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【RIZIN LANDMARK06】荒東“怪獣キラー”英貴が貴賢神戦を振り返る─01─「試合をストップする理由とは」

【写真】貴賢神戦直後、怪獣キラーポーズ!?(C)MMAPLANET

10月1日(日)に愛知県名古屋市中区のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催されたRIZIN LANDMARK06にて、荒東“怪獣キラー”英貴が貴賢神にTKO勝ちを収めた。
Text by Shojiro Kameike

GRACHAN王者としてRIZINに参戦した荒東は、貴賢神のパンチに大苦戦する。1R終盤にはストップされてもおかしくない状況に陥りながら、2Rに逆転KO勝ちしたのだった。予想以上の貴賢神の成長とともに、なぜ貴賢神のラッシュでレフェリーは試合を止めず、2Rには荒東がレフェリーストップを呼び込むことができたのか。荒東本人は試合を振り返りながら語る。


――大激闘&大逆転KO勝ちを収めた貴賢神戦を振りかえっていただきたいと思います。

「あの日は盛り上がりましたね! でも素人受けは僕の試合が一番やったと思いますけどね(笑)」

――アハハハ。「素人受け」という言葉が出ましたが、そう考えられる要因としては「打ちつ打たれつ」の展開になったことも大きいでしょう。つまりご自身も打たれているわけです。

「自分が打たれたことは良くないし、やっぱり選手としてはサクッと倒して勝ちたいですよ。『シロウト受け』というのも、あの試合内容に対して周りの人たちが喜んでくれていて――自分から『あの試合、良かったやろ?』とは絶対に言えません。それに試合前のインタビューで言っていたじゃないですか」

――打撃の練習ではディフェンスに注意しているということですね。

「はい。僕が殴られるような話はしていなくて。ディフェンスの技術が云々と言っておいて、結果的にブサイクな試合してもうたなぁと思っています(苦笑)」

――では、序盤に貴賢神選手のパンチをもらってしまった要因は何だったのでしょうか。

「まず貴賢神選手が巧くなっていましたよね。特にジャブが巧くて。これは僕の勝手な印象ですけど、ジャブが巧い人って手ではなく、肩甲骨を動かすじゃないですか。それで貴賢神選手もジャブがしなっていたし、しっかり打ち分けることができていたと思います。『今までの試合では、そんなの出来てなかったやん!』と思いました。今まで何やったんやって(笑)」

――確かに貴賢神選手の成長が目立つ試合でした。

「試合後のインタビューも、みんな主語が『貴賢神選手が――』でね。『もっと僕のことを褒めてよ!』と思いました。アハハハ」

――あれだけ左ジャブが伸びて来ると、荒東選手としては中に入りづらかったですか。

「日本のヘビー級で、あれだけ左の使い方が巧い選手は少ないですよね。でも左ジャブ自体は見えていたし、当たる前提で前に出ました。それより左アッパーを入れてきたんですよね。僕が左ジャブに対してガードすると、空いたところに下から左アッパーを入れてきて……。結果論ですけど、自分も左手でジャブを受けながら、右手でアッパーに対するディフェンスしたほうが良かったなと思いました」

――前回のインタビュー時に、吉鷹弘さんが貴賢神選手について「右のパンチは強いし、伸びて来る」と仰っていました。その右を生かすために、左を鍛えてきたのかもしれません。

「やっぱりジャブはあくまでジャブなので、絶対に最後は右を狙ってくる。その右を食らわずに自分の右を当てるために、吉鷹先生のミットで練習していて。吉鷹先生のミットのおかげで、左をもらいながらも自信を持って前に出ることができました」

――激しい打撃戦の結果、ダメージはいかがでしたか。
「翌日には顔の腫れは引きましたけど、首は痛かったです。自分としては首の力で耐えていたんでしょうね。貴賢神選手は拳が大きいので、パンチの衝撃も大きかったんだと思います」

――試合の作戦としては、相手のパンチに右を被せることと、右ローで崩していくことだったのでしょうか。

「そうです。でも逃げ足が速くて、右を蹴ることができなかったですね。貴賢神選手は正面で構えてくれるのではなく、ずっと距離を取っていたじゃないですか。だから僕は左ミドルから入りました。相手の足を止めて、もっと足に重心を残しておいてくれないと、右ローを蹴っても意味がないので。離れる相手に右ローを打って、自分の足が流れた時に左ジャブを合わされたら最悪ですからね」

――1Rの中盤以降、荒東選手から距離を詰めることができていました。あの時点で手応えはありました。

「いや、そんな余裕はなかったです。試合後の顔を見ても、貴賢神選手はダメージが無さそうだったじゃないですか。僕のほうもパンチの手応えがなくて。貴賢神選手も身長が高いし、後ろ重心だから届いていなかったかもしれない。距離を詰めることができたとはいえ、もっと殴っておきたかったです。もちろん相手からも前に出てきてくれたほうが、接点を作れるのでコチラとしては良かったですけどね。でもそうしないのが相手の巧さというか、僕にとってやりづらかったことは間違いないです」

――あの時点で、何か試合展開を変えたかったのですか。

「ああいう時に変えるのは、オフェンス面ではなくディフェンス面ですね。まず一発目をもらわないようにすること。細かくは言えませんが、今はパンクラス稲垣組の北方大地さんと一緒に、ディフェンスからオフェンスに繋げる新しい形を作っています」

――なるほど。そして今回の試合において最大のポイントとなる、1Rの終盤ですが……。

「あれは効きました。効いたぁ~」

――右ストレートを受けた荒東選手がヒザを着き、ガードは固めつつも貴賢神選手の連打を受けたシーンです。あのシーンは最大のピンチではなかったですか。

「あれは僕が攻め急いで、ガードが下がったところで右ストレートをブチ抜かれてヒザが落ちたんですね。あのパンチは天晴れでした。ただ、僕がヒザを着いたあとの展開は天晴やなかったけど……」

――あの連打を受けているシーンは、レフェリーストップが入るのではとも思いました。

「ガードを固めてパンチを受けながらも、立とうと足を動かしていたんですよ。ああやって足を動かしているのを見たら止めない、と思っています。と同時に、貴賢神選手は『レフェリーに止めてもらう理由をつくる』ということができていませんでした」

――レフェリーに止めてもらう理由……、どういうことでしょうか。

「去年の5月に、グラチャンで瓜田幸造さんに判定勝ちしたじゃないですか。あの時、バックヒジを受けたあとに右フックを入れて、ダウンした瓜田さんにパウンドを連打してもストップしてもらえなかったんですよ。そのあと、瓜田戦を視ていた他のレフェリーの方と話す機会があって。『あれはストップにならないんですか?』と聞いたら、『あのパウンド連打は、試合をストップする理由として弱いかもしれない』と言われました。で、僕も『試合をストップする理由とは?』って考えるようになりました」

<この項、続く

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