【ONE FN28】リト・アディワン戦へ、山北渓人「そろそろ挑戦しても良いのではという話が出るように」
【写真】ONEで戦うことに邁進。葛藤もない。一番良い精神状態を保つことができるかと(C)TAKUMI NAKAMURA
8日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニースタジアムでONE Fight Night28「Prajanchai vs. Barboza on Prime Video」が開催され、山北渓人がリト・ アディワンと戦う。
Text Takumi Nakamura
昨年8月、山北は自らが「ストロー級日本最強を決める戦い」と位置付ける猿田洋祐との一戦にスプリット判定ながら勝利を収めた。この試合で山北は持ち味のレスリング力に加え、スタンドやグラウンドの際での打撃を有効に使い、MMAファイターとしての成長を見せる内容だったといえる。
アディワン戦の2週間後=ONE171ではジョシュア・パシオ×ジャレッド・ブルックスの王座統一戦が組まれており、山北にとってはアディワン戦の結果と内容をタイトル挑戦につなげるものにしたいはずだ。
打撃を学ぶことで広がるMMAファイターとしての可能性とONEストロー級王座にかける想いを山北に訊いた。
打撃ができる距離・位置は、テイクダウンに入りやすい距離・位置
――昨年8月のONE Fight Night24で山北選手は猿田洋祐選手との日本人対決にスプリット判定で勝利しました。あの試合を振り返ってもらえますか。
「猿田さんはONEの元チャンピオンで、自分の中では日本人で1番強い相手だと思っていたんで、タイトルはかかっていなかったですけど、タイトルマッチぐらいの意気込みでやりました。試合ではやられた部分もありましたが、勝ち切ることができて自信には繋がりましたね」
――山北選手にとっては大一番だったわけですね。
「意気込む感じというよりは『ここで勝ったらでかいぞ!』と自分に言い聞かせて、かなりいい状態で戦えたと思います」
――試合前にも「ストロー級日本最強を決める戦い」と言われていましたが、山北選手にとって猿田選手は越えなければいけない壁だったのでしょうか。
「まさにそんな感じです。僕が大学生ぐらいの時、ちょうど猿田さんがONEに出るか出ないかの時で、自分は身体が小さかったので、MMAをやるならストロー級だと思っていたんです。当時はMMAに詳しくなかったですが、猿田さんの試合を見て、この人が(ストロー級の)日本のトップなんだろうなと思っていました。実際に猿田さんはONEでもチャンピオンにもなっているし、猿田さんは北方(大地)選手に勝っていて、僕も北方選手に勝ってパンクラスのタイトルを獲ったので、猿田さんに勝つことは一つの目標でした」
――猿田選手と肌を合わせて通用したこと、通用しなかったこと、それぞれどのような部分で感じましたか。
「自分はレスリング出身で、少し打撃が苦手だったんですけど、自分の打撃を当てることができて、打撃では優勢に戦えたと思います。ただ組みの部分では、テイクダウンも取れてレスリングは対応できたんですけど、猿田さんは寝技の柔術的な動きやスイープの動きが上手かったし、トップキープも上手くて、なかなか逃げづらかったんです。そこはやられてしまったな、と。柔術的な動きでは負けましたが、際の打撃だったりスクランブルの中でヒジを当てることができたのが勝因になったと思います」
――打撃はずっとリバーサルジム新宿Me,Weで練習しているのですか。
「そうですね。基本的には山﨑(剛)さんと打撃コーチの大野(崇)さんに指導してもらっています。あとは(藤田)大和さんにも直接ミットを持ってもらってアドバイスをいただいたり、弟の(藤田)健児さん(現プロボクシングWBOアジアパシフィックフェザー級王者)にも週1でMe,Weでミットを持ってもらっているんですよ。健児さんは経験豊富で、あまり打ち合わずに打たれずに打つみたいな、長い距離で戦うスタイルで、それが今すごく自分にハマっているんですよね。試合でも大きい打撃をもらうことがなくなりました」
――今お話を訊いているとMe,Weにはキック出身の大野さん、プロボクサーの藤田健児選手が指導していて、打撃のトレーナー陣もものすごく充実していますね。
「イメージ的に組み技・寝技が強いチームと言われがちですが、打撃でもトップのコーチが揃っていると思います。所属選手でも空手の子がいたり、テコンドーの子がいたり、色んな打撃のバックボーンを持った選手がいるので、それぞれの技のことを聞いたり、実際にやってみたりして、いい部分は取り入れています。逆に自分に合わなそうな技でも、それを知っておくだけでも対応はできるので、そういう意味でも学ぶことは多いです」
――組み技ベースの選手が打撃の練習に力を入れて、ファイトスタイルが崩れてしまうパターンもありますが、そうならないように意識はしていますか。
「アマチュア時からそうなんですけど、打撃をしっかりやるつもりで試合をすると、スタンドでいい距離に入れるので、結果的にテイクダウンにも入りやすいんですよね。スタンドの距離や立ち位置が良くないと、打撃もらってしまうし、組みにもいけない。結局、打撃ができる距離・位置は、テイクダウンに入りやすい距離・位置だったりするし、アングルの取り合いも上手くなっていると思います」
――打撃の距離ではなくスタンドの距離という考えたなんですね。打撃が当たればタックルにも入れるという。
「まさにそこは健児さんに教えてもらっていることですし、あと過去にヘンリー・フーフトさんのセミナーにも参加させてもらったことがあって、そこでも距離とアングルをすごく徹底していたんですよね。そのために色んな動きを入れるんですけど、 僕はその2つがスタンドの基本だと思っています」
――打撃専門のトレーナーに距離やアングルなど細かい部分を指導されることで、曖昧だったところがより明確になっていますか。
「はい。変に組もう、組もうとはならなくなりましたし、打撃が見えているという自信も持てて、気持ち的にも落ち着けます」
――では打撃の練習を重ねてストライキングが上達したというよりも、MMA全体のレベルが上がっているのですね。
「あくまでも自分はグラップラーですし、猿田戦は猿田さんの方が組みや柔術的な部分で僕より上回っていたから打撃で勝負しようという試合になっただけで。 逆に相手の打撃が強いなと思っていたらテイクダウン狙いに切り替えていたと思います。それがやっぱり自分のMMAにおける勝ち方だと思いました」
――キャリア的にも自分のMMAのファイトスタイル的にも猿田戦の勝利は大きかったのですね。
「そうですね。経験的にもいろんな攻防が生まれたし、打撃に自信を持てた反面、猿田さんの組みの対応にはやられたところもありましたが、自分が練習でやってきたことが試合に出て、それを再確認できたと思います」
色んな選手と戦えたらいいなと思います
――さて今回のリト・ アディワン戦はどのくらいのタイミングでオファーがあったのですか。
「昨年末くらいに話をもらった感じですね。ちょうど大和さんも1月に試合が決まるか決まらないかのタイミングだったので、一緒に年末年始にいい練習できました」
――猿田戦が8月だったので、年内もう一試合やりたかったのか。それともそこは相手次第でしたか。
「そうですね。スケジュール的にはあと1試合できるかなと思っていたんですけど、試合の時期さえ決まっていれば安心できるので。相手のアディワンも実は何度かオファーがあって、いつかやるだろうと思っていた相手だし、やりたかった相手です」
――対戦相手としてリト・ アディワンの印象は?
「柔らかい感じがあって、ガンガン打撃を振り回す。組みもできないわけじゃなくて、柔術的な動きというよりも、 パワーが強くて極めができる選手という印象です。寝ても立っても危険な相手だと思います」
――アディワンは元チームラカイで、洗練されていない部分もありますが、逆に荒々しさが武器になっている選手だと思います。
「試合を見ていると荒々しさがいい方向に出ていると思います。例えば同じ元チームラカイでもジョシュア・パシオは洗練されているというか綺麗なスタイルですが、アディワンは破壊力がある感じですよね。ただそういうガンガン出てくる相手の方が僕はやりやすいので、相性はいいと思っています」
――アディワンの一発の打撃には気をつけつつ、丁寧に戦えば攻略できるという考えですか。
「そうですね。一発をもらわないというのはアマチュア時代から気をつけてやってきたことなので、今回もそこが大事だと思いますし、もちろん楽な相手ではないと思っています」
――まさに打撃という部分で言えば、これまでの積み重ねが試合で出れば戦いやすいですよね。
「やっぱり打撃は組むためのものなんですけど、そこはしっかり効かせた方がテイクダウンに入りやすいと思うので、スタンドではしっかりダメージも取りつつ、相手には打撃を当てさせない。そういう距離・アングルをしっかり作って戦いたいです。無理して強引にテイクダウンを狙うみたいな試合はしたくないですね」
――猿田戦も大きなポイントだったと思いますが、昨年1月の日本大会でボカン・マスンヤネに敗れてからは2連勝していて、マスンヤネ戦の敗北も糧になっていますか。
「そうですね。あの試合は調子が良すぎて、下からでも(一本を)取る自信があったんです。それでいざ試合になると、逆に下からに取ることにこだわってしまって、自分の1番強いところで勝負できていなかった。悔しいですけど自分の強いところを出さないと勝てないということを再認識できました」
――自分が勝つために何をすべきかを思い出しましたか。
「はい。もう一度そこに戻って来ることが出来たし、もしあそこで勝っていたとしても、どこかで同じような試合で負けていたと思います。だから早いうちにそれを経験できたことは良かったかもしれません」
――山北選手の試合の約2週間後にはジョシュア・パシオ×ジャレッド・ブルックスのストロー級王座統一戦が組まれています。そこは意識していますか。
「ONEはランキングに入っていれば上位じゃなくてもタイトル戦を組んでくれるので、今回の勝ち方は大事になってくると思います。ジャレッドはアディワンを極めて勝っているので、自分もフィニッシュして勝って、そこと並ぶ選手なんだというところを見せたいです」
――ストロー級もランキングこそ存在しますが、どの選手も実力伯仲だと思います。
「中央アジアやロシア系のレスリングが強い選手たちが参戦して、和田竜光選手も階級を落としてきて、ストロー級そのものが盛り上がってきて、注目されるようになったと思います。僕も色んな選手と戦えたらいいなと思います」
――前回和田選手のインタビューした際、和田選手は「ストロー級という階級においてONEが世界一」とコメントしていました。山北選手も同じ考えですか。
「もちろん、僕も同じ気持ちです。MMAを始めた時、ストロー級で国内タイトルを獲って海外に行こうと思ったら、階級を上げないといけないと思っていたんです。でもONEにはストロー級があって、ストロー級にどんどん選手が集まっている。ONEのベルトはそれだけ目指す価値があるものだと思いますし、今はONEでチャンピオンになることが大きな目標です」
――具体的には2025年内にはタイトル挑戦したいという気持ちもありますか。
「あまり焦らないようにはしつつも、そろそろ挑戦してもいいんじゃないかなという話が出るようにはしたいです。今回良い勝ち方をして、次は上位ランカーとの対戦を経験して、そこで挑戦待ちが理想かなと思います」
――3月にONE日本大会も開催されますが、この試合を楽しみにしているファンもたくさんいます。そういった方たちにメッセージをいただけますか。
「今回相手もすごくアグレッシブなファイターで、自分もどんどんフィニッシュを狙うファイトスタイルなので、絶対に面白い試合になると思います。ぜひ日本から応援よろしくお願いします」
■視聴方法(予定)
2月8日(土・日本時間)
午前9時45分~U-NEXT