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【RIZIN48】新バンタム級チャンプ井上直樹「ノンタイトル戦でも海外の強い選手とやることには意味がある」

【写真】やはり強い外国人選手と、日本のトップの対決がRIZINの売りになってほしい (C)RIZIN FF

9月29日(日)に、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催されたRIZIN48で、井上直樹がキム・スーチョルにTKO勝利し、第7代RIZINバンタム級王座に就いた。
text by Takumi Nakamura

朝倉海の王座返上による空位となったRIZINバンタム級王座をかけてスーチョルと対戦した井上。VS日本人無敗のスーチョルに対し、井上はリーチを活かしたジャブでペースを掴み、鋭いワンツーでダウンを奪うと、最後はスタンドの状態でパンチを入れ続け、レフェリーストップを呼び込んだ。

井上がセコンド陣と共に練り上げたスーチョル攻略法、試合に向けたコンディション作りも含めて、井上にスーチョル戦を振り返ってもらった。


――井上選手にとってRIZINのベルトがキャリア初のベルトとなりました。周りのみなさんの反応・反響はいかがですか。

「ベルトが手元にあって、しっかり自分がチャンピオンだということが分かって、みんなすごく喜んでいましたね。みんな僕を信じてチャンピオンになってくれると思っていたと言ってくれて、自分も嬉しい気持ちです」

――チャンピオンという肩書を手に入れたことを井上選手自身はどう感じていますか。

「ベルトを巻いた瞬間は嬉しかったし、応援してくれている人たちに挨拶に行って、ベルトを見せて喜んでもらっている時もうれしいです。ただ僕が目指しているところはここじゃないというか、まだまだ強い選手はたくさんいると思うんで、むしろここからもっと頑張っていかないといけないなという気持ちですね」

――試合も振り返っていただきたいのですが、改めてスーチョル戦は井上選手にとってどんな試合でしたか。

「あの日は自分の日だったかなと思いますね。試合当日の調子が良くて、いつもより動ける感じがあったんです」

――それは気持ち的に乗っていたということなのか、それともトレーニングや調整面で変えたことがあったのですか。

「なんか……………調子が良かったんですよ(笑)。強いて言うなら、いつもより疲れが抜けていたのかなと思います」

――それは体のケアに時間をかけるようになったのですか。

「体のケアを増やしたのもそうなんですけど、結構休みを多く取ったりとか、試合前でも動きたいところは動くけど、しっかり休むというのは意識していました。そのおかけで試合までに、ちゃんと疲れが抜けて体が軽かったです。リングに上がったときになんか今日は体が軽いなと思って、2回ぐらい飛び跳ねてみたんですけど、その感じも『今日は調子が良いな!』と思えました」

――井上選手は試合前まで追い込んでいないと不安になるタイプなのですか。

「今までは1週間前ぐらいまでしっかり動いて、そこから調整という感じだったんですけど、今回は2週間前ぐらいからじっくり調整していて、すごく動きが良かったです」

――周りからそういうアドバイスをされたのですか。

「自分はできるだけいつものルーティーンを崩したくないので、周りから休んだ方がいいと言われても、じゃあ休もうとは思えなかったんです。でも今回はセコンドからも(休んだ方がいいと)言われて、しっかり休みを取ったことで、試合までに疲れが抜けたというのもあると思います」

――しっかりとした理由があってよかったです(笑)。それでは試合展開についても聞かせてください。セコンドの水垣偉弥さんは試合序盤は距離が近いと思ったそうですが、井上選手はどう感じていましたか。

「試合に入った時はそこまで近くはなかったんですけど、こっちの攻撃が当たり始めてから、だんだん近くになっているなという感覚がありました。でもそこはセコンドの指示もあり、ジャブを当ててというところから、ちょっとずつ距離を修正していきました。もしセコンドの声がなかったら、どんどんどんどんガツガツ前に出ていたかもしれないです」

――試合の流れを決めたのは井上選手の左ジャブでした。スーチョル戦が決まった時点で、ジャブでいこうと決めていたのですか。

「スーチョルに対しては、最初の第一歩の攻撃としてジャブが有効だと思っていました。この試合に向けて水垣さんや安田(けん)さんたちと一緒に(ジャブを)作り上げて、試合でもジャブで自分の距離に持っていけたというのはありますね。だから試合運びはすごく順調でした」

――左のジャブは結構細かく打ち分けていたそうですね。

「目を狙ったり、アゴを狙ったり、あとは長いジャブ、それをフェイントにした左のショートフック…色々とパターンを分けてやっていました」

――ロープ際での右ストレートでダウンを取りましたが、その前の左フックが効いていましたよね。

「そうですね。あの左フックが入ってスーチョルが下がって、そこにワンツーを当ててダウンを奪った感じです。実はその前にもショートフックが入っていて、その時にスーチョルの動きが止まったのが分かったんです。それでショートフックは有効だなと思って、ジャブとフックの打ち分けを思いつきました」

――これも水垣さんが言っていたのですが、水垣さんを仮想スーチョルにして左フックを練習していた、と。

「水垣さんがスーチョルっぽくなってくれましたね。めちゃめちゃパンチを振って前に出て。練習では試合で当てたショートフックのようなシチュエーションもやっていたので、そこは水垣さんのおかげですね。ありがとうございます(笑)」

――フィニッシュに行くまでの流れは練習していたり、想定していた動きがそのまま出た感じですか。

「練習でやったことがそのまま試合に出て、それがハマったので練習でやった通りだなと。他にも色々とパターンはあったのですが、最初にそれ(ジャブから組み立てる)がハマったという感じです。スーチョルは本当に強い選手であるんですけど、そういう意味では楽に戦えました」

――ダウンを奪った右ストレートは手応えがありましたか。

「手応えはそんなになかったんですけど(腰が)落ちたなと思って。ここは攻める時かなと思って一気に攻めました」

――そこからパウンドアウトする流れですが、ポジション的にはバックを取ってRNCにいくよりも殴った方がフィニッシュに繋がるという判断だったのですか。

「あの時はロープ際でバックについてRNCを狙って、ロープに身体が引っかかったりするのがイヤだなと思いました。あとはまだスーチョルの目も割と生きていたし、ディフェンスもしていたので、今は脳を揺らす時だと思って、パウンドに切り替えました」

――こうしてお話を聞いていると、試合を通して冷静に戦えていたようですね。

「はい。焦らずに冷静にできたと思います」

――もちろんスーチョル選手に勝つつもりで戦ったと思いますが、ゲームプランを遂行して勝ちきったことは自信になりましたか。

「やっぱりスーチョル選手のように実績もある強い選手とやって勝つことに意味があるので、そこはもちろん自信になりましたし、これからどんどん強い選手と戦っていくと思うので、またモチベーションが上がってきています」

――さて試合後は大晦日に試合をしたいというマイクアピールがありました。今後はチャンピオンとして、どんな相手と戦っていきたいですか。

「強い選手とやっていきたいというのももちろんですし、今すごく調子がいいので、このタイミングで試合をしたいというのもあります。今の自分がどこまでできるのかも含めて、試合間隔はそんなに空けたくないですね。できることなら年末年始はゆっくりしたいですが(笑)、大晦日はたくさんの人が見てくれる大会なので、そこに出て自分が勝っている姿をみんなに見せたいです」

――同じ大会で太田忍選手に勝利した元谷友貴選手がタイトル挑戦をアピールしていますが、そこは意識していますか。

「元谷選手とやったのは結構前で、元谷選手ももちろん強くなっていると思いますし、前回とは違う展開になると思います。今バンタム級で勝っていて、トップにいるのは元谷選手だと思うので、やる可能性もあると思います。あとは海外の選手と戦えるなら、海外の選手ともやりたいです」

――✖外国人選手で言うと、井上選手はRIZINでスーチョル、トレント・ガーダム、フアン・アルチュレタの3選手としか対戦していないんですよね。それが少し意外でした。

「そうなんですよ。2020年2月にトレント・ガーダムとやってからはコロナの影響で日本人選手と試合が続いて、コロナが落ち着いてからはアルチュレタ選手とも出来たし、今回はスーチョル選手と出来て、これからどんどん強い外国人選手も出てくると思うんで、そういう相手としっかりやっていきたいと思います」

――日本人のトップ選手とはある程度対戦したと思うので、ここからは外国人選手と戦う機会も増えそうですね。

「仮に防衛戦じゃなくてノンタイトル戦でも海外の強い選手とやることには意味があると思うんで、やっていきたいです」

――井上選手がUFCに出ていた時期は20~21歳、戦績も9~10戦目で、キャリア的にはかなり初期だったと思います。今またRIZINでキャリアを作り直してベルトも巻き。ここから世界でも評価された選手や強いと言われている選手たちに挑戦していきたいという思いはありますか。

「はい。今でもその想いはありますし、自分が負けた相手のこともチェックしています。やっぱり挑戦を続けないとファイターじゃないと思うので、これからも挑戦していきたいです」

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