネガル)
<ROMAN COMBATライト級/15分1R>
日沖発(日本)
アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラ(ブラジル)
<ROMAN COMBATウェルター級/15分1R>
大浦マイケ(ブラジル)
ウィル・チョープ(米国)
<ROMAN COMBATフェザー級/15分1R>
松本大輔(日本)
門脇英基(日本)
<ROMAN COMBATフェザー級/15分1R>
大村友也(日本)
清水俊一(日本)
<ROMAN COMBAT94キロ契約/15分1R>
中山賢一(日本)
瓜田幸造(日本)
<ROMAN COMBATバンタム級/10分1R>
江崎壽(日本)
江木伸成(日本)
<ROMAN COMBAT75キロ契約/10分1R>
押木英慶(日本)
高橋孝徳(日本)
<ROMAN COMBAT95キロ契約/10分1R>
中里謙太(日本)
田馬場貴裕(日本T)
<ROMAN COMBAT95キロ契約/10分1R>
テイラー・ラング(カナダ)
関澤寿和(日本)
<ROMAN柔術無差別級T1回戦/7分1R>
ランジェル・ロドリゲス(ブラジル)
白木アマゾン大輔(日本)
<ROMAN柔術無差別級T1回戦/7分1R>
森戸新士(日本)
柳井夢翔(日本)
<ROMAN柔術フェザー級/7分1R>
大脇征吾(日本)
鍵山士門(日本)