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【HEAT52 X Angel’s FC27】エンジェルズFCとの対抗戦出場、堀友彦「セコンドの一枠を長男に」

【写真】それぞれのMMA観、それぞれのMMAファイター人生(C)MMAPLANET

19日(土)に東京都港区のニューピアホールで開催される「HEAT vs AFC 対抗戦Rd.2 in JAPAN」にて、堀友彦が韓国のソン・ヒョンジョンと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

特定のジムに所属せず、フリー一筋で様々な団体を渡り歩いてきた堀。2018年9月の手塚基伸戦を最後に怪我で長期欠場を余儀なくされたものの、昨年11月に約4年ぶりの復帰を果たした。ギラギラした野心とは違う、淡々としながらも格闘技への熱を感じる言葉で試合への意気込みを語った。


――これまで様々な団体を渡り歩いてきた堀選手ですが、HEAT参戦はいつ以来になるのですか。

「15年くらい前ですね。名古屋で坪井(淳浩)さんとやらせてもらって以来です(2007年3月)。そろそろ試合がハマったらいいなと思っていたところで、今回の話をいただいて、HEATさんに出させてもらうことになりました」

――今回はHEATと韓国のプロモーション=AFCとの対抗戦が行われ、堀選手の試合も対抗戦として組まれたものです。対戦相手のソン・ヒョンジョン選手にはどんな印象を持っていますか。

「1試合だけ試合映像を見ました。AFCでブラジル人とやっている試合だったんですけど、いかにも韓国人選手らしい頑丈な選手だなと思いました」

――堀選手はいつをプロデビューとするかにもよりますが、キャリア約20年&40戦の大ベテランです。これだけキャリアを積むと、試合に関して対戦相手のことはそこまで気にならないですか。

「ホントに長くやっているので、対戦相手に合わせて新しい技術を覚えて戦略を立てて…というのは難しいと思うんですよ。20年もやっていれば、自分も形が出来上がっているので。いかに自分の調子とコンディションを上げていくか。相手はこういうタイプだから、自分のどの武器を使って戦っていこうか。そこを考えてやっていますね」

――2018年9月グラチャンでの手塚基伸戦から約4年間のブランクがありましたが、何が理由だったのですか。

「足の怪我です。実は手塚戦のあとに大きな怪我をして、手術したんですよ。それで手術が終わって練習を再開したら、今度は別の箇所を怪我してしまって。それで試合間隔が空いてしまいました」

――そこまで大きな怪我は初めてですか。

「手術が必要な怪我は初めてでしたね。もともと痛めていた箇所で、だましだましやっていたんですけど、それが手塚戦で悪化して。そのまま練習を続けていたら完全にやっちゃいました(苦笑)」

――長年のダメージの蓄積があったのかもしれないですね。

「そうですね。練習帰りに歩けなくなっちゃうぐらいだったんで。これはもう手術しないと無理だと思いました」

――当時の堀選手はグラチャンのバンタム級のタイトルも保持していて防衛にも成功。直近2年間の成績は5勝1敗1分と好調でした。そのなかで大怪我をして、当時はどんな心境だったのですか。

「正直、手術するなら試合はやめようと思っていました。でも身体が動くようになって練習を再開したら、Fighting Nexusさんからオファーをいただいて。自分が教えている若い選手たちからも『堀さん、もう試合しないんですか?』って煽られて、だったら一丁やってやるかと思って復帰しました」

――堀選手は特定のジムに所属せずにフリーという立場で練習していますが、今はどのジムで練習されているのですか。

「今は池袋のBLUE DOG GYMさんでお世話になっています。柔道をやっていた子とか若くていい子が多いので、そういう子たちに自分が教えられることを教えながら、練習するときは一緒に練習してという感じでやっていますね。だから怪我をして動けない時期はありましたけど、格闘技と切れることはなかったです」

――仮に怪我で引退したとしても練習は続けたかったのですか。

「どうだろう……身体が動くようになったから練習を再開したという感じで、そこまで深くは考えてなかったです(笑)」

――ただ単に好きなことをやっているという感覚なのでしょうか。

「もう、依存症みたいなもんですよ(笑)。この年齢で格闘技を続けている人はみんなそうじゃないですかね」

――自然に復帰への気持ちが沸いてきたのですね。

「あと子供が2人いるんですけど、手塚選手とやった時、長男の方は試合を見た記憶があるくらいの年齢だったんです。でも次男はそういう年齢じゃなかったんで、僕の試合を見た記憶がないと思うんですよね。だから子供たちに自分が戦っている姿を見せたいと思ったのが復帰を決めた一番の理由ですね」

――では今の堀選手の試合に向かうモチベーションや目標はどこにあるのでしょうか。

「自分自身が満足したいですね。それこそ僕、最後にKO勝ちしてから10年以上経ってるんですよ。その間に一本勝ちはあったんですけど、久々に相手を“倒す”感覚を味わいたいんですよ」

――「誰かと戦いたい」や「どの団体のチャンピオンになりたい」ではなく、自分の道を追求するということですね。

「まさに自己満ですよ(笑)」

――いやいや(笑)。人生において20年以上も同じことをやり続けるというのはなかなかないですよ。

「でも僕と同世代の40歳前後の選手たちって意外に引退しないんですよ。僕らがMMAを始めた頃は、ちょうどMMAの人気が出始めた頃だったじゃないですか」

――PRIDEをきっかけにMMAが盛り上がっていた時期ですね。と、同時にジャンルとしてどうなるかはまだ分からない時期だったと思います。

「当時からMMAで有名になろうとか稼いでやろうと思っている人もいたと思うんですけど、今の子たちほど明確じゃなかったと思うんですよ。だから本気で好きじゃなかったらMMAをやってないと思うし、純粋にやるのが楽しかったんじゃないですかね。で、その楽しさを忘れられないまま、今もずっと続けている選手が多いんだと思います」

――一緒に練習をしている、あるいは練習をしてきた仲間とは縁が深いのですか。

「僕、練習仲間とプライベートの交流が全然ないんですよ。練習場所以外で会うのは試合会場くらいで、そこで軽く挨拶して…みたいな。ジムで練習する以外でコミュニケーションを取らないからこそ、こうやってどのジムにも所属せずにフリーのままでいられるんじゃないですかね」

――そこもお聞きしたいところでした。堀選手はKRAZY BEEで練習している時期があって、よくKRAZY BEEの選手のセコンドについていましたよね。なぜ所属ではないのにセコンドに選ばれているのか、すごく不思議だったんです。

「確かに周りから見ていたら僕の立ち位置がよく分からないですよね(笑)。たくさん選手のセコンドにもついたし、ついてもらったし、すごくありがたかったですよ。それこそKIDさんとも練習して、たくさん殴ってもらって(笑)」

――堀選手の「練習以外では選手とつきあわない」という姿勢がストイックですし、それがジムに所属していなくても受け入れられていたのですかね。

「どうなんですかね。例えば(田村)一聖とは年齢も近いし、その世代の選手たちとは初期の頃から一緒に練習させてもらっていたんで。そういうところで縁があったんじゃないかなと思います」

――復帰を決める一因にもなった練習仲間=若い選手たちに対して伝えたいことはありますか。

「今の子たちはみんな競技者であり、アスリートですよね。小さい頃に柔道やレスリングをやっていたり、それこそMMAの練習をやっている子もいるくらいなんで。僕らみたいにある程度年齢がいってから、面白そうと思ってMMAの練習を始める子は少ないですよね。だから今の子たちに早く強くなってほしいし、早くみんな上に行って頑張れよ!と思います」

――堀選手は自分のスタンスで格闘技を続けられてきたと思いますが、これからも格闘技には携わっていきたいですか。

「携わる……自分の場合は試合以外で格闘技に携わるイコール練習しかないんです。練習以外で携わる方法がないというか。もし試合をやらなくなっても練習はずっと続けるという感じですかね」

――なるほど。今回の試合はお子さんたちも見に来るのですか。

「そうですね。HEATはセコンドが3人までOKで、僕がいつもセコンドをお願いしているのが2人なんで、セコンドの枠が1人分余ったんです。改めて3人目を探してオファーするのも大変なんで、その1枠を長男にしようと思っていて。息子に間近で自分の試合を見てもらうことなんてなかなかないだろうし。でも息子がセコンドについていたら、こいつふざけてるなと思われますかね?」

――そんなことはないですよ。逆にこのインタビューを読んでもらえれば、堀選手の想いが伝わると思います。

「それならよかったです。僕は他のファイターと違って、こんな感じなんですけど(笑)、これからもよろしくお願いします」

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