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【UFN228】37カ月振りの実戦=ゴールディと対戦、魅津希「Me,WeでMMAの楽しさを教わることができた」

【写真】この笑顔、何としてもオクタゴンのなかで見たい(C)MMAPLANET

23日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC Apexで開催されるUFN228:UFN on ESPN+86「Fiziev vs Gamrot」で魅津希が、2020年8月以来となる実戦に復帰する。
Text by Manabu Takashima

前十字靭帯の手術からリカバリー、長期離脱となった魅津希は欠場期間中に20代最後の年に突入した。決して短くないブランク、UFCでは1勝1敗、パフォーマンスで周囲を納得させるファイトが不可欠な彼女は、過去にないほど恐れと緊張を感じていた。

その裏で思わぬ長期滞在となった里帰りで、東京での練習を経験しかけがえのない仲間を得た。そんな魅津希のUFCカムバック戦前の心境とは。


──定期的に試合をしていた時と、3年振りとなった今回で何か気持ちの部分で違いはありますか。

「昔は……若い頃は怖さがなかったのですが、大人になるとそこが違いますね」

──魅津希選手が「若い頃」と振り返っていることを、違和感なく聞くことができるようになってきました。

「そうなんですよ。そうなると1戦、1戦の重みが理解できる年になってきたというか。3年振りで勝たないといけないのですが……まぁ勝つんですけど、楽しみという気持ちより緊張と怖さの方が多いです。緊張しています」

──それは年齢なのか、ブランクが要因になっているのか。どちらだと考えていますか。

「3年は長いですね。そこまで自分で意識をしていなかったのですが、試合が決まった時に『もう3年も経ったんだ』と実感しました。でも、こうやって試合のことを考えると緊張してきますね(苦笑)」

──実は過去一で表情が堅いと感じていました。

「年ですね(苦笑)。年を取りました」

──それは違うかと(笑)。ただ27歳から29歳という期間でブランクができたのは事実です。

「そうですね、リカバリーに1年掛って。そこからまだケガをすることが怖くて、練習という練習が思うようにできなくて」

──昨年、タイに行く前にインタビューをさせていただいた際には、もう少し早く復帰戦を戦いたいという希望を持っていました。

「そこは体調よりも、試合が組まれなかったからです」

──UFCもなかなか日本人選手の試合を組まないという時期が長かったです。社会人、いわばファイターは個人事業主で、自分が必要とされていないと感じると非常につらいモノがあります。そんな風に関じることはなかったですか。

「だから契約はあっても、UFCがどう思うのかは自分が出す成果次第ですよね」

──試合がないなら、他で戦いたいという気持ちは?

「それはないです。結果、この試合が決まったわけですし。決まる前から、ある程度は準備をしてきました。でもいざ決まると、対策練習もそうだし課題の強化にもより力が入りましたね」

──この間、タイ以外では日本で練習しており、以前と比べて強化できたところはありますか。

「組みの部分は、ちょっと力を入れようかと思っていて。Me,WeとCUTEで上田将勝さんとも練習させていただいていて。上田さんはグラップリングが強くて、大まかなことではなくて細かいところを修正して強化できたと思います」

──この間、村田夏南子選手と行動をともにしてきました。

「NYで初めて会って、タイにも2人に行って一緒に過ごすことが多くなりました。それだけ練習も積んで来て、言ってみれば絆が深まりました。

本当は夏南子ちゃんと一緒にベガスに行って最後の調整をしたいのですが、まだビザが取れていないので自分の方が先に行くかもしれないです。ただ、本当は夏南子ちゃんと一緒に行きたいです(※取材は6日に行われた)。夏南子ちゃんが2週間後に試合なので、そのまま私も残ります。夏南子ちゃんのビザが間に合えば、セコンドに就いてほしいですし、私も彼女のセコンドに就きます」

──そのまま米国に拠点を戻す予定ですか。

「PIがあるので試合後は、ベガスでケアをゆっくりとしようと思います。それから試合がすぐに決まるようならベガスに残ります。そこに時間が掛るようだと、時期は決めていないですけどフラッと日本に戻ってくる予定です」

──ではNYではなく、日本ベースで?

「う~ん、セラ・ロンゴは女子選手がいなくて。男子もバンタムから上が多いから、行っても体格差があるので。そうなるとNYに戻ってもどうなのかっていうのはあります。なので他のジムを見るのも良いかと考えています。でも米国で練習したいとは思っています」

──そんななか対戦相手のハンナ・ゴールディにはどのような印象を持っていますか。

「ガタイが大きいですよね。グラップリングの試合にも出て、一本勝ちもしています。そこも含めて対策練習と、自分のスキルアップをしてきました」

──彼女はUFCでは1勝2敗ですが、この3年間で女子MMAのレベルアップは半端ないように感じます。

「前々からUFCで活躍している選手が年を重ねて、敗北が増えています。対照的に新しい選手がスキルもついていて、レベルアップしている中に入っていくので、ちょっと出遅れている感はしています(笑)。

でも、その中にせっかく入っていくので、やりたいことをやりたいという感じです。とにかく対戦相手はフィジカルが凄いですね。組みが強いパワー系で。でもパンチに関しては、そのパワーを伝えきれていない。凄い体をしていますが……。組みの方は得意技もあるでしょうし、ハマらないように気を付けないといけないです。相手が好きなことをしてきたら遮断して、自分の好きなことができるように実行する。そういう風に持って行かないといけないです」

──どの局面でも付き合うことは、もうない?

「遮断したいのですが、付き合っちゃうと思います(笑)。付き合わないように指摘されてきて、自分では付き合っていないつもりでも傍から見ると付き合っているように見えるようで。だから頭ではつき合わないで、自分の好きなことをやろうとはしていても、そうなっているということだし。そうならないように戦います」

──ブランクを経て、UFCファイターとして目標はどこに置いているのでしょうか。

「ブランクがあろうがなかろうが、相手は気を使ってくれないので。そこがあるからどうこうでなくて、今の自分がどれだけ通用するか。そういう想いは最初から持っていました。どこまで自分が行けるのか。契約更新ができたら成功だし、できなかったら自分がやってきたことが間違っていたことになります。今はやるべきことをやっているので、次の試合で出したいですね」

──ところで昨年の夏にインタビューをさせてもらった際に、ケガ前の自分には戻れないと言われていた一言が心に残っています。

「言っていましたっけ? ケガ前と比較すると……それまで東京のジムで練習をしたこともなかったのですが、Me,Weでは山﨑(剛代表)さんを初め色々な人にお世話になってきました。そのおかげで最近までなかった……MMAの楽しさを教わることができた気がします。以前は傍から見て近寄りがたい雰囲気があったようで」

練習仲間のファイトギアを懸命に消毒する魅津希

──豊橋時代は、絶対にそうだったと思います(笑)。

「私自身はそんなオーラを出しているつもりはなかったです。でも、近寄りがたい、接し辛いというのはあったみたいです。今では、ここで皆が仲良くしてくれて。私のことを分かってくれました(笑)。初めて東京の人達と交流が持てた、この1年でした。そして夏南子ちゃんの試合が2週間後にあるので、しっかりと勝って繋げたいです。もちろん3年振りの復帰戦でインパクトは残したいのですが、そこは判定でも良いので──お世話になっている人の期待に応えたい。まずは1勝を挙げたいです」

■視聴方法(予定)
9月24日(日・日本時間)
午前5時~UFC FIGHT PASS
午前4時30分~U-NEXT

■UFN228対戦カード

<ライト級/5分3R>
ラファエル・フィジエフ(アゼルバイジャン)
マテウス・ガムロ(ポーランド)

<フェザー級/5分3R>
ブライス・ミッチェル(米国)
ダン・イゲ(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
マリナ・ロドリゲス(ブラジル)
ミッシェレ・ウォーターソン・ゴメス(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ブライアン・バトル(米国)
AJ・フレッチャー(米国)

<フェザー級/5分3R>
シャルル・ジョーダン(カナダ)
ヒカルド・ラモス(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
マイルス・ジョンズ(米国)
ダニエル・アルゲータ(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ティム・ミーンズ(米国)
アンドレ・フィアーリョ(ポルトガル)

<ミドル級/5分3R>
ジェイコブ・マルクーン(豪州)
コディ・ブランデージ(米国)

<ヘビー級/5分3R>
ジェイク・コレアー(米国)
モハメド・ウスマン(ナイジェリア)

<女子ストロー級/5分3R>
井上魅津希(日本)
ハナ・ゴールディ(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
モンセラート・レンドン(メキシコ)
タミレス・ヴィダウ(ブラジル)

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