【Giant Killing02】MAGISA主催、岡山県笠岡市の格闘技イベント「子供たちが格闘技に触れる機会を」
【写真】様々な世代が格闘技に触れる機会、特に子供たちが格闘技を始めるためのイベントを目指して(C)MAGISA
3日(日)、岡山県笠岡市の笠岡市民体育センターで、格闘技イベント『Giant Killing』が行われる。前Wardogフライ級王者MAGISAが、お隣の広島県福山市の格闘技団体KINGSと共同で開催する、アマチュア格闘技の大会だ。
Text by Shojiro Kameike
これまで日本全国で、地元密着のイベントは多数行われてきた。そんななかでGiant KillingはMAGISAの地元・笠岡市で開催される、大人から子供までMMA、キックボクシング、そして福山市に専門チームを持つ腕相撲大会まで実施される「町おこし格闘技イベント」だという。今年1月28日に第1回大会が行われたGiant Killingと、大都市圏以外での格闘技普及について、主催者のMAGISAに訊いた。
――MAGISA選手主催の大会「ジャイアント・キリング」について知ったキッカケは、昨年10月のワードッグでした。試合後に、地元の岡山県笠岡市で自主興行を開催する、と。自主興行については、いつ頃から考えていたのですか。
「ちょっと具体的な日付は定かではないですけど、3~4年ぐらい前ですね。僕も選手としては、そろそろ――と考えていました。『自分も後輩を育てていかんといけんなぁ』と思って、ジム(MMAジムblooM)を出したのが2年前で。その頃から、今後ジムに選手が増えてきたら、試合ができる環境をつくってあげたいとは考えていたんです」
――MAGISA選手がそう考える立場になったのも感慨深いです。2012年に本名の津村尚幸で岡山からプロデビューして……。
「そうなんですよ。アマチュア修斗に出ていた時期を入れたら、もう13年以上やっていて」
――MMAのスタートは、ゼロ戦クラブ水島支部ですよね。
「はい。ゼロ戦クラブのあとBURSTを経て、岡山で上似大夢とTEAM AGENTをやっていたんですよ。そこから僕はTEAM AGENTを離れてblooMを立ち上げました」
――最近は古巣であるTEAM AGENTと協力して「OKAYAMA TOP TEAM」という合同練習会を行っていると聞きました。
「一番大きなキッカケは――TEAM AGENTはキッズが強くて、その保護者さんたちの熱も高いんです。そんななかで、そんななかで保護者さんから『もっとレスリングや寝技を向上させたいけど、MAGISAさんに教わることはできないか』という声が挙がったらしくて。ファイトスタイル的には、どちらかというと僕はレスリングと寝技、大夢が打撃という感じですから。それなら出稽古とかではなく合同練習をやろうよ、という話になりました」
――OKAYAMA TOP TEAMのスタートもそうであるように、岡山県内の格闘技事情も大きく変わってきました。MAGISA選手としては、どのように変わってきたと思いますか。
「僕が試合に出始めた頃って、岡山~笠岡~福山でMMAの興行がなかったですよね」
――TORAO岡山大会が2010年4月、福山市では2013年6月に中村和裕さんの自主興行KING KAZ FIGHTが開催されて以降、大きなイベントはなかったかと思います。
「大会があっても広島市か高松市ですよね。一番近い場所でも。だから僕も笠岡で大会をやりたいとは考えました。でも選手と大会運営の両立は難しい……と思っていた頃にジムを出して、今はアマチュア含めて選手も増えてきたんですよ。その子たちが、どうやって試合に出るのかを考えた時に、自分で大会をやるのが一番早いかと思いました」
――その場合、大都市圏以外の地域では大きく2つのパターンに分かれると思います。アマチュア修斗か、地下格闘技か。
「そうなると思います。どちらにしても試合出場の機会を求めている選手は多いんですよ。僕としては自分のジムで、プロを目指すならアマチュア修斗やDEEPフューチャーキングトーナメントを勧めています。一方で『趣味として試合に出たいのであれば、どこで試合をしても良い』と、ジムの子に伝えているんですよね」
――確かにアマチュアMMAの大会は増えました。しかしどうしても選手向けの試合になります。趣味でMMAをやりたい人たちは、どこで試合をすれば良いのかという問題は常にあります。
「難しいですよね。だけど競技人口は増やしていきたい。そのためには自分で大会をやるのが良いと思ったんですよ。実際、1月28日に笠岡市で第1回大会を開催したあと、ジムの会員さんが大人から子供までメチャクチャ増えました。
こういうなかから、たとえば地下格闘技しか出る場所がなかった子も熱が入って、アマチュア修斗からプロへ――となるかもしれないし。すでに1月大会で試合をしてみて『本気でやりたい』という子が2人います。こういう中から修斗だけでなくDEEP、パンクラス、RIZINと目指す熱が入るキッカケになれば良いと思って」
――首都圏あるいは都市圏以外だと、MMAを始めるキッカケが地下格闘技以外だったというケースは多いです。ただ、どうしても安全性の問題はある。そんななかで安全に格闘技に触れ、選手であれ趣味であれMMAを続ける入口は必要だと思っています。その入口としてジム内試合を実施しているケースも多いわけで。
「分かります。だから僕はジャイアント・キリングを『格闘技イベント』と呼んでいます。地下格闘技ではない、かといって当然プロ興行でもないし、アマ修のようなアマチュア大会でもなくて。大人から子供まで、いろんなルールの格闘技に触れてもらいたい。そこで出ている人のレベルを見て『あれは地下格闘技だよね』と言われたら、それはそれで仕方ないです。レベルとして考えたら……。でも、じゃあ『地下格闘技って何?』ってなると思うんですよ」
――そうですね。地下格闘技かそうでないかの区別は、誰も明確に定義できていない。主催者がそう名乗らないかぎり、印象論に近いです。そこで大切になるのは、主催者側が何のために、何を目指して大会を開催しているかであって。
「Giant Killingを開催するうえで一番大きかったのは、笠岡市長さんへの表敬訪問なんです。ワードッグのチャンピオンになったあと、当時の笠岡市長さんのところへ表敬訪問に生かせていただいて。その時、ダメ元で話をしてみたら、『ぜひ笠岡で大会をやってください!』と言われたんですよ」
――その言葉は大きいですね。まさに町おこしといいますか。
「当時の市長さんは柔道をやっていて、格闘技が好きだったそうなんです。おかげで笠岡市の後援も付き、笠岡市の体育館を使わせてもらえるなど、とんとん拍子に決まっていきました。笠岡市の後援があるので、それこそ大会運営に関してグレーなことはできないです。ちゃんと運営者としてインボイスも登録し、税金の面もちゃんとしていますから。もちろん会場の使い方に関しても、ご迷惑をおかけすることがないように」
――なるほど。大会の観戦は有料ですが、子供たちは入場無料となっているのですか。
「この大会はこの大会はblooMと、KINGSという格闘技団体と共同で開催しています。KINGSさんとは『イベントを1回だけで終わらせたくないよね』という話をしていて――1回やっただけで終わったら、『金儲けしただけなんか』と言われちゃうじゃないですか。そうではなく定期的に、年2回は開催していきたいと考えていきます。何より子供は観戦無料で、子供たちが格闘技に触れる機会を増やしていきたいんですよ。格闘技の未来のために」