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【Fight&Life & Bloom FC01】未知のモンゴル人ファイターを襲撃、上田将年「ドロドロの暑苦しい試合を」

【写真】インタビューは残暑厳しい9月に行われたもの。2カ月を経て、いよいよ上田がBloom FCのケージに足を踏み入れる(C)MMAPLANET

現在発売中のFight&Life#99で11月19日(日)に福岡市中央区の西鉄ホールで旗揚げ戦が開催されるBloom FCのメインでツェルマー・オトゴンバヤルと対戦する上田将年のインタビューが掲載されている。

長くパンクラスで活躍し、フライ級タイトル戦線にも幾度となく絡んできた筑豊在住の上田が、福岡をベースとした独立プロモーションの旗揚げイベントで国際戦を戦う意味とは──。

ここでは当インタビューを全文掲載したい。


──11月19日、「九州から世界へ」を合言葉としたBLOOM FCが旗揚げ。上田選手はメインでモンゴルのツェルマー・オトゴンバヤルと対戦します。パンクラス30周年記念大会が9月、そして12月に開かれるわけですが、BLOOM FC出場を選択したのは?

「実は9月大会もオファーをもらっていました。連勝中でバリバリの選手が相手だったのですが、自分は今2連敗中で、次はどうしても勝ちたいという気持ちも強く、初めて返事を保留させてもらったんです。3連敗は経験したことがないですし。そして周囲に相談した時に『ファン目線で言えば見たい。でも今、このタイミングでやるべきじゃない』という助言を貰いました。『ここでこけると、上田君は立ち直ることはできなくなる』と。

──ハイ。

「結果、初めてオファーを固辞させてもらいました。ただ2週間ほど過ぎて、他のカードが発表されているなかで、オファーを断ったことを心の底から後悔するようになったんです。『俺、やっちまった』みたいな感じで。自分のなかで、『俺って逃げたんかな?』と思うようになりました。ただ一度断った試合だし、自分からまた受けさせてくださいなんて言えないというタイミングで、11月に福岡で地元発のMMA大会が開催されるということが耳に入って来て──。主催者の方からも電話を貰いました」

──つまりはオファーがあったということですね。

「ハイ。そして『どんな相手と戦いたい?』と尋ねてももらいました。地元の大会だし両親、家族、友人、後輩たちが見に来ます。できれば格好良いところを見せたい。空気的に地元凱旋だし、勝てるという見込みのある相手でも構わないということは感じられました。でも、9月のパンクラスをお断りしたことが心に引っ掛かっていて。『絶対に勝ちたい』という気持ちもありながら、『できれば外国人選手で、強いヤツとやりたい』と答えてしまったんです」

──それでこそ上田選手だと、我々は思ってしまいます。

「皆のために勝ちたい試合というのはあったのですが、何よりもずっとやってきた自分のために試合ということがあって。それを伝えると、挙がってきた対戦相手がなかなかのガチで良い選手たちで(笑)。ぶっちゃけて『選んで良いよ』とも言ってもらえたんです。でも、自分で選ぶのも嫌で。『自分と手の合う、激しい試合ができる選手。上田、こいつと戦えという選手を用意してください』とお伝えしました。

──どうしても、勝てる公算が高くなる相手を選びかねないですし。ご当地マッチに欠かせない選手なので、そういうことがあるのも興行ですが、そこは拘りがありましたか。

「ハイ。それをやると、自分じゃないだろうって。それで良いのかって。正直なところ自分が若くて、連勝中であればこの状況で相手を選ぶことは有りだと思います。レコードを伸ばすことで海外、上を目指すという点において。ただ自分の場合、現役で戦う格闘技人生は最終章に近づいています。それをやっちゃうと違う。自分に嘘をつくことになる。そしてキャリアを終える時に、『あの時、地元の試合だからってイージーな相手に逃げちゃったな』と思い起こすことになるだろうと思って。自分に正直に行く。それが強い相手と戦いたいという気持ちでした」

──ご自身の試合を含め、今回が旗揚げとなるBloom FCですが、パンクラスでもDEEPでも修斗でもない。首都圏を起因とする縦の繋がりを排除し、九州勢の強化を目指すプロモーションが生まれることに関してどのようにお考えですか。

「素直に良いことだと思いました。自分が格闘技に出始めたのは、福岡で行われていたグラジエイターでした。あの時は修斗、パンクラス、DEEPと関係なく九州の選手対韓国人選手だったりがあって、凄く楽しかったです。所属は違えど『皆で頑張ろうやぁ』っていう空気があって。今、九州でプロMMA興行は修斗の闘裸男さんだけになっています。個人的には自分がずっと戦ってきたパンクラスを福岡に持ってきたいという想いもあります」

──ハイ。

「ただ、昔のグラジエイターみたいに福岡で年に2回、3回と九州の選手対東京、関西の選手という大会ができれば良いなぁという想いもありました。そういう気持ちになっていた時に、(奥宮)ハントさんからBLOOM FCの話を聞いて、凄く嬉しかったです。今、頑張っている後輩たちも格闘技へのモチベーションが上がると思います」

──福岡に限らず、地方在住の選手は1度の敗北で、実戦を戦う機会が首都圏の選手と比較してグンと減ってしまいます。

「同世代、年下の選手でも仕事、家庭があって可能性があるのに格闘技から離れています。ホント、負けてしまえば終わり。いつオファーがあるか分からない状況で、自分たちもやってきたので。その状況で気を張って、実生活を犠牲にしながら格闘技を続けることができるかというと、やっぱりなかなか難しいです」

──その通りだと思います。

「特に家族ができれば。それでも定期的に福岡で大会があり、また外国人選手や首都圏の選手と戦える舞台があれば違ってきます。僕自身、パンクラスのランカーになることで絶対にオファーがあるという確約があったので、集中力を切らさず私生活を犠牲にしても格闘技を続けることができました。その結果が、今もモチベーションを持って、格闘技と向き合っていられるということなんです。あの時代にBLOOM FCのような大会があれば、今も続けていた選手がもっといたんじゃないかと正直に思います」

──この大会が継続すれば福岡、九州の選手は強くなれますか。

「なります。アマチュアの子たちはポテンシャルが高くても、試合になったら絶対に勝てるわけじゃない。たまにしかない試合に出て負けて、そこから立ち上がれなくて辞めていった。それぞれの人生があるから、『お前、続けろよ』とも言えなかったです。でも、ああいう場面に出くわすと辛くて。もっと頑張ることができれば、見ることができる世界も違ってくるのに──と。そういう経験を何度もしてきたので、この大会が続けば1度負けても、次に頑張ることができます。そうなることで福岡、九州のレベルがどんどん上がると思います」

──そのような気持ちに火をつけるのが、今大会のメインで国際戦を戦う上田選手の役割でもあるかと。

「若い頃だったら『KOしたろ』、『はじき飛ばしたろ』と言っていたと思います。でも僕、来月で36歳になります。あえて36歳のドロドロの試合を見せたい。スカ勝ち、一本勝ちとしっかりと勝利を決めることは大切ですけど、ドロドロの試合こそ人の心を動かす。仲間たちも、そういう試合をすると『勇気を貰えた』と言ってくるんで。試合の勝ち方というよりも、試合全体で自分の生きざま……ドロドロの暑苦しい試合を見せたいちゅうのはあります」

──対戦相手の印象は?

「打撃は振ってきますね。ケージレスリングも腰が強くて、なかなか倒せない。ただし背中をマットにつかせてしまえば勝つ確率は上がるかと。『良いところ見せちゃろ』とか熱くならずに、自分の距離を保って戦います。ただ下がり過ぎると勝機を逃してしまうので、しっかりとケージを使ってテイクダウンを奪って背中をつかせたいです」

──モンゴル人の福岡襲来は、2度目の元寇──1281年の弘安の役以来750年振りです。

「試合前に筥崎宮(※元寇の際に時の上皇が敵国降伏を祈願した神社)に行って、しっかりとお参りして神風を吹かせたいです。ただ天候ではどうにもならないので、自力で立ち向かいたいと思います」

※上田将年インタビューと関連して、Fight & Life格闘紀行:福岡偏「福岡でMMA独立プロモーション、Bloom Fighting Championshipテイクオフ!!」が掲載されているFight&Life#99は現在発売中です。

■ Bloom FC01対戦カード

■第2部

<フライ級/5分2R>
市川剛希(日本)
荒木凌(日本)

<バンタム級/5分2R>
河野慶樹(日本)
荒木雄登(日本)

<バンタム級/5分2R>※
NAO(日本)
後藤優弥(日本)

<フェザー級/5分2R>
出田貴大(日本)
RAGO(日本)

<フライ級/5分3R>
上田将年(日本)
ツェルマー・オトゴンバヤル(モンゴル)

<バンタム級/5分3R>
原田惟紘(日本)
上田祐起(日本)

<フェザー級/5分2R>
盛坪チャッピー大樹(日本)
柿原”RR”昇汰(日本)

<フライ級/5分2R>
柴山鷹成(日本)
真生(日本)

<フライ級/5分2R>
平賢二郎(日本)
陸虎(日本)

■第1部

<フェザー級/5分2R>※
林大輝(日本)
森本健介(日本)

<ライト級/5分2R>
平川杏平(日本)
髙橋惺哉(日本)

<63キロ契約/5分3R>
持田哲兵(日本)
パク・サンヒョン(韓国)

<ライト級/5分2R>
深見弦汰(日本)
清水洸志(日本)

<Progressフォークスタイルグラップリング・フェザー級/5分2R>
野瀬翔平(日本)
米倉大貴(日本)

<Progressフォークスタイルグラップリング無差級/5分2R>
中村勇太(日本)
小次郎(日本)

<Progressフォークスタイルグラップリング・ウェルター級/5分2R>
スターリング・ベアー・ミーチャム(米国)
ムクロック(日本)

<フライ級/5分2R>
koki(日本)
下田洋介(日本)

<フライ級/5分2R>
堺龍平(日本)
田上健太(日本)

<フライ級/5分2R>※
林大輝(日本)
森本健介(日本)

※はヒジ無し

※Fight & Life格闘紀行:福岡偏「福岡でMMA独立プロモーション、Bloom Fighting Championshipテイクオフ!!」が掲載されるFight&Life#99は10月23日(月)に発売です。

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