【UFC318】カイラー・フィリップスと対戦、ヴィニシウス・オリヴェイラ「俺を強くしたのは、俺の人生だ」
【写真】そこにリトル・ゼがいたかのようなインタビューだった (C)MMAPLANET
19日(土・現地時間)、ルイジアナ州ニューオリンズのスージーキング・センターで開催されるUFC318「Holloway vs Poirier」でUAEWからコンテンダーシリーズを経て、UFCと契約しオクタゴンで3連勝中のヴィニシウス・オリヴェイラが出場する。
text by Manabu Takashima
そのUAEWで吉野光を倒したことで、オリヴェイラのことを知ったファンもいるだろう。とはいえ、あの粗いファイトでUFCでここまで活躍することは想像できなかったはず。
粗いが当たる。当てられることもあるが、殴って勝つ。その戦い方は、彼の生き方であり、これまでの人生が反映されている。カイラー・フィリップス戦を前にオリヴェイラに話を聞くと、そこにはシティ・オブ・ゴッドの世界観が広がってきた。
――カイラー・フィリップス戦を控えたヴィニシウスです。今の気持ちを教えてください。
「前回の試合より調子は良い。強くなっている。ボディも精神面も強くなった。今でも十分に戦える。100パーセントでき上っているよ」
――ヴィニシウスの試合はUAEWの吉野光選手との試合からチェックさせてもらっているのですが、あれからコンテンダーシリーズを経て、UFCでも3連勝と好調を維持していますね。
「ヒカルとは試合後に友達になった。俺はアイツのことが大好きなんだ。俺もヒカルもナルトが好きで、ナルトについてメールでやり取りすることもあった(笑)。またヒカルに会いたい。今度は戦うんじゃなくて、友人として再会したいと思っている。
でもヒカルは本当に強かった。あの試合のことを思い出すことも多い。あの後、連敗をして厳しい時を過ごしていることも知っている。ファイターとして、成長しないといけない部分も残っている。でも、アイツは本当に強い。俺がアイツの指導をすれば、絶対にもっとよくなる。だから、ヒカルにはブラジルに来て欲しい。俺の家に泊れば良いから。絶対に俺がアイツを強くする。
基本的に試合が終わって、仲が良くなることなんて俺にはないんだ。俺は対戦相手のことなんて好きにならない。でも、なぜかヒカルは俺の胸に突き刺さったんだよ」
――まさか吉野選手のことをそれだけ熱く話してくれるとは……。ところでUFC3連勝に関しては?
「UFCデビューから3連勝していることに、驚きはない。土曜日の夜には俺がどれだけ優れているのか、もう1度証明することになる」
――押忍。吉野選手がUAEWで試合をしたのは、強い相手を求めてのことでした。UFCファイターになるために。絶対という進路がないなかで中東を選んだ。ブラジルでは数多くのMMA大会が開かれていますが、ヴィニシウスはなぜUAEWと契約をしたのですか。
「俺がUAEWで戦ったのは、もちろんステップアップを果たすためだ。だいたいブラジルのMMA大会のファイトマネーは、本当に安い。皆、ブラジルで試合をしているのはブラジルから抜け出したいからだ。
俺もそうだった。ブラジルを出て、ドルでファイトマネーを手にしたかった。ドルはブラジルに持って帰ると、価値が変わるからね。そしてパンデミックでブラジルでは大会が開かれなくなった時、UAEWからオファーがあった。海外で俺の力を証明する機会が訪れ、本当に嬉しかった。
UAEWで戦ったから、俺の名前は世界に届いた。6試合、全ての対戦相手が違うスタイルのファイターで強かった。ヒカルもそうだ、あんな戦い方をする選手はいなかった。俺はUAEWでチャンピオンになったけど、そのベルトを奪われるほどタフなプロモーションだったよ」
――タイトルはアリ・タレブに譲りました。
「そうだ。アイツは俺に勝ってからPFLで2度負けているけど、俺にとっては最悪といって良い経験をさせてくれた」
――UAEWでの経験がヴィニシウスを強くしたといっても過言でないですか。
「俺を強くしたのは、俺の人生だ。数々の辛い出来事だよ。ガキの頃、食べ物もロクになかった。俺も家族もいつも飢えていた。でも、戦うことで勇気を得ることができた。ファイトは俺にとって日常生活だったんだ。ブラジルは危険な場所だらけで。バーにいけば、すぐにでも殴り合いが始まる。若者はちゃんとした仕事に就くこともできない。そんな貧しい生活が俺を強くし、ファイトが俺を漢にした。
それ以前の俺は、ギャングの端くれで漢じゃなかった。ブラジルでは簡単に金を得る手段がある。犯罪をすることだ。俺もそんなガキだった。でも俺はファイトと出会い、人生を変えることができた。ファイトが俺の人生を救ってくれたんだ。ファイトをすることで、俺は本当の漢になれたんだ。
そして今、俺は本当のファイトに身を置くようになった。世界中でファイトを続けている」
――ストリートファイトからMMAへ。その人生の救ってくれたきっかけはムエタイなのか柔術なのか、どの格闘技だったのですか。
「正直に言おう、俺は柔術が大嫌いだ」
――えっ!!
「俺は立って、スタンドで戦う。ボクシング、ムエタイ、レスリング、ノーギ・グラップリングで戦う。MMAってそういうものだろう? でもブラジルでは多くの人間が柔術好きで。柔術といえばブラジルっていうぐらいのイメージだろ?」
――グレイシーファミリーがいて、バーリトゥードがあった。そして今のMMAがある。そのMMA界にいて、柔術を否定するブラジル人選手がいるのは新鮮です。
「アハハハハハ。それが俺だ。正直に話している。なぜ、柔術が嫌いなのかは分からない。でも、嫌いなんだ。ただ、俺は茶帯を巻いている柔術家でもある(笑)。黒帯にも近づいている。それでも、柔術が好きじゃない。俺はアグレッシブに戦い、相手を傷つける戦いをする。
柔術のように対戦相手にハグをして、抑え込むなんてゴメンだ。俺は相手を殺すつもりで、ケージに入っている。それこそが、俺が選んだ人生だ。絶対にUFCでトップになる。
まぁ勝つためなら、コントロールもするけどな。でも、抑えてコントロールするより重い吉拳を打ち込んだ方が、楽に勝てる。そうやってデンジャラスなファイトで、相手をぶっ倒す試合をする。ダナ・ホワイトに見せて、タイトルショットに近づくんだ。
ただ柔術は人生に役立つものなんだろう?ガキの頃に戻れるなら、俺は柔術をやるだろう。まぁ、ここまで言ってなんだけど……本音を言えば、相手を絞めたり、極めたりすることも大好きなんだ(笑)」
――……。……。
「実際に10回に1回は極めて勝っている。やればできるんだ。ノーギもレスリングもしっかりと練習している。でも、そういう勝ち方じゃUFCでは認めてもらえない。そうだな、今週末の試合は柔術を見せようかな?」
――その機会があるのか、楽しみにフィリップスとの試合をチェックさせていただきます。ところで、そのフィリップスにはどのような印象を持っていますか。
「普通のファイターだ。足も手も長い。それは俺も同じだ。ただ、スタミナは俺のようにはない。すぐに息切れする、ただの人間だ。まぁ、オクタゴンは人間が戦う場所だけど……。アグレッシブなスタイルで、ランキングは12位。最初の1分、2分の圧が高い。でも、それで疲れる。俺のようなエネルギーは持っていない。柔術とグラップリングは強いかな。ただ経験も俺とは比較にならない。俺はより強くなっているから、アイツも前より強くなってオクタゴンに上がって欲しい。
それでもアイツとは気持ちが違う。そこが俺のアドバンテージだ。気持ちが強いから、体も強くなる。それも、ずっとタフな相手と戦い続けてきたからだ。ヒカルですら、テイクダウンはしても、俺の背中をマットにつけることはできなかった。
あのヒカルが出来なかったのに、カイラー・フィリップスがデキると思うか? フィリップスは、全く危険なところがない相手だよ」
――では土曜日はファンにどのような試合を見せたいですか。
「ドッグファイトを見せたい。でも、俺は過去最高に調子が良いんだ。過去最高に速い。今さら何かを証明するためにケージに上がるんじゃない。ビジネスをさっさと終わらせて、娘やワイフの元に帰りたい」
■視聴方法(予定)
7月20日(日・日本時間)
午前7時00分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時45分~U-NEXT
■UFC318対戦カード
<BMF選手権試合/5分5R>
[王者]マックス・ホロウェイ(米国)
[挑戦者]ダスティン・ポイエー(米国)
<ミドル級/5分3R>
パウロ・コスタ(ブラジル)
ロマン・コピロフ(ロシア)
<ウェルター級/5分3R>
ケヴィン・ホランド(米国)
ダニエル・ロドリゲス(米国)
<フェザー級/5分3R>
ダン・イゲ(米国)
パトリシオ・ピットブル・フレイレ(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
マイケル・ジョンソン(米国)
ダニエル・セルフーベル(メキシコ)
<バンタム級/5分3R>
カイラー・フィリップス(米国)
ヴィニシウス・オリヴェイラ(ブラジル)
<ミドル級/5分3R>
マーヴィン・ヴェットーリ(イタリア)
ブレンダン・アレン(米国)
<ウェルター級/5分3R>
フランシスコ・ペドロ(アルゼンチン)
ニコライ・ベレテンニコフ(カザフスタン)
<ミドル級/5分3R>
アテバ・グーティエ(カメルーン)
ロバート・ヴァレンティン(スイス)
<ウェルター級/5分3R>
アダム・ヒューギット(米国)
イスラム・ドゥラトフ(ドイツ)
<ライトヘビー級/5分3R>
ジミー・クルート(豪州)
マルチン・プラチニオ(ポーランド)
<ヘビー級/5分3R>
ライアン・スパン(米国)
ウーカシュ・プジェスキ(ポーランド)
<ミドル級/5分3R>
ブルーノ・フェヘイラ(ブラジル)
ジャクソン・マクヴェイ(米国)
<女子フライ級/5分3R>
カーリー・ジュディシー(米国)
ニコーリ・カリアーリ(ブラジル)