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【Wardog44】8年半ぶりのワードッグで感じたこと――日本版フィーダーショー、人材育成の在り方

【写真】柿原勇気代表から防衛したベルトを受け取ったMAGISAが、返上を表明して柿原代表に戻した。そんな卒業式を受け入れるのが、ワードッグの在り方でもある (C)SHOJIRO KAMEIKE

22日(日)、大阪市港区の弁天町世界館でWARDOG CAGE FIGHT44が開催された。メインイベントではフライ級選手権試合が行われ、MAGISAがしゅんすけを判定で下し、王座の初防衛に成功している。
Text by Shojiro Kameike

MMAPLANETが初めてワードッグについて報じたのは2015年3月に開催された第2回大会だった。あれから8年半の時が経ち、大会数も44に達した関西インディ=ワードッグの現在と、その人材育成についてお伝えしたい。


メインイベントでフライ級王座を防衛したMAGISAが、柿原勇気ワードッグ代表に驚きの発言を行った。「このベルト、返上しても良いですか? 僕の現役生活もあと2~3年だと思うので、他の団体でも勝負してみたい。それと今日対戦した、しゅんすけ選手のような若い選手たちにもチャンスを与えたい」――このMAGISAの言葉を受けて、柿原代表はその場でベルト返上を了承。MAGISAからベルトを受け取り、来年にフライ級トーナメントを開催する旨を語った。

MAGISAはレスリングで日体大まで進んだあと、地元である岡山県でMMAを始めている。プロデビューは2012年、MMAキャリアも10年を超えるベテラン選手だ。現在はWARDOGを主戦場とし、昨年10月に岡山市内で『MMAジムblooM』を立ち上げた。さらに練習のため、パラエストラ広島や山口県岩国市のレオス柔術アカデミーまで赴くこともある。今大会では、パラエストラ広島の冨樫健一郎代表がセコンドに就いていた。

今大会の王座防衛戦ではフルラウンドにわたり、しゅんすけからテイクダウンを奪い続け、トップキープで判定をモノにした。しゅんすけは1RこそMAGISAのシングルレッグをスプロールしたものの、後半になると背中を着かされる場面が増えてくる。それも一度は組んできたMAGISAを抱えながら、しぶとく粘られると根負けしているような印象を受けた。試合後、MAGISAは勝因として「経験の差」を挙げている。

しゅんすけはプロMMA戦績こそ5勝3敗だが、その前にワードッグのNGF=New Generation Fightで経験を積んでいた。MAGISAの言うように、テイクダウンやスクランブルの競り合いの中で経験不足を露呈した印象だ。しかしフライ級の中では恵まれた体躯に加えて鋭いストレートと蹴り、4Rにアナコンダチョークを極めかけたグラウンド技術には将来性も感じさせる。そんな打撃とグラウンド技術を繋ぐテイクダウンやスクランブルの攻防を育てるためにも、ケージ&ユニファイドルールは必要だ。

このルールで女子の試合が組まれるのは、近畿圏では珍しいといえる

5分1Rでユニファイドの経験を積むための戦いは、ワードッグ主催者が「セミプロ枠」と呼んでいるように、いわゆるプロMMAではない。今大会で見られたような、積極的にフィニッシュを求める試合内容も、5分1Rという短い時間だからこそ可能な面はある。

とはいえ、プロデビュー前からユニファイドを目指したルールで戦える経験は大きい。まだまだ選手層が厚いとはいえない各地域のジム、あるいはMMAイベントの中で経験できないルールと攻防がNGFにはある。NGFの効果がまだまだ先のことかもしれない。しかし、その芽は大阪の小さな劇場で生まれつつある。

現在、blooMには修斗などプロMMAはもちろん、ワードッグのNGF出場者まで20名近い選手がいるという。すでに大阪をはじめとした近畿エリアだけでなく、中国地方でもNGF枠による選手育成の輪が広がっている。そしてMAGISA自身も来年1月28日に岡山県笠岡市で自主興行を開催し、その中でNGFと同様に5分1Rの試合を組む予定とのことだ。

柿原氏はインタビューの中で、同じインディMMA団体的な位置づけとしてNEXUSを挙げた。発表こそできないものの、日本に存在するインディMMA団体、フィーダーショー的イベントと交流し、MMAの底辺拡大の輪を日本全国に拡大していくプランもあるという。

ここでいう「インディ」とは、「独立した」という本来の意味だ。ワードッグはどこの団体に属しているわけでもない。選手が希望すれば、どこにでも送り出す。柿原代表もインタビューで「ウチは、どインディやから」と笑い飛ばす。つまり、全団体へのフィーダーショー=人材育成の場となり得るのがワードッグだ。

ワードッグのNGF枠に選手を送り出しているMAGISAの自主興行も、来年の興行はリングを使用するとのことだが、いずれ同じインディMMA団体、フィーダーショーの輪に加わってくるのだろうか。今後のNGF、そして小径ケージ&ユニファイドから広がっていく選手育成の輪に注目していきたい。

■Wardog44 試合結果

<WARDOGフライ級タイトルマッチ/5分5R>
MAGISA(日本)
Def.3-0
しゅんすけ(日本)

<ライト級/5分2R>
後藤丈季(日本)
Def.2-0
そのまんまたなか(日本)

<ライト級/5分2R>
キンコンカンコンケンチャンマン(日本)
Def.1R2分03秒 by キムラ
ユン・チュル(韓国)

<フェザー級/5分2R>
DAIGO(日本)
Draw.1-0
秋田良隆(日本)

<ウェルター級/5分2R>
SAIDER(日本)
Def.3-0
前田慶次(日本)

<バンタム級/5分2R>
カーレッジユウキ(日本)
Def.1R0分23秒 by キムラ
セイヤ(日本)

<フライ級/5分2R>
岩本尚(日本)
Draw.1-0
よしひと(日本)

<グラップリングマッチ ウェルター級/5分1R>
坂本オーズ昌良(日本)
Def.3-0
ジャンジュオン(韓国)

<グラップリングマッチ ライト級/5分1R>
白樫忍者(日本)
Def.3-0
ユ・エンホ(韓国)

<NGFライト級/5分1R>
だいち(日本)
Def.3-0
REN(日本)

<NGFフェザー級/5分1R>
RYUSHI(日本)
Def.3-0
淳平(日本)

<NGFバンタム級/5分1R>
アダチコウキ(日本)
Def.3-0
それゆけケイタっち(日本)

<NGFバンタム級/5分1R>
涼河(日本)
Def.2-1
将太(日本)

<NGFフライ級/5分1R>
塩谷尚也(日本)
Def.1R4分16秒 by 三角絞め
PANTHERBOYショウ(日本)

<NGFフライ級/5分1R>
真鍋陸(日本)
Def.2-1
太一(日本)

<NGF女子ストロー級/5分1R>
プリンセスサアヤ(日本)
Def.1R3分23秒 by RNC
チャッキールビ(日本)

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