【RIZIN LANDMARK05】V.V Mei、浅倉カンナ戦前─01─「この国で何かできることがあるんじゃないか」
【写真】ONE以外のプロモーションで、MMAルールの試合を国内で戦うのはほぼ8年振りとなる(C)SHOJIRO KAMEIKE
29日(土・祝)、東京都渋谷区の代々木第一体育館で開催されるRIZIN LANDMARK05で、V.V Meiが浅倉カンナと対戦する。
Text by Shojiro Kameike
2007年にスマックガールでプロデビューしたV.V Meiはヴァルキリー、パンクラス、VTJ、DEEP、PXCと様々なケージで戦ってきた。そしてONEでの6年間に及ぶキャリアを終え、今回RIZINのケージに入る。日本女子MMAファイターとして、誰よりも海外で、そしてケージで戦ってきたV.V Meiが、なぜここでRIZIN参戦を選択したのか。その理由に迫る。
――今回はZoomでインタビューをお願いさせていただきましたが、背景に映っているのは大森のゴールドジムサウス東京ANNEXですよね。取材後にトレーニングが控えているのでしょうか。
「今日はボクシングのパーソナルトレーニングです。もう1年以上、野木丈司トレーナーのパーソナルを受けているんですよ」
――野木トレーナーは男子選手だけでなく、多くの女子選手が指導を受けていますね。
「はい。対戦する選手がお互いに野木さんに教わっているとか、よくありますからね(笑)。私自身、ボクシング技術の細かいところを学びたいなと思って。もうパンチの打ち方の基礎から。今までキックボクシングはやっていましたが、ボクシングの細かいところまではカバーしていなかったので」
――野木トレーナーの指導を受けてから変わったところはありますか。
「パンチ一つひとつの打ち方が、より狙いが明確になりました。位置取りとかも、今までは漠然と――コンビネーションとかは考えたりはするけれども、漠然とパンチを放っていました。それが自信を持って出せるようになったところはありますね。
たとえば相手と身長差がある場合、どうやって距離を詰めていけば良いのか分からないこともあったんです。それは試合が始まれば勢いで行って、結果オーライになることも多くて。でもそれを結果オーライにはしたくない。ずっと『何となく成功していた』ものを、もっと自信を持って確実にやりたい、という部分が打撃には多かったんですよね。そこで距離の詰め方――こういう角度から入っていくとか、自分の中で謎だったことを明確にしていく作業ができています」
――以前は空手の距離をベースとしていたのでしょうか。
「おそらく試合が始まってしまえば空手の距離になっていました。結果的に、それは良かったと思います。キックボクシングをやりすぎてしまうと――キックボクシングの距離のほうが楽というか。打撃のやり取りが楽になる部分があるんですね。空手の遠い間合いから踏み込むのと、キックボクシングのように近い距離でガードを固めて触り合うのを比べると、どうしても距離が近いほうが楽で。それに慣れてくると、どうしても試合でも近い距離になりがちなんですよね。それだけではダメなので、やはり空手の距離を入れたりという調整はしてきました」
――ONEの試合時に、そんな野木トレーナーの指導の効果を出すことはできていたのでしょうか。
「前々回のジュリー・メタバルザ戦の前から野木さんに教わっていて、ボクシングに関してはだいぶ良くなっていました。ただ、それをいかに自分のMMAに組み込むか、というところですよね。そこは今後、まだまだ成長すると思っています。ボクシングをしすぎることなく、MMAをやりながらボクシングを入れていく。そういう部分を調整していけば、攻め方の細かい部分も成長していくと考えています」
――なるほど。そのONEですが、今回RIZINに出場するということは、もうONEとの契約は満了したということですか。
「アーリー・ターミネイションですね。まだ契約試合数は残っていたのですが、リリースしてもらいました」
――アーリー・ターミネイション……その選択をした理由を教えていただけますか。
「……、……、最後のほうは判定について納得のいかない試合もありました。それと、私もそんなに長く現役を続けられるとは思っていません。『最後は日本で試合をしてキャリアを終えたい』という気持ちがありました。理由は、この2つですね。
ただ、最後のほうは納得のいかない判定があったとしても、ONEで過ごしたキャリア全てをマイナスに捉えることはないです。本当に良い経験をさせてもらいました。ONEで得たものを心の中に置きながら、明るい未来に向かっていきたいと思って、早期リリースをお願いしました」
――ONE初出場が2016年5月、アンジェラ・リーとのアトム級王座決定戦でした。ONEで戦ってきた約6年間のキャリアは、ヴィー選手に何をもたらしたのでしょうか。
「最初にアンジェラ・リーと対戦する時に、ONEのスタッフから言われて、印象に残っていることがあります。『あなたはアジアの女性の代表としてMMAを戦っている。アジアの代表として、全ての女性に向けてメッセージをください』と。アジアの代表だなんて、そんな大それたことを考えたこともないので困りました(苦笑)。でもONEは本気だったんです。本気でアンジェラ・リーと私をツートップにして、アジアの女性たちに勇気を与えるというか。
最初は、それも大げさだなと思っていました。でもONEのスタッフから本気度が伝わってきて。私もアジア各国――特に発展途上の国々で、『あなたの試合を視て、勇気をもらいました』とか、現地の人たちがONEや出場選手を本気で応援してくれているが分かったんです。それまでは自分がやりたいから格闘技をやってきた。でも海外に出て、そういうふうに言ってもらえるとは、思ってもみませんでした。その世界観をONEは創っていたんですよね。そして私も、MMAファイターというものが価値のある職業なんだと感じました」
――それがまさに、ONEのコンセプトではありましたね。その気持ちは、日本のRIZINで戦うことになった今も変わりませんか。
「はい。今は日本も格差が広がっていて、苦しい生活を送っている人も多いと思うんです。特に女性はシングルマザーだったり、働いても働いても生活は苦しいままだったり。そういう女性が増えている状況のなか、自分が生まれたこの国で私にも何かできることがあるんじゃないかと考えています。だからキャリアの最後はもう一度、日本で試合をしたいと思いました」
<この項、続く>