【ONE FN07】仕切り直しのリネケル戦へ、ファブリシオ・アンドラジ「自分が王者という気持ちで戦う」
【写真】余裕の固まり、余裕しかない (C)MMAPLANET
25日(土)、タイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE Fight Night07 。メインで仕切り直しの世界バンタム級王座決定戦=ファブリシオ・アンドラジ×ジョン・リネケル戦が組まれている。
両者は昨年10月に王者リネケルにアンドラジが挑戦する形で試合が組まれていたが、リネケルの体重オーバーによりアンドラジが勝った場合のみ新王者が誕生するという変則世界戦として実施された。
そして優勢に試合を進めていたアンドラジの攻撃ヒザがリネケルの急所に入り、試合はノーコンストに。
あれから4カ月の再戦に向け、絶対の自信を伺わせるアンドラジに話を訊いた。
――ファブリシオ、ジョン・リネケルとの再戦が迫ってきました(※取材は2月13日に行われた)。今の調子はいかがですか。
「完璧、100パーセントだよ。あと、試合まで2週間。完全に仕上げてきたから、あとは試合開始を待つのみ。そして、試合でしっかりとやるべきことをやるだけだよ」
──去年の10月の試合ですが、リネケルが計量に失敗してタイトルを返上。変則タイトルマッチになりました。日本人選手も含め、体重&ハイドレーション・テストが試合の前日だけになり、計量失敗がより目立っています。この1日だけの計量に関しては、どのように感じていますか。
「まぁ、何もONEの責任じゃない。今も多くの選手が減量をしているからだよ。ONEではハイドレーション・テストがあることは、ずっと前から続いていることだ。それは通常体重で戦って、ファイトをより安全に戦えるようにしたからだ。試合後にも体重を測って、105パーセント以上戻っていればファイトマネーをカットされるしね。
それなのに5キロ、あるいは10キロと体重を落としている選手がいる。でも、この計量方法が選択された時点で、食事をしてヘルシーな状態で戦わないといけない。皆、水抜き減量なしでリミットを下回る状態で戦うべきなんだ。
僕はこれまでの全ての試合はハイドレーションも体重も落とせている。僕は自分がバンタム級としては大きいことを自覚している。でも一度も計量をクリアできなかったことはない。なら、皆もできないとおかしい」
──ではファブリシオは普段から145ポンドより軽い体重をキープしているのですか。
「そうだよ。試合が近づくと常にリミットに近いように、どちらかというと少し軽くしているんだ。そうだね……。僕がONEでなく他のプロモーションで試合をしていたら、135ポンド……61キロで戦うはずだ。でもONEなら5キロ余分に調整ができる。この5キロがあるから、僕は水分を摂って計量に臨むことが可能になる。他の大会で戦うなら、水抜きをして61キロまで落とせるよ。
だからONEで戦う限り、ハイドレーションをパスできず計量を失敗するなら、1階級上で戦うべきだ。そうすればハイドレーション・テストを恐れる必要はない。僕の場合は試合後の体重チェックで69.3キロまでなら問題ない。ただし、それを越えてしまうとファイトマネーの20パーセントが没収される。2度目は40パーセントだ。3度越えると、1年間のサスペンションという罰則がある」
──とはいえ、水抜きをしようが、ハイドレーションをパスすれば試合ができ、その術を持つ者が有利になるのもスポーツの在り方です。そして105パーセント以上戻した選手に罰金はあっても、リザルトに変更はないですし。
「確かに、それはその通りなんだ。ウォーターローディングを普段からしている選手は、ハイドレーションを切り抜けることができる場合もある。そういう抜け道との追いかけっこは、どのスポーツでもあることだ」
──ハイ。誰もがルール内でアドバンテージを得ようとするのも、当然です。そしてONEはドライアウトがよりしづらいように、1日だけの計量にしたということですね。
「そうだね。だからこそ2日間の計量期間で、体をクリーンにするのではなくて、1日──それも4時間でクリアしないといけない。僕はこの計量システムのおかげで水抜きをせず、毎日食事をして戦うことができているよ。
水を飲んで、食事をして体重が増えたとしても69キロぐらいまで。試合に向けて、練習をしていればすぐに体重は65キロ以下になるからね」
──ハイドレーションの抜け道でなく、本当に適正体重で戦うということですね。ありがとうございます。しっかりと説明していただいて。では世界戦に向けてです。前回の試合結果はNCに終わりましたが、内容的には明白にリードしていました。
「リネケルが200グラム・オーバーだったけど、なぜそうなったのか僕には分からない。まぁ僕の知ったことじゃない。今回の試合でまた体重を落とせなくても、彼のファイトマネーの一部も貰うだけだからね。気にしない。何が起ころうが、僕は彼を倒すだけさ。
あの試合を見てもらったら分かるけど、ヒザ蹴りが急所に入るまで完全に僕のゲームだった。それ以前にダウンを奪っているし、思うように戦えていた。あとはヒザ蹴りでフィニッシュするだけだったのに急所に入ってしまったんだ。ただ、ちょっと急ぎ過ぎたと今では思っている。あそこまでのスコアで勝敗が決していれば、僕がチャンピオンになっていた。
だから、今回の試合に関しては自分がチャンピオンという気持ちで戦う。例えベルトを巻いていなくても、僕がチャンピオンだよ。そういう気持ちでいると、今回のキャンプは前回と全く別モノだった。チャレンジャーでなく、チャンピオンとしてキャンプを実施したんだ。
前回の僕と、チャンピオンになった僕は別人だからね。前回はチャレンジャーだったから、KO勝ちして世界の頂点に立つんだっていう感じで、気が急いてしまっていた。今の僕は既にONEチャンピオンシップ・バンタム級の頂点にいるナンバーワン・ファイターだ。だから、前回のような試合はしない。ただ、一瞬でも隙があったらKO勝ちする点は変わりない。
彼がテイクダウンを狙って来たことは驚かされたけど、そこも頭に入ったから問題ない。前回の試合とは違った流れになるよ。何も恐れることはない。まるで違った作戦を立てて、実行するだけさ。メンタル的にもまるで違うし、凄くクリアになっている。ケージのなかでやるべきことをやり、しっかりとノックアウトするよ。前回の試合より、ずっと強くなっているからね」
──キャンプが別モノということは、ガチで打撃を入れるスパーリングの影響でトレーニングパートナーを見つけることは難しいということもなかったですか。
「アハハハハ。いや、今回はもっと気楽に構えて、スマートに練習してきた。スパーリングパートナーとして、ブラジルから少し体格が大きい友人に来てもらったんだ。本当にタフな選手だから、全然前より良いキャンプだったよ」
──それはケガ人が出なくて良かったです(笑)。
「アハハハ。前の試合は練習にしても、実際のファイトにしても少しでも早く倒すということに頭が行き過ぎていた。もっと時間を使っていれば、確実に倒せたのに」
──つまり、今回はそういう試合をするということですね。
「そう。試合の組み立て方としては、前回とはプロセスが違っていてもKOするという結論は変わりないからね。急がないこと。それを前の試合で学んだんだ。自分の持つ全ての能力を見せるには、少しは我慢が必要だってね。如何に僕が変わったか。試合を見てもらって──終った時には、その違いに皆がきっと驚くことになるよ」