【UFC314】パトリシオ・ピットブルを迎え撃つヤイール・ロドリゲス「一番重要な技は、技術じゃない」
【写真】UFCで戦っていて、ここに挙げたインタビューの内容を話せるなんて──どれだけ人間ができているのか。そして何度、挫折から立ちなってきたのか。感動的ですらあったロドリゲスだ(C)MMAPLANET
12日(土・現地時間)、フロリダ州マイアミのカセヤ・センターで開催されるUFC 314「Volkanovski vs Lopes 」で、Bellator世界フェザー&ライト級王者だったパトリシオ・ピットブル・フレイレがオクタゴン初戦を迎える。対戦相手はヤイール・ロドリゲスだ。
text by Manabu Takashima
心がズタズタになっていたオルテガ戦後、彼は自分を見つめ直し、フィジカル全盛のMMAにあってアートを見出すこととなった。ここまで詩的で、哲学的だとは思いもしなかったヤイール・ロドリゲスの数々の言葉を堪能してほしい。
惰性でやってきたことやめたよ。過去数年はマーシャルアーツの側面を見ていなかった
――ヤイール、本日はインタビューを受けていただきありがとうございます。
「こちらこそ、ありがとう。日本のファンに僕に声を届けてもらえて嬉しいよ」
──では早速ですが、今週末パトリシオ・フレイレと戦います。今の気持ちを教えてください。
「心、気持ち、体の仕上がりも最高だ。もう戦う準備はできている。土曜日が待ちきれないよ」
──昨年2月にブライアン・オルテガに敗れ、ヴォルカノフスキーとの王座統一戦から連敗。1年以上、ブランクがあったのはどのような理由からですか。
「ブライン・オルテガに敗れてから長い間ファイトをしなかったのは、戦える状態になるのを待っていたからなんだ。実際あの後は少しの間、旅に出た。自分を見つめ直すためにね。正直、あの時点で僕の心はズタズタだったから。人生を考えないといけないと思ったんだ」
──その経験が、MMAファイターのキャリアに影響を及ぼすこともあったのでしょうか。
「そうだね、まず惰性でやってきたことやめたよ。過去数年はマーシャルアーツの側面を見ていなかった。そしてフィジカル・ストレングスに重きを置いてしまっていた。今はよりマーシャルアーツに重点を置いている。メディテーションをして、限界を取り払った。これまで耳にしていた溢れるほどの情報を処理した。
結果、学ぶことが増えた。試合の映像を見て、考え、分からなことを尋ねる。どこが勝敗の分かれ目だったのか。どういうタイミングで技は決まるのか。練習前に瞑想をして、トレーニング後は会話をする。そうしたら、また自然と練習が始まる。結果、技術を見直すこともできた」
──独創的な動きが信条のヤイールですから、やはりマインドセットも一般的にフィジカル重視では違っていたのかもしれないですね。「MMAの技で一番重要な技は、技術じゃない。特定の技術があり、それを自分の動きのなかで如何に使えるようになるのか。そこが大切なんだよ。常にアジャストが必要で、それができるかどうか。自分の動きにあった使い方ができれば、技だ。それができずに動いても、そこは技術ではあっても技ではない。つまりはアートなんだよ。マーシャルなアート。一流の画家が描く画は、誰もが使える技法ではなく技が駆使されている。一流のミュージシャンの演奏も同じだろう。
僕らはマーシャル・アーチストだ。自分だけの動き、技を創造するものだ。ケージのなかで何を描くのか、何を奏でるのか。それこそが僕がクリエイトするアートだよ」
──凄く哲学的で、そして美しい考え方ですね。
「それだよ。全ては考え方次第なんだよね。間違った気持ちで、どれだけ練習を積み重ねてもマイナスにしかならない。やっぱりポジティブでいることが大切で。この間の変化で、どれだけ自分が満たされるようになったのかを説明することは難しい。いえることは、凄く幸せになれたということかな。
家族ともより、寄り添えるようになった。僕は生まれ変わって、自分に自信を持てるようになった。だから、試合に戻ってきたんだ」
──当初の予定では3月にディエゴ・ロピスと対戦予定でしたが、そのディエゴは同じ大会で王座決定戦を戦うことになりました。
「ディエゴと戦いたいという気持ちは、当然のようにあったよ。ただチャンピオンのイリャ・トプリアがライト級に階級を変えて、UFCがディエゴにタイトルショットの機会を与えたのだから致し方ない。彼と戦うことはできなかったけど、ディエゴが素晴らしいチャンスを手にできたように、僕もパトリシオ・ピットブルと戦う素晴らしい機会が用意された。
世界戦と同じ日に、僕はパトリシオを戦う。これが何を意味しているのか。凄く嬉しいことだよ。ここで勝てば、僕のタイトルショットが近づく。何より、パトリシオとは最高の戦いを皆に見てもらえるだろうしね」
Bellator、PFL、ONE Championshipでもワールドクラスのファイターが活躍している
──さきほどマーシャルなアートという言葉が聞かれましたが、画家やミュージシャンと違うのはヤイールにアートをさせないように邪魔をする対戦相手がMMAではいます。
「対戦相手がいることで、MMAが僕のアートにならないなんてことはない。僕にとって対戦相手がいることは、ごくごく自然のことだ。5歳の時からコンタクトスポーツをやってきたのだから。とくに相手と競い合っているという感覚じゃない。もう、それが普通のことだからね」
──今回、パトリシオ・ピットブル・フレイレというBellatorで二階級を制したファイターが相手です。UFC以外のチャンピオンと戦うことをどのように捉えていますか。
「世界中のファンが楽しみにしている。そんな試合だ。UFCからオファーがあったとき、コーチとそう話した。UFCがハッピーで、ファンの皆がハッピーなら、僕もハッピーだ。
僕が何者か証明するというタイミングで、この試合が決まった。正しい時、正しい瞬間で素晴らしい対戦相手を迎えることができた。他団体の二階級チャンピオンと戦えるなんて、最高だよ」
──UFCという場で戦っていて、BellatorやPFLのチャンピオンのことをどのように評価しているのですか。
「マイケル・チャンドラーを見てほしい。過去にパトリシオに負けているけど、UFCで素晴らしい活躍を見せている。マイケル・ヴェノム・ペイジはシャラ・マゴメドフに勝った。どこで戦っているかじゃない。そこを問題とするのは、違う。Bellator、PFL、ONE Championshipでもワールドクラスのファイターが活躍している。これらのワールドクラス・リーグでも、最高の選手が戦っている。
UFCで戦っていなくても、ファンが見たい強豪は存在している。その1人をUFCに迎えるいれることができて、大歓迎だよ」
美しい試合になる
──少し意外に感じました。てっきり「過去に対戦してきた相手が違う」というような言葉がヤイールから聞かれるかと思ってたので。
「それは間違った見方だよ。他の団体からUFCにやってきて、活躍している選手がいる。今、言ったようにね。彼らはUFCとは違う流れに乗ってキャリアを積んできただけなんだ。UFCに実力者が集まるのは、それだけイベント、プロモーションの規模が大きくて、世界中からファイターが集まりやすい環境があるからだ。
それだけの選手がいるからといって、最高の戦いがいつも実現しているわけじゃない。これは事実だよ。と同時に最高の戦いも行われ続けてきた。僕自身そういう相手と、そういうUFCで戦ってきたと思っている。でも、UFCで戦っていないから最高の選手ではないということにはならない。今回の試合も最高の相手と戦える一つの機会なんだ」
──では、その素晴らしい相手であるパトリシオの印象を教えてください。
「Bellatorで長期間にわたり、2つの階級で頂点にあった選手だ。最高のファイターに決まっている。タフで強い対戦相手になることは、間違いない。強い対戦相手をKOし、極めてきた。絶対に楽観視することはない。気持ちを引き締めて戦う。だからこそ、最高の準備をしてきた。メンタル、フィジカル、スピリット、考えうる最高のコンディションを保つ、その力を拳で伝えるためにね」
──パトリシオは爆発力はありますが、リーチの差は明白です。距離とタイミングがカギを握ってくるかと。
「外を取り、どれだけ自分の距離で戦うことができるのか。彼が求めるのは、近距離だろう。そこで殴り、テイクダウンをすさまじい瞬発力を生かして狙ってくる。そんな彼の戦いをさせないこと。それが勝負をカギになるだろうね。
そんなファイターと僕が戦うのだから、美しい試合になる。僕のやるべきことを、パトリシアの作戦のなかで有効に使う。それこそが僕の作戦だ。それだけだよ」
──ファンにどのような試合を見せたいですか。
「僕の試合を見せる。何をやってきたのか、それを試合で出すだけだ。対戦相手はパトリシオ・フレイレで、ファンの前で戦うけど。ファンに何を見せるのかではなく、僕が何をするのか。僕の試合ができれば、ファンには楽しんでもらえるに違いない。それが僕のやるべき戦いだから」
──ヤイール、色々と興味深い話をありがとうございました。最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
「日本のファンの皆には、いつも応援ありがとうと言いたい。2度ほど日本に行ったことがあるけど、食べ物も人々も景色も最高だった。すぐにでも日本に戻りたい。そして、日本で戦いたいと思っている。サンキュー・ソーマッチ」
■視聴方法(予定)
4月13日(日・日本時間)
午前7時~UFC FIGHT PASS
午前11時~PPV
午前6時 30分~U-NEXT
■UFC314対戦カード
<UFC世界フェザー級王座決定戦/5分5R>
アレックス・ヴォルカノフスキー(豪州)
ディエゴ・ロピス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
マイケル・チャンドラー(米国)
パディ・ピンブレット(英国)
<フェザー級/5分3R>
ブライス・ミッチェル(米国)
ジアン・シウバ(ブラジル)
<フェザー級/5分3R>
ヤイル・ロドリゲス(メキシコ)
パトリシオ・フレイレ(ブラジル)
<ライトヘビー級/5分3R>
ニキータ・クリロフ(ウクライナ)
ドミニク・レイエス(米国)
<フェザー級/5分3R>
ダン・イゲ(米国)
ショーン・ウッドソン(米国)
<女子ストロー級/5分3R>
ヴィルナ・ジャンジローバ(ブラジル)
ヤン・シャオナン(中国)
<ライト級/5分3R>
チェイス・フーパー(米国)
ジム・ミラー(米国)
<フェザー級/5分3R>
ダレン・エルキンス(米国)
ジュリアン・エロサ(米国)
<ミドル級/5分3R>
セドリクス・デュマ(米国)
ミハウ・オレキシェイジュク(ポーランド)
<フライ級/5分3R>
スムダーチー(中国)
ミッチ・ラポーゾ(米国)
<ミドル級/5分3R>
トレシャン・ゴア(米国)
マルコ・トゥーリオ(ブラジル)
<女子バンタム級/5分3R>
ノハ・コホノール(フランス)
ヘイリー・コーワン(米国)