【RIZIN50】パク・ソヨン戦へ、万智「ストロー級に人が集まるようにする作戦です」
30日(日)に香川県高松市のあなぶきアリーナ香川で開催されるRIZIN50で、万智がパク・ソヨンと女子ストロー級で対戦する。
Text by Manabu Takashima
万智といえば、いつも明るく元気なイメージを持つファンも多いだろう。彼女のこれまでの言動を見れば、当然だ。なんせRIZIN50合同練習会でも公開書道と銘打ち、SARAMIとスパーしながら得意の習字を披露してしまうぐらいだ。
その実、試合前は不安にさいなまれ、体を動かすことで気持ちを前向きにしようと無理を重ねるという一面も持つ。真剣にMMAに取り組んできたが故に、自身のパフォーマンスに不安を覚えることも少なくなかった。短期間で力をつけ、結果を残してきたことでストロー級の選手として、なかなかクリアな展望が見えない状況も気に病む対象となっていた。
そんな万智が今回のインタビューでは、自身のキャリアの積み方に関して勢いでなく理路整然とした意見を口にした。この変化の裏に何があったのか。そして、この変化は万智のパフォーマンスとキャリアアップにどのような影響を与えるのだろうか。その好影響が高松で確認できるのか。確かな前進が見られる万智の言葉を伝えたい。
――2025年の初戦はRIZIN、高松でパク・ソヨンとの一戦となります。昨年はパク・シウ戦こそ惜敗しましたが、その後は国際戦で2連勝。11月は元王者アム・ザ・ロケットから、ついにヒールを取りました。
「極めちゃいましたよ。実は得意技なんだって(笑)。ちょうど1年前、松田亜莉紗選手に負けた日で。嫌な空気があったんですよね。でもプロデビューの日でもあって。良いこともあった日なので、松田さんとの負けをもう引きずらないようにしたいと思っていて。そういう面では吹っ切れたかと」
──1カ月後の大晦日を密かに狙っていたというのは?
「それはないです。大晦日はまだ。それに最近は負けが目立つ相手なので。ただ1Rに打撃をして、実戦で試すことができた試合でした。まぁ体も小さいし、それができる相手だったということで」
──あれ、一気にトーンダウンですか。
「今、悩んでいるんですよ」
──いきなりですね。
「いえ、今の話の流れですよ。対戦相手とキャラ……そこが中途半端で万智の悩みなんです」
──ひとまずキャラはおいて、対戦相手という点でいえばパク・ソヨンは修斗でKAREN選手、古賀愛蘭選手に敗れている選手です。
「もともと3月はもう皆の試合が決まっているだろうなっていうのはあったんです。そうなると韓国人選手かなって思っていたら、実際にそうなって。でも、最初に言われていた相手はケガをしてしまって。だから……中途半端というか、微妙で。みんな、特に万智を知っている女子選手は『楽勝じゃん』って思っているはずですよ。私もそう思っているし。もう、絶対に勝ちますよぉ!! でもRIZINだけ見ているファンの人の前でドカーンと勝つから、おいしい相手だなって」
──そういう風にポジティブに考えることができているなら、素晴らしいことかと。
「実はメンタル・トレーニングを受けていて、頭の中を整理できるようになったんです」
────おお!!
「SARAMIさんとか知っているんですけど、私って試合前はゴチャゴチャしやすいんですよ。自分でマネージメント業務みたいなこともしないといけなくて。試合中でも『どうしよう?』って考えちゃうことがあって。なんか、ぽあぁとしてしまって。それが松田戦で。試合中なのに自問自答するような状態で。
これからもっと強い相手と戦っていくなかで、そんな風になるのは絶対に良くない。そう思ってメントレを受けるようになったんです」
──いつ頃から、メントレを?
「9月のスーリ・マンフレディ戦の前からですね。中村剛士さんに指導をしてもらうようになって」
──中村倫也選手の弟の?
「ハイ!! もともと高校の時に、レスリングを習っていたことがあったんです。剛士さんのメントレのおかげで、考え方が変わったというか……。自分のやらないといけないことが、明確になりました。そうしたら練習の質も上がりました」
──どのような指導を受けて、そのような気持ちになっていけるのでしょうか。
「話し合い……。剛士さんが質問をしてくれることに返答をすると、自分が思っていることが分かってくるんです。剛士さんと話すことで、練習でも普段のことでも何をやっているのかクリアになって。その順序立てることができるようになってきて。
練習だと『万智は今、こうしていかないといけない。なら一番にやるのかコレで』、『こういう状況になれば、こういう気持ちでいれば良い』とか分かってくるんです」
──時折り、取材をしていてもおかしなテンションの時があり、元気という言葉に包みこむように表現していたこともあったのは事実です。
「試合前って、緊張していたんですよね。でもアムとの試合でも、何をすべきか『やることリスト』が頭のなかで整理されているから、集中して挑めました。だから練習に関しても『違うな』って思うことがあれば考えなおして、自分で練習を組み立てることができていて。結果、試合を想定した練習が充実するようになったと思います」
──本当に偶然ですが昨夜、今や名指導者の元UFCファイターとやりとりをしているなかで「米国のようなシステム化されたチームでヘッドコーチに引っ張ってもらっていける状況でなければ、選手は全てを自分で決める方が良いかと思います。MMAはやることが多いので、色々な意見が耳に入ってくると考えが乱れてしまう」という話が出ました。
「分かるわぁ……。万智たちはフリーだから、そうやって自分で考えないといけないというか、自分たちで組み立てることができるし。もちろん、剛士さんとのメントレがあるからなんですけど、今の自分の状況は良いとは思います」
──RIZINという大舞台です。万智選手への期待の大きさを考えると求められる結果は自ずと理解できるかと。
「ハイ。今回は圧倒して勝たないといけないです。相手が何もできない。何も出せないぐらい全部潰します。相手がやりたいことは何もさせない。向こうも万智のことを研究しているはずで。万智の仕掛けを読んで、対策をしてくる。でも、万智はその相手のやることの先をいって戦うので」
──やるべきことがクリアになった万智選手が、この先に見ているものは?
「この試合、52キロなんですよね。49キロじゃない」
──つまりはストロー級であって、スーパーアトム級ではないと。
「ハイ。私は階級を下げるつもりは全くないので。マジで」
──RIZINは明らかにスーパーアトム級が一番盛り上がる階級ですが。
「絶対に階級は変えないです。なぜなら…………」
──ためますね(笑)。
「落とせないから」
──そうなので、ありますか。
「落・と・せ・ま・せ・ん。若いうちは無理な減量は良くないですよ。好きなモノを食べたほうが良いと思います。カツどんを食べることができますか。ラーメンはどうですか」
──同世代と比べると圧倒的に食べることができると思います。ただし、ラーメンもあっさり系にはなっています。
「もうヤングじゃないですね」
──ヤング……。
「私はヤングだから、ラーメンも食べたいし。好きなモノを食べたいと思います。まぁ、ラーメンは食べないですけど」
──アハハハハ。このやりとり、必要ですか。
「とにかく、世界の基準でいえばストロー級なんです。だから、そこは曲げないですよ。スーパーアトムじゃない。チャンスがあるなら、海外で戦いたいという気持ちでいるので。まぁ、それはすぐじゃないと自分で思っています。フィジカルも技術も十分じゃないから。
でも国内だと相手がいない。国際戦を組んでもらわないと。だから強くなるための海外での試合もしたいです」
──最高峰でなく、最高峰で戦う力を備えるために?
「ハイ。チャンスがあるなら。若いうちに挑戦した方が良いと思います」
──そこでいえば、49キロの方が相手の選択肢も増えるかと。
「49キロは役者が揃っていて、選手も多いです。それに落とそうと思えば、落とせます。正直。でも落とさないから、落とせない。だって49キロに落としたからといって、その先に何かがあるわけじゃないじゃないですか」
──あれだけ憧れていたRIZINの女子で一番華やかな階級ですが。
「RIZINのなかで、日本で有名になっても世界の基準にない階級です。世界にはない階級だから。だから、私はしっかりと52キロの体を創って戦っていこうと思っています」
──それこそメントレの成果ではないですか。万智選手の口から、ここまでクリアに今後のことが聞かれるとは。
「イエーイ(笑)。世界でやっていくには、皆がストロー級の体を創っていかないと。だから万智が日本でストロー級の人気をあげて……人気っていう言葉は嫌ですけど、ストロー級を引っ張って人気を出して、この階級に人が集まるようにしていく。それが今の作戦です」
──簡単ではないことも分かって、口にしているのだと思います。悩みという言葉が聞かれていたのですが、それはやるべきことが分かっていて、現状とのギャップが悩みだったと。とにかく頭がクリアになったことで、視界良好のようですね。
「ハイ。まだ、できていないけど今年の目標は軸を創ることなんです。そのためにも今回の試合は圧倒するのは絶対です。どう圧倒するのかというと、相手がやりたいことを全部潰す。相手が出してくるものは、万智は全部想定しているので。それを一つずつ潰して、相手の心を折って。最後は泣きたくなるぐらい圧倒して、勝ちます」
■視聴方法(予定)
3月30日(日)
午前11時30分~ABEMA、U-NEXT、RIZIN100CLUB、スカパー!、RIZIN LIVE
■視聴方法(予定)
3月30日(日)
午前11時30分~ABEMA、U-NEXT、RIZIN100CLUB、スカパー!、RIZIN LIVE
■対戦カード
<RIZINバンタム級選手権試合/5分3R>
[王者] 井上直樹(日本)
[挑戦者] 元谷友貴(日本)
<フェザー級/5分3R>
鈴木千裕(日本)
カルシャガ・ダウトベック(カザフスタン)
<ライト級/5分3R>
ルイス・グスタボ(ブラジル)
野村駿太(日本)
<ライト級/5分3R>
スパイク・カーライル(米国)
泉武志(日本)
<59キロ契約/5分3R>
伊藤裕樹(日本)
トニー・ララミー(カナダ)
<59キロ契約/5分3R>
前田吉朗(日本)
横内三旺(日本)
<フェザー級/5分3R>
横山武司(日本)
木村柊也(日本)
<ストロー級/5分3R>
越智晴雄(日本)
中務修良(日本)
<ヘビー級/5分3R>
酒井リョウ(日本)
エドポロキング(日本)
<バンタム級/5分3R>
魚井フルスイング(日本)
赤田プレイボイ功輝(日本)
<フェザー級/5分3R>
萩原京平(日本)
トビー・ミセッチ(米国)
<女子ストロー級/5分3R>
万智(日本)
パク・ソヨン(韓国)
<キックボクシング67.5キロ契約/3分3R>
稲井良弥(日本)
加古稟虎(日本)
<キックボクシング55キロ契約/3分3R>
龍生(日本)
香川刻(日本)
<フライ級/5分2R>
高岡宏気(日本)
飴山聖也(日本)
<キックボクシング63.5キロ契約/3分3R>
吉岡龍輝(日本)
切詰大貴(日本)
<キックボクシング63.0キロ契約/3分3R>
大谷翔司(日本)
足利也真登(日本)