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【Grachan65】15周年記念のホームで、TSUNEと対戦――手塚基伸―01―「格闘技と共存しよう」

【写真】ある世代にとってのカフェバーのような雰囲気があるシークレットベース ドミネート(C)SHOJIRO KAMEIKE

15日(日)、東京都江東区のTFTホール100で開催されるGRACHAN65 「15th Anniv」で、バンタム級王者の手塚基伸がノンタイトル戦でTSUNEを迎え撃つ。
Text by Shojiro Kameike

「グラチャンは自分にとってホーム」という手塚は、2021年12月に一度失っていたバンタム級のベルトを獲り返し、昨年はRIZINで2試合を経験している。アラン・アラニハには敗れたものの、メイマン・マメドフを下した試合は、寝技師である手塚らしい試合内容といえた。プロキャリアも50戦を超えてもなお、自身のスタイルを貫き戦い続ける秘訣とは。


――今回は手塚選手が運営するジム『シークレットベース ドミネート』に伺いました。このジムをオープンしたのは2020年ですよね。

「2020年2月25日がオープンでした。その直後からコロナ禍があって……」

――もともと総合格闘技道場コブラ会に所属していた手塚選手が、自身のジムをオープンしようと思った理由を教えてください。

「もともと格闘技しかやっていなかったので、自分のジムの出すのは夢でした。子供が生まれてから別の会社で正社員として働きつつ、ジムを出すために動いていたんです。まさかコロナ禍が起こるとは予想していなかったですけど(苦笑)」

――あの状況は誰も予想していなかったと思います。

「オープンして2カ月経ったら緊急事態宣言が発令されたので、ジムを閉めなアカンようになりましたよね。全く入会もないので、その頃はまた朝から夕方まで別のところで働いて、夜になったらジムを開けて――という毎日でした。コロナ禍が開けてからは回復してきています」

――ジム名を「ドミネート(dominate)」とした理由は何だったのでしょうか。

「格闘技の試合で『ドミネートする』と言うじゃないですか。支配する、制圧する――完全試合という感じですよね。自分の『漬けきる』という試合スタイルも掛けています。あと『シークレットベース』というのは秘密基地という意味で。最初に物件を見た時に『あっ。秘密基地や』と思いました(笑)。それでシークレットベースと、ドミネートをくっつけました」

――『制圧する秘密基地』という名前は、格闘技を知らない人からは怪しまれませんか(笑)。

「アハハハ! そのうえ、派手な色のネオンを使っていますからね。コロナ禍の頃は飲食店が閉まっていたじゃないですか。どこかで飲みたいと思って、お店を探していたんでしょうね。このネオンと名前を見て、バーやと思って入ってくる人もいましたよ(笑)」

――確かにバーの雰囲気はありますね! そんななか、今回はグラチャン15周年記念興行で、TSUNE選手と対戦します。グラチャン参戦は、2021年12月に伊藤空也選手からバンタム級王座を奪取した試合以来となりますね。

「やっぱりグラチャンは自分にとってホームやと思っているので、その15周年記念に呼んでいただいて嬉しいです。去年10月のRIZINの試合から間隔も空いていて……、選手とジム経営を並行しているなかで試合間隔が空くと、どうしても試合へのモチベーションも落ちてきます。年齢的(現在36歳)なこともありますしね。そのなかで試合が決まったら、もう一度気持ちを盛り上げることができます。

正直、燃え尽きていたような感じはあったんですよ。グラチャンのベルトを獲り返して、アラン・ヤマニハ戦は負けたけどRIZINというものを経験できた。その次にマメドフ戦で勝つことができて、一度負けているRIZINで勝った――そのあとは『早く試合がしたい』という気持ちも薄れてきていました」

――手塚選手もベテランの域に達してくるなかで、グラチャンをはじめ多くのベルトを巻いてきました。UFCやROAD FCなど海外の試合も経験しています。その手塚選手にとって、MMAを戦ううえで今の目標は何なのでしょうか。

「以前は、それこそ『格闘技で死にたい』と思っていました。自分は格闘技と心中するんや、って。でも結婚して子供が生まれると、そういうわけにはいかない。だから『格闘技と共存しよう』と考えるようになりました」

――『格闘技と共存』、なんだかグッとくる言葉です。

「格闘技と共存するための方法の一つが、ジムだったんです。ジムがあるから――ジムのための試合をすることが肯定されるというか。もちろん試合をすることが、格闘技と共存することにも直結しますし。だから、戦いたいっていう気持ちは持ち続けています。あとは今の時点で、プロで55試合しているんですよ。だから60戦を目指そうかな、と」

――もう55戦も経験している現役選手は、MMAでは少ないですよね。ただ、それだけ試合をしているとダメージや体力面なども心配になりませんか。

「心配がない、と言えば嘘になります。家族もいて、ジムもある。自分が動けなくなったらジムも動かせないし、家族が路頭に迷いますからね。だけど、やっぱり格闘技が好きなんですよ。やれるなら、ずっと試合をし続けたいと思っています」

――その想いが相反するといいますか、家族やジムのことが試合でブレーキをかけてしまうことはないですか。試合をすれば怪我もあります。怪我があればジム経営にも支障が出て来るでしょう。

「ブレーキ……う~ん、それがないんですよ(笑)」

――……はい。どの選手に訊いても、そのブレーキがないですよね。それがファイターの凄いところだと思います。

「アハハハ、何なんでしょうね。でも僕の場合は、大きな怪我をしたことがないのも大きいと思います。もちろん小さな負傷はありますけど、選手生命を脅かすような怪我は経験していないですね。今まで手術といっても、ヒジの関節ネズミぐらいで。別に怪我をしないように戦っているわけでもないけど、試合直後に入院したという経験もないですし。だからいつも大丈夫と思って試合していますね。今回はグラチャンの15周年記念興行じゃないですか。自分は30周年記念興行に出るつもりですよ」

――えっ!? 15年後は手塚選手も50歳を超えていますよ。

「グラチャンでいえば、桜井隆多さんも50歳を過ぎて試合されていますよね。自分もそれぐらい戦い続けたいです」

<この項、続く

■視聴方法(予定)
10月15日(日)
午後2時00分~ GRACHAN放送局

■ Grachan65対戦カード

<バンタム級/5分2R>
手塚基伸(日本)
TSUNE(日本)

<ライト級/5分2R>
ロクク・ダリ(コンゴ)
岸本篤史(日本)

<ライト級/5分2R>
小谷直之(日本)
林RICE陽太(日本)

<ウェルター級トーナメント1回戦/5分2R+Ex1R>
渡辺良知(日本)
青木忠秀(日本)

<ウェルター級トーナメント1回戦/5分2R+Ex1R>
桜井隆多(日本)
上田拳翔(日本)

<J-MMA Rookies CUPフライ級決勝戦/5分3R>
金井一将(日本)
鈴木崇矢(日本)

<J-MMA Rookies CUPフェザー級決勝戦/5分3R>
黒井海成(日本)
人見礼王(日本)

<バンタム級/5分2R>
伊藤空也(日本)
高須将大(日本)

<フェザー級/5分2R>
大搗汰晟(日本)
中村京一郎(日本)

<ウェルター級/5分2R>
能登崇(日本)
芳賀ビラル海(日本)

<バンタム級/5分2R>
今村豊(日本)
YO-HEI(日本)

<ストロー級/5分2R>
朝日向大貴(日本)
牧ケ谷篤(日本)

<フェザー級/5分2R>
松田征也(日本)
ディオゴ・ロボ・トクナガ(ブラジル)

<バンタム級/5分2R>
萩原一貴(日本)
佐々木歩夢(日本)

<フライ級/5分2R>
宮内拓海(日本)
天野哲宏(日本)

<引退エキシビジョンマッチ/5分1R>
阪本洋平(日本)
山本琢也(日本)

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