【Bellator&RIZIN40】キム・スーチョルと対戦、熱血風ファイター=フアン・アルチュレタの真実「賢明さ」
【写真】スペイン系とメキシコ系という紹介が多いが、自身はネイティブアメリカンの血にも重きを置いており、チチカカ(ネイティブアメリカンの刺繍)が施された衣装を会見でも身にまとっていた (C)MMAPLANET
26日(水)、東京都港区の六本木ヒルズアリーナで大晦日12月31日(土)に開催されるRIZIN40の会見が行われ、RIZIN×Bellatorの対抗戦に出場するチーム・ベラトールの一員としてBellator元世界バンタム級王者フアン・アルチュレタが来日。キム・スーチョルと戦うことが発表された。
アルチュレタといえば、全力ファイト。そして最後まで攻撃を続けるアグレッシブなスタイルという印象が強い。会見前にアルチュレタに話を聞くと、熱い言葉でその信条を以下のような言葉で語った。
「勝敗は時の運、どっちに転ぶかは分からない。だから、僕は自分のパフォーマンスを一番に考えている。全力を尽くす、そこが一番重要なんだ。ただし、セルジオ・ペティスと戦った時は足と右の拳を試合の序盤に負傷してしまった。ラフェオン・スタッツとのGP戦は御覧の通り、確実に勝利に向かって戦えていた。けど左ハイでKO負けした。
人生で100万回キックと向き合ってきて、あのタイミングでヒザが顔面に当たるなんてなかった。なぜ、あのキックが顔面を捕らえたのか──何か理由があるはずだ。今なら分かる。あの一発で、僕はGPで上位進出できなくなった。そして、日本で戦う機会を得た。100万回に1度しか起こりえない状況でのKO負けは、僕を日本に向かわせるためだったんだよ。
あの試合で、あのまま勝っていたら日本で戦う機会を得ることはできなかったからね。スタッツに敗れ、エンリケ・バルゾラ戦を戦うことになった。そして、あの試合のパフォーマンスを認められ、夢だった日本で戦うことが実現したんだ」
アルチュレタの言葉を字面で見ると、まさに熱血漢そのもの。それは一見、彼のファイトスタイルに通じるモノがあるかもしれない。ただし、その言葉は非常に冷静な口調で話されており、決して彼が感情に引っ張られる性格の持ち主でないことが理解できた。この点こそ、フアン・アルチュレタというファイターの真実であり、その点について尋ねてみた。
──とにかく死力を尽くして、全力で戦う。今の言葉を額面通りに受け取ると、フアンは常に伸るか反るか、乾坤一擲のファイトを心掛けているように皆が思いがちです。
「フフフフ。その通りだね」
──それでいてフアンの試合をしっかりと見ると、実に距離のコントロールとタイミングを測るのが絶妙です。ステップを踏み、ダブルレッグのフェイクから右を伸ばし、または右ストレートのフェイクからダブルレッグに入る。相手をおびき出してのカウンターショットも実は一発目でなく、続く2発目や3発目をヒットさせるように打っているように見受けられます。決して、当たって砕けろという戦いでなく計算されつくした動きかと。
「ファイトに欠かせないのは、アジャストする能力はなんだ。戦っている現状に対し、適切に変化させ、今ある状況に適した動きをしなければならない。それは賢明さという表現ができるかもしれないね。MMAに必要な知恵、戦いのなかで必要な分別という領域で如何に相手の知恵や分別を打ち破ることができるのか。
それがあって初めて、自分をコントロールできるんだよ。時には自分の戦いに綻びが見られることがある。そういう状況も相手に見せることになるのがMMAだ。そんな時、綻びやガタつきを追い払わなければいけない。それって、もうほとんどマジックだよ。そこを乗り越えてウォリアーは勝利を手にする。
その踏ん張りは……両親の支え、コーチの支えがあって可能になる。戦いとは決して、強さと強さのぶつかり合いではないんだよ。真っ直ぐ戦い過ぎても、自分の攻撃よりも被弾することが多くなる場合は往々にしてあるよね」
──その通りだと思います。
「Art of Warだよ。だからこそ今、君が指摘したようにダブルレッグのフェイクや、パンチと見せて組みつくこと。1発目でなく、2発目、3発目で顔面を打ち抜くんだよ。ファイトのスピード、リズムを変えること。それがあってこそ、攻撃は成り立つんだ。ぶっちゃけ、視線だってそうだよ。視線の先を攻撃しない。拳は違うところを狙う。それこそが、自由な攻撃になるんじゃないだろうか。攻撃するという観念から放たれた攻撃だよ」
──参りました(笑)。きっとファンだけでなく、過去の対戦相手もフアンのことを見誤っていたと思います。
「その通りだ。ファンも対戦相手も僕を誤解してきたんだ。それが僕の戦いだ。それが僕の愛するマーシャルアーツなんだよ。僕は口では戦わない。その必要はない。お喋りには自信がない。ファンに僕の話を聞いてもらうことがMMAじゃない。ケージの中の動きをファンに見てもらうことが、僕のMMAだ。本当にマーシャルアーツが好きなファン、マーシャルアーチストなら僕の戦いを理解してくれるだろう。皆に戦いの科学を楽しんでもらいたくて戦っている。それがマーシャルアーツだから」
※日本への憧れ、RIZINという場でキム・スーチョルと戦うこと、そして今後の日米でのキャリアップなどをフアン・アルチュレタが存分に話してくれたインタビューは、11月22日(火)発売のGONG格闘技#323に掲載されます。