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【Road to UFC2024 Ep06】準決敗退、原口伸の胸中は。「色んなことが吹っ切れました」&「RIZINで」

【写真】次の舞台はRIZINかEternal MMAか……それとも (C)TAKUMI NAKAMURA

8月23日(金・現地時間)にネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されたRoad to UFC2024 Ep06 & Ep06=Road to UFC Season03 Semi Finalsにて、フェザー級準決勝で原口伸がチュウ・カンチエにスプリット判定で敗れた。
text by Takumi Nakamura

試合の大半でテイクダウンを仕掛け、グラウンドでコントロールしていた原口だったが、ジャッジが評価したのは細かい打撃を当てたカンチエの方だった。最近のMMAは打撃偏重と言われ、原口自身もそれを頭に入れて準備をしてきたうえでの敗戦。

納得いく判定ではなく、Road to UFC(以下、RTU)敗退という結果を受け入れるまでに時間がかかる試合だった。あの敗戦から約5日後、米国から帰国した当日から練習を再開していたという原口に話を訊いた。


――RTU準決勝のチュウ・カンチエ戦がスプリット判定負けという結果に終わりました。原口選手がテイクダウンを仕掛けてコントロールしている時間も長い試合展開でしたが、それがジャッジには評価されなかったという形です。率直に今はどんな心境ですか。

「やっぱり『納得いかねえな』という本音はあります………あるんですけど、自分のファイトスタイルなど色々と見直すきっかけにはなったかなと思います」

――試合中はどんなことを考えながら試合をしていたのですか。

「1Rは思ったようにテイクダウンできなくて、上からヒジをコツコツ当てられてしまって。目立った攻撃をされてはいないけど、自分もいい見せ場は作れていなかったので、相手にポイントがついたと思いました。それで2Rは半分以上は自分のターンだったし、相手も打撃を繰り出してきたんですけど、ほとんどブロックしていたんですよ。

1発だけストレート?を軽く当てられたんですけど、それは全く効いていなくて。客観的に見て自分の方が印象がいいラウンドだったと思いました。で、3Rは完全に自分が取ったと思います。セコンドとも2Rが終わったあとのインターバルで話を聞いて、セコンドからも『2Rは取っている』と言われて、自分と同じ認識だったと思います」

――では原口選手としては2・3Rを確実に取ったという判断だったんですね。

「そうですね。3Rも10-8でもおかしくないような展開だと思うんで……はい(苦笑)」

――ただし結果はスプリット判定となり、カンチエに軍配が上がりました。

「スプリット・ディシジョンと聞いた瞬間、めっちゃ嫌な予感がしたんですよ。そうしたら案の定、相手の手が上がっていて……。ただ相手陣営は相手陣営で判定を待っているときはみんなお通夜みたいな顔してたんです。それを見て僕は勝ったと思ったし、選手と陣営はお互いそういう予想をしていたのかなと思います」

――この結果をどう受け止めていますか。

「自分の中では2つの感覚があって、1つは今回の試合に関しては勝負に勝って、試合に負けたんだなと。でも負けは負けなんで、自分が決着をつけられなかったという反省点もありますし、1本取るかパウンドアウトしていればよかっただけの話です。だから仕方ないなという部分もあります。

もう1つはシンプルに、あの試合内容で勝ちにならないんだったら色んなことが吹っ切れました。今回もそうなんですけどRTUに2年連続で出場して、どうしても戦い方が勝ちにこだわるスタイルになっていたんです。そこを追及して、ああいう判定になるんだったら、もうレスリングやコントロールに固執する必要はないなと。自分がやりたいようにやって、打撃でもガンガン行くし、失敗してもいいから寝技でもガンガン極めに行こうと思いました」

――戦い方を微調整するのではなく、考え方そのものを変える必要があると。

「今回の試合前に分かっていたことではあるんですけど、 実際に自分がこういう事態に直面して。今は心のそこから自分のやりたい格闘技をやればいいんだと思えていて、今が一番人生で格闘技を楽しめているかもしれません」

――勝つための格闘技じゃなくて好きな格闘技をやるということですか。

「そうですね。良くも悪くも考えがアスリート的になっていたというか、勝つために手堅く行きすぎたという部分は確実にあって、勝たなきゃ意味がない・結果を出さないといけないという考えに縛られすぎていたと思うんです。でもあの負けを経験してその呪縛から解放されて、なんかこう…次はバチバチに行ったろうかな!という気分になれています」

――フィニッシュすれば試合は終わるし、そこまで行きつかなくても、そのための動きが評価されるのであれば、その通りに戦いますよということですね。

「はい。今回の試合でも、いくら僕と周りの人たちが『伸が勝っていたよ』と言ってくれても、負けは負けじゃないですか。だったら今の判定基準に合わせるしかないし、そういう時代(判定では打撃やダメージが評価されやすい)になったんだと思います」

――そこも踏まえてどんなことを意識して練習していこうと思っていますか。

「僕の場合はとりあえずレスリングは一旦置いておいて、打撃とグラップリングだけに重点を置いてもいいのかなと思います。僕の強みはレスリング・コントロール力だと思うのですが、そこに頼らない、そこに逃げない練習をしたいです」

――ある意味、練習でやるべきことが明確になりましたか。

「すごく今は清々しいんですよね。本当に判定には納得していないし、あの結果を落とし込むのにも時間はかかりました。でもそれを一旦置いておいて、もっとシンプルに格闘技の技術という面においては『俺、めちゃくちゃ伸びしろあるやん!』という風に捉えています。だから今は自分で自分が楽しみです」

――すぐ試合が終わってすぐ練習も再開したのですか。

「練習しないと居ても立っても居られないというのではなくて、自分自身に伸びしろをすごく感じたので、どこかに遊びにいくような感覚で練習をしたいと思って。帰国したその日にボクシングトレーナーに連絡して、ジムでミット打ちをやっていました(笑)」

――帰国したその日ですか。

「はい。試合の次の日の朝6時半くらいには日本に到着したんですけど、昼にはトレーナーさんに連絡していましたね。『今日って練習できますか?』って。そのくらい練習したくてしょうがなかったです」

――さてRTUでの戦いが一段落して、これからはどこを目標にして試合をしていこうと考えていますか。

「よく勘違いされがちなんですけど、僕は海外で試合することにこだわりがあるわけではないです。UFCを目指すという目標は変わらないですし、そこにたどり着くまでの過程として試合をしていきたい。もしRIZINでチャンスが来るんだったらやってみたいし、引き続き海外でもチャンスがあるならやってみたい。
そこは割と柔軟に考えていて、舞台問わず、強い選手と戦って成長できればという感覚でいます。海外志向になりすぎると考えの幅を狭めることになると思うので、チャンスを与えられたところで結果を出す。どの団体で試合をやるにせよ、勝ち続ければ上に行けるわけですし、道は切り開けると信じています」

――実は原口選手は日本国内ではGrachanとVTJにしか出ていないんですよね。

「そうなんですよ。出ていない大会の方が多いので、色んなチャンスがあるのかなと思います」

――では試合のチャンスを待って、次の試合に向けて準備していくという形になりそうですね。

「はい。本当にまだ先のことは何も分からないので、さっき言った通り、強ければ道は開けると思っています」

――国内の団体ではRIZINがビッグプロモーションとして存在していますが、RIZINのことは意識していますか。

「試合が終わった後にX(Twitter)でもRIZINで見たいですというリプやメッセージをたくさんいただいて、もしオファーをいただけるなら全然出たいと思います。海外で言ったら、同門の伊藤空也選手が豪州のEternalMMAでベルトを獲ったんですけど、EternalMMAからUFCに行った選手もたくさんいるので、そういう大会に向けても準備していきたいです」

――それでは最後に次戦に向けての意気込みをいただけますか。

「出来れば年内もう1試合やりたいと思っていますが、いい意味でこだわりを持ちすぎず、自分が強くなることを考えて試合のチャンスを待ちたいと思います」

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