【ADCC2022】66キロ級1回戦。本命ファブリシオ・アンドレイが、対抗コール・アバテに初戦でレフ判定勝ち
【写真】いやぁ、なぜ1回戦?という顔合わせ(C)SATOSHI NARITA
17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi
ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第8 回は66キロ級の優勝候補筆頭、ファブリシオ・アンドレイと対抗馬と目されていたコール・アバテ──早過ぎる顔合わせとなった1回戦の模様をお伝えしたい。
<66キロ級1回戦/10分1R&ExR>
ファブリシオ・アンドレイ(ブラジル)
Def.ExR by Ref decision
コール・アバテ(米国)
今年の世界柔術フェザー級王者にしてチームメイトのジオゴ・ヘイスとともに優勝候補筆頭に挙げられるファブリシオ・アンドレイの初戦の相手は、最年少17歳にしてやはり大きな期待を集めるAOJの新星コール・アバテ──豪華メンバーが揃ったこの階級における、 1回戦の最注目カードだ。
それにしても、このいきなりの大一番の勝者が2回戦でジオゴと当たってしまうのだから、16人ブラケットの中の1ブロック4人の中に、最注目選手3人が固まってしまったこととなる。
足を振り上げるいつものポーズを取ったファブリシオは、試合前から気合十分。対するアバテは開始と同時に迷わず座りこむと、ファブリシオの右足にハーフで絡む。
ファブリシオが距離を取ると、アバテは素早くアームドラッグで左腕を引いて崩してから左足に絡んでいく──が、ファブリシオは足を抜く。逆にアバテがシットアップで上を取るが、ファブリシオが距離を作ると無理に追いかけずに下を取り直した。
その後も下から足を狙ってゆくアバテと、極めさせないファブリシオの攻防が続く。時折りアバテはシットアップも試みるが、ファブリシオが反応して立ち上がり、下から仕切り直すという状態が続く。
やがて5分が過ぎ加点時間帯に。ダブルガードから足を取り合う両者。アバテは右腕にアームドラッグを仕掛けてから背後に回りかけるが、ファブリシオは回転を続けて距離を作り、ダブルガードに戻してみせた。
さらにアバテはシットアップを狙うが、ファブリシオは腕を伸ばしてディフェンス。本戦で点を取って勝ち切りたいアバテと、延長に持ち込んでスタンド再開からレスリングで勝負したいファブリシオ、両者の思惑が見え隠れする。本戦終了寸前にファブリシオがシットアップし、アバテの下からの煽りを耐えたところで、10分が経過した。
スタンドから再開された延長戦。ファブリシオがシュートインするが、アバテがスプロール。ここからファブリシオの左足を抱えて回して崩しにかかるアバテは、さらにダースチョークのグリップを狙った後で、ファブリシオの左足も巻き込んで上からのクレイドルの形でグリップを作って体勢を潰してゆく。
それでもファブリシオが体を起こすと、アバテは斜めからボディロック。ここでファブリシオは小手に巻いてからの内股を仕掛け、振りほどいてみせた。
試合がスタンドに戻ると再びテイクダウンを狙うファブリシオだが、アバテは下がって回避する。残り2分半、ファブリシオがまたしてもシュートイン。今度は深くダブルに入ってアバテに尻餅を付かせた。
が、アバテは両腕をマットにポストして上半身は起こした状態をキープし、体をずらして背中を向けると同時に前転してスクランブル。ポイントを失うことなく離れてみせた。
スタンドから再開。序盤に力を温存しスタミナ十分のファブリシオは、アバテの首を抑えては足を飛ばす。アバテもヒザを付いてテイクダウンを狙うが、ファブリシオは距離を取る。逆にファブリシオがダブルレッグで深く入り、アバテの右足を抱えてシングルに移行。片足で耐えるアバテを場外際まで押していくが、ここはブレイクに。
残り1分。足を飛ばすファブリシオ。両者ともにテイクダウンを狙って入るが、そのたびに距離を取ってディフェンスされる。残り5秒、ヒザを付いたアバテは強引に右足を取りにゆくが、ファブリシオがそれを回転して切りバックに回りかけたところで試合は終了した。
ガッツポーズを取って勝利をアピールする両者。本戦で下から積極的に仕掛け、バックに周りかける場面を作ったのはアバテで、延長のテイクダウン合戦を支配し、相手に尻餅を着かせたのはファブリシオだ。
解釈次第でどちらにも傾き得ると思われたレフェリー判定は、ファブリシオに。難敵から薄氷の勝利を得た勝者は、歓喜の咆哮を連発した。本戦では出力を抑えてアバテの下からの攻撃を防ぎ、延長のレスリング勝負で優位に立って判定を取る。自らの強みをルールにうまく当てはめたファブリシオの作戦勝ちといえる。
世界最高のスキルを持つグラップラー同士の戦いとしては、お互いが持てる力を出し尽くすような見応えのある戦いにならなかった感は否めないが、それもこのADCCルールの綾なのだろう。とまれ、紙一重の戦いの末に1回戦最注目のカードを制したファブリシオが、盟友ジオゴ・ヘイスとの準々決勝──事実上の決勝とも思われる大一番だ──に駒を進めた。