【Road FC72】ベルト&リベンジを賭けてキム・テインと再戦、関野大成「前回のKO負けが屈辱的でした」
16日(日・現地時間)に韓国はソウルのチャンチュン体育館で開催されるRoad FC72で、関野大成が同ヘビー級王者キム・テインに挑戦する。
Text by Shojiro Kameike
関野はDEEP、豪州ビートダウンを経て、2023年よりRoad FCヘビー級に戦いの場を移す。3連続KO勝ちを収めたあと、翌2024年4月にキム・テインと空位のヘビー級王座を争ったが、1R KOで敗れていた。その関野が水野竜也戦、シム・ゴンオ戦の連続KO勝ちから、再びキム・テインと相対することとなった。MMAPLANTでは初のインタビューとなる今回、日本で苦杯を舐め続け、韓国の地で花開いた関野のキャリアをたどる。
打撃の面でMMAの距離を掴み始めているんです
――MMAPLANET初インタビューとなります。よろしくお願いします。現在はどちらにいらっしゃるのでしょうか。
「今は東京に来ていて、友人の家に泊まらせてもらっています」
――活動の拠点は茨城ですよね。現在はどのような練習環境にあるのでしょうか。
「もともと自分は茨城の三河幕府というところに所属していたんですけど、DEEPに出始めて何戦かしてフリーになりました。今もたまに三河幕府に行きますが、茨城では三崎和雄さんのKASHIMA DOJO、東京だとAACCやアライアンスとか、いろんなところに行かせてもらっていますね。試合がないシーズンは日・月・火が茨城で、水曜日の夜にAACCで練習し、そこから日曜日に茨城へ帰るまで東京にいるといった感じです」
――昨年12月はRoad FCで上下の打ち分けを効果的に使い、シム・ゴンオにKO勝ちして王座挑戦をアピールしました。
「そう言ってもらえると嬉しいです。あの試合は相性が良かったですね。シム・ゴンオは動きが遅いじゃないですか。自分はスピードタイプで、遅い相手は得意なんですよ。あと今まではずっと力み癖が抜けなくて、『相手をいたぶって楽しもう』というぐらいの気持ちで戦ったほうが調子は良いです」
――キム・テインは初めて対戦した時、スピードが速く感じられましたか。
「思ったより速い、というぐらいでした。それよりも、とにかく力が強かったです。特に四つの組み力が強くて。自分も今回はレスリングとか――それこそ自衛隊体育学校へレスリングの練習に行かせてもらっています。まだ数回しか行けていないけど四つの展開、グレコスタイルを練習するために今後も通う予定です」
――Road FCに出る前……DEEPで戦っていた時は、打撃戦からテイクダウンを奪われて敗れる場面も多かったと思います。しかし昨年9月の水野戦は、明らかにこれまでの試合内容とは違いました。しっかりテイクダウンを切って、打撃で倒すという内容で。
「最近、まず打撃の面でMMAの距離を掴み始めているんですよ。剛毅會の大珠君というトレーナーさんにミットをもらっていて――平本蓮君や篠塚辰樹君も指導している人です。大珠君は俺より身長も低いし体重も軽いのに、めちゃくちゃミットを受けてくれて。大珠君のミットのおかげで、MMAの距離を掴めるようになってきました」
――それまでMMAの距離は掴みづらかったということですか。
「試合の時は喧嘩みたいなイメージになってしました。それがキム・テインとの初戦ではモロに出ちゃって――自分の距離じゃないのに、感情的になって1Rからガンガン行ってしまう。でもKO負けしたことで反省して、水野戦からは距離を修正できましたね」
――喧嘩、ですか。DEEP参戦時はそのようなイメージがなかったです。距離を保ち、関節蹴りから相手の出方を窺っていくスタイルでした。
「もともとは距離を取って戦うほうが得意なタイプでした。でもDEEPで戦っていた時に、周りの人から地下格闘技に出ていた頃の大成のほうが強かったよ』って言われたんですよ。技術を身につけた分、荒々しさがなくなった。その面がもっと試合で出せれば――確かに自分もDEEPに出るようになってから、縮こまっている部分はあったんですよね。『プロとして、しっかり技術を見せていかない』とか考えたり。
国内での負けを経て、ボクシングの距離でガンガン行くようにしました。Road FCもそうだし、豪州のビートダウンに出た時も。さらにキム・テイン戦のKO負けのあと試行錯誤しながら、今は良い感じの距離で戦うことができるようになっています」
16歳でバカだったから、暴れ回っていたら好き放題できるのかなと思っていました
――格闘技のベースは柔道ですか。
「はい、中学3年の夏まで柔道をやっていました。ウチは両親が柔道をやっていて、道場も運営していたんです。俺も中学ではある程度の実績を残していたから、高校の柔道部からも誘いが来ていて。親も『柔道を続けてほしい』と言っていたけど、自分は燃え尽きたというか……。当時は友達と夜遊びするほうが楽しくなっちゃっていましたね」
――柔道を辞めたあとは、道を外してしまったとか……。
「そうですね。中学時代からチンピラみたいな人と喧嘩したりとか、ソッチの世界の人たちと揉めたりしていました。そういう喧嘩を通じて、自分も東京へ行ってソッチの道に進んだほうが良いと思ったんですよ。
ただ、新宿の歌舞伎町に行ってからのほうが、いろいろと分かってきましたね。たまたま自分がお世話になったところだけがそうなのか知らないけど、すごく大人な方たちばかりでした。『まだ16歳だから、自分たちの仕事を手伝わせることはできない。本当にやりたいなら20歳になってからだ』とか言われて」
――……。
「そこから2年ぐらい歌舞伎町にいたんですけど、何か違うなと思って。何て言うんだろう……、自分も16歳でバカだったから、暴れ回っていたら好き放題できるのかなと思っていました。でも周りはちゃんとした人たちが多くて。やっぱり漫画や映画の世界とは違うし、現実問題として生活していかないといけない。そのために皆が真面目にやっていたんですよ。
そういう姿を見ていて、自分も本当に好きなことをやろうと思いました。まず自分の環境を変えてみようと思って、19歳の時にセキュリティの会社に入ったんですよ。そこは格闘技をやっている人が多かったから、自分も一緒に自分も一緒に格闘技の練習をするようになりました。セキュリティの夜勤が終わって、朝方から練習して……。当時から地下格闘技に出ていたので、地下格闘技でベルトを取ってからプロのMMAに出ています」
――柔道ベースでありながら、打撃が中心のスタイルになった理由は何だったのですか。
「15歳から地下格闘技に出ていて、打ち合いを求められていましたからね。寝技は5秒まで、というルールもありましたし」
――その後、DEEPを経て豪州ビートダウン、韓国Road FCと海外で戦うようになったのは、どのような経緯があったのでしょうか。
「DEEPであまり勝てていなかった頃、DEEPを通じて海外の試合を紹介してくれるようになったんですよ。たぶん佐伯(繁DEEP代表)さんからすれば、『才能はあるけど練習しないヤツ』みたいな感じだったんじゃないですか(苦笑)。だから海外の試合を経験すれば、自分が成長するんじゃないか――と思ってくれたのか。毎回『今のままじゃ勝てないよ。頑張ってこい』とか言われながら、海外で試合していました」
DEEPとRoad FCのベルトを巻いて、両団体を背負って戦いたい
――豪州や韓国での試合を通して、自分自身の意識は変わりましたか。
「海外で試合するのって、アスリートっぽくて良いかなと思いました(笑)。あとは周りの目も気にしなくて良いじゃないですか。相手は何を喋っているかも分からないし。むしろ自由に、好き放題できるんじゃないかなと」
――キム・テインとの初戦では、計量前日の会見で乱闘騒ぎがありました。最近はRoad FCでも会見で乱闘劇が行われることがあります。関野選手の場合、プロモーター側から乱闘求められたのですか。
「いや、違います。俺は『乱闘してくれ』と言われたら、逆にやらないですね。人の言うことを聞かないタイプだから(苦笑)。あれは裏でキム・テインがずっと『来いよ、来いよ』と煽ってきていたんですよ。『俺のことをナメてんな』と思って、挑発に乗ってしまいました。もう二度と暴れないです」
――なるほど。試合スタイルはパンチ中心で、会見でも暴れるし、正直なところ「そういう選手なのか……」と思っていました。それゆえに水野戦の冷静な試合運びは、ギャップが大きくて。
「ギャップですか(笑)。ここ数年は先輩や友達、スポンサーさんに自分の試合を生で観てもらう機会がなかったじゃないですか。その前は韓国でキム・テインに負けていたし、みんなに成長した姿を見てほしくて。
水野さんは実績もあって強い選手です。そういう相手に圧勝できないと『この先はない』と考えていました。あの頃から、『これが最後の試合になっても良いぐらい頑張ろう』という気持ちで試合に臨んでいます」
――再びRoad FCのベルトを目指すなかで、DEEPメガトン級のベルトを狙うという気持ちはなかったですか。
「Road FCのベルトを獲ってからはRIZINに出るのが良いのかなとは思っています。でも持っているベルトが一つだけだったら、ありきたりですよね。Road FCとDEEPのベルト、2つあればRIZINに出る時も注目度が違うでしょうし。DEEPとRoad FCのベルトを巻いて、両団体を背負って戦いたいです。いろんな人に反対されたりしているんですけど」
――反対とは?
「……『DEEPだけでいい、Road FCにこだわらなくていいじゃん』とか言われたりするんですよ。でも自分はRoad FCにこだわりたい。やっぱり前回のKO負けが屈辱的でした。実力的には負けたと思っていないです。自分が舞い上がって、勢いだけで戦っちゃって……。次やったら絶対に勝てる。前回は負けた直後に、ジョン代表にも言ったんですよ。『すぐリベンジマッチを組んでほしい』って。そこからRoad FC側も僕のために試合を組んでくれたので、まずはRoad FCのベルトを獲りたいです」
――そのタイトルマッチの前に、昨年大晦日のRIZINでキム・テインが上田幹雄選手に敗れていることについては、どう感じていますか。
「う~ん、そこはそんなに……。『思っていたより上田君は組みが上手くなっていたな』という感じですね。キム・テインも途中まで押していたけど、やっぱり自分と似ている部分があります。スタミナがないところとか、一発もらったら絶対に返してやるって気が強いところとか(笑)」
――昨年4月から約1年、再戦でキム・テインに勝てるという自信は高まっていますか。
「もちろんです。この間、韓国の記者会見では『90パーセント勝てる』と答えたけど、今は95パーセントぐらいに近づいていますね。自分はいつも日本を代表している気持ちで、韓国で戦っている。今回も『負けたら日本に戻れない』という気持ちでいます。必ず勝って日本の皆さんにベルトを見せますので、応援よろしくお願いします!」
■Road FC72視聴方法(予定)
3月16日(日)
午後14時~ カカオTV、SOOP(旧アフリカTV)
■メイン対戦カード
<Road FCヘビー級選手権試合/5分3R>
[王者] キム・テイン(韓国)
[挑戦者] 関野大成(日本)
<Road FCミドル級王座統一戦/5分3R>
[正規王者] ファン・インス(韓国)
[暫定王者] イム・ドンフアン(韓国)
<ライト級/5分3R>
パク・シウォン(韓国)
ナンディンエルデン・キム・インソォン(韓国)
<Road FCフライ級王座決定戦/5分3R>
イ・ジョンヒョン(韓国)
コ・ドンヨク(韓国)
<66キロ契約/5分3R>
キム・ヒョンウ(韓国)
黒井海成(日本)
<68キロ契約/5分3R>
パク・ヘジン(韓国)
原口央(日本)