【RTU ASIA2022Ep05】Road to UFC敗北から8日、松嶋こよみ「この負けを他の人の責任にしたくない」
10月23日にUAEはアブダビのエティハド・アリーナで開催されたROAD TO UFC AISA2022 Episode05で、松嶋こよみがイー・チャアにスプリット判定負けを喫し世界最高峰へのチケットを取り逃した。
誰よりも長い期間、UFCで戦うことを目標に生きてきた。29歳、ラストチャンスで悔いの残る判定負けを喫してから8日が過ぎ、空手衣の袖に手を通した松嶋にあの敗北と、これからについて話を訊いた。
──敗北から8日、あの敗北をどのように捉えていますか。
「そうですね……。まだ受け入れてはいないというか……自分のなかで、内容を反省できるところまで精神的に戻っていない。そういう感じではあります」
──そういう精神状態ですが、進退については考えてきたのでしょうか。
「試合直後はこのトーナメントにそれだけ懸けていたし、これを最後にしようという気持ちでいました」
──以前から話していた日本一のコーヒー屋さんになると?
「そこまで先のことは決めていないですが、コーヒー屋も一つの選択肢というか夢でもあります。僕、格闘技を辞めようと思ったことはこれまで1度しかなかったんです。本当に小さい時に『空手を辞めたい』と思ったことがあって。もう総合格闘家にならなくて良いから、空手を辞めたいと。理由も覚えていないのですが、その時は母に帯で首を絞められて踏み止まりましたけど(笑)」
──……。両親、星一徹ですね……(笑)。
「アレ以来ですね。格闘技を辞めようと思ったのは。これまでも手痛い敗北もあったし、レスリング時代に辛い時期を過ごすこともありました。でも最終的にはMMAをやってUFCで戦うという夢を持ち続けていて、辞めようとは全く思わなかったんです。でも、この負けは、辞め時かなっていう風に感じました。
試合直後から日本に帰国するまで、そういう気持ちでいました。ただ未練は間違いなくあります。小さい頃に辞めようと思って……自分に囚われていたのかもしれないですが、あの時に辞めなくて良かったと振り返ることができるだけの格闘家人生を送っていない。そういう風に考えている時にショーン・シェルビーから『もしかしたらチャンスはあるよ』という言葉を貰ったので、今はその数パーセントのチャンスに賭けてやっていきたいなと思っています」
──ショーン・シェルビーから声が掛かるのを待つ。それまで練習を続けるということですか。
「ハイ。UFCがダメだからBellator、日本で……RIZINで頑張るという気持ちに本当になれないんです。最後までUFCで戦うために足掻く。でも自分のなかでタイムリミットは決めて、そのなかでやろうと思っています。Road to UFCがあと3カ月少しで決勝がありますし、半年──長くて1年ですね」
──とはいえショーン・シェルビーは世界中のファイターに同じようなことを言っている可能性もありますし、半年以内に声が掛かるのか、1年以内で声に懸かるのか。それがどのタイミングになるのか分からない。なら他で試合をするということは考えないですか。正直、トーナメントの2試合は、実戦の難しさが痛いほど感じられました。
「試合勘という部分では、その考えはあるにはあります。ただし、他で試合に出るタイミングでUFCから声が掛かるかもしれない。試合直後で、緊急オファーに応じられないとか……そこを考えると、他で試合をする方が良いのか……まだ自分のなかでは決め切れていないです。勿論、試合をした方が良いですけど。練習で強いだけのヤツになりたくないですし。
でも、現状はそういう風になってしまっています。試合で練習通りの力が出せないっていう経験は、Road to UFCまで無かったです。それまでは試合で練習の時と同じように動けていました。それがこの2試合は明らかに違っていたことは、自分が一番分かっていることなので。今回は練習でやってきたことを試合で出すというよりも、負けたくないという執着心が出てしまいました。
普通はあの選択はしないだろうという選択を、たくさんしていました。練習でやってきたことが試合で出すことができれば、勝利に近づくはずです。でも、あの時の自分はこの1勝に賭けるという風になり、持っているモノが出せなかった……。そういう試合をしていると、UFCが契約をしないということも分かっています。ただ、あのトーナメントに関していえば勝てば契約があるということで、スプリット判定でも29-28でも構わないから、負けたくないという風に執着し過ぎていました」
──スプリットでも29-28でも構わないというのは、全然間違っていないと思います。ただし、2Rを終えた時点でジャッジの制定を読み違えた。あの展開で2つ取っているという判断は松嶋選手だけでなく、セコンドの北岡悟選手、大塚隆史選手、そして客席から叫んでいた岩﨑達也さん、チームの問題だと思います。どうすれば29-28になるのか、どうすればスプリットで勝てるのか。そこはチームが研究を怠った──怠っていないとすれば、あそこで2つのラウンドを取ったというのは、都合の良い方に考え過ぎだったかと。
「それは……そうだと思います。ただし、あの時は北岡さんや大塚さん、岩﨑先生に何を言われても僕はああいう選択をしていたかもしれないです。僕の負けです。この負けを他の人の責任にしたくない。チームで戦っているといっても、自分の負けです。僕がこの負けを認めないといけない。そこをやらないといけなかったのは、チームではなくて僕だったんです」
──……。
「それはFight&Lifeの記事を読んでも、そう思ったし。やってきたはず……なんです、これまでも。だから……試合を終った日、あの15分間……1Rのここがダメだった、2Rがダメだったということでなく、15分間で何がダメだったのか。今日1日の何がダメだったのか──過去何年分、頭を使ったのかって言うぐらい考えました。
どういう風に取り組んできたのかもそうだけど、取捨選択をすることが大切なら結局チームとして僕がもっと皆と話をしておくべきだったというのは……少しは思いました」
──今回の経験の全てを次に生かす。あるいは人生でも生かしたいですね。
「とにかく練習は僕にとって日常なので、試合がなくてもします。チャンスを待って、その時に全力で戦いたいという気持ちは消えていないです。消さないで、やっていこうと思います」