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【ADCC2022】ADCCを深掘り─01─/高橋Sub&堀内勇。66キロ級はレス&柔術力でファブシリオ&ジオゴ

【写真】22歳のファブシリオ・アンドレイと比較すると20歳のベイビーシャークの童顔ぶりが凄まじい(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターで開催される2022 ADCC World Championship。2年に1度のグラップリング界最大のトーナメントが、コロナの影響で3年振りに開催される。

グラップリング界においても特殊なポイント制が用いられながら、世界最高峰の組み技の祭典を高橋Submission雄己とMMAPLANETグラップリング・ライター堀内勇氏が、独断と偏見と愛情をもって深堀り。第1弾は天才2人を中心に66キロ級について語ってもらった。


――昨年のWNO Championshipsに続き、1年振りに高橋選手と堀内さんに、グラップリング大会の見所を語ってもらうことになりました。まずはADCC世界大会、、まずは66キロ級からお願いします。

堀内 自分は予習でFight&Lifeの高橋選手のADCC2022ガイドを読ませていただいて、さすがの見立てというか。ファブリシオ・アンドレイのことを分かっていなかったのですが、記事を読んでチェックしてみたら『これはレスリングが強いわ』と(笑)。ADCCのルールを考えた時に、ファブリシオが本命というのは反論のしようがないと思いました。

だからこそ、僕はファブシリオのチームメイトでもあるベイビーシャークことと、ジオゴ・ヘイスに注目したいと思います。

──体のバネが異様にありますよね。

堀内 そこを頭に入れてMMAPLANETの読者の方には、彼の動画でのインタビューを見て欲しいのですが、本当に童顔なんです。中学生ぐらいにしか見えなくて、声変わりもしていない(笑)。ミカ・ガルバォンも含め、ファブシリオとジオゴ・ヘイスは同門なんですが、ミカが「米国のファミレスで食事をした時に、ジオゴ・ヘイスにキッズ・メニューが渡された」と話していて。

高橋 アハハハハハ。

堀内 今回の66キロ級はマイキーがいなくなったことで、強い選手はブラジルの若い選手に集約されたような状態ですけど、ジオゴ・ヘイスの可愛らしいキャラを認知していただければと。試合に関していうと南米予選の1回目の方を視ましたが、準決勝の同門対決でファブリシオに足関節で勝っています。でも、アレはいつも取ったり、取られたりしている延長戦上にあるものかと思いました。

それより決勝のジエゴ・パト戦、世界最高のガードプレイヤーのパトを相手に後半の加点時間帯のレスリング合戦になると、体力とレスリングの圧力でベイビーシャークの方が上回ってきて。反応が悪くなったパトからバックを奪いかけて優勢勝ちしました。

あの試合を見て、パトは再戦が実現しても正直勝てないと思いました。コレをやられると防ぎようがない。ADCCに必要なレスリングの消耗戦での強さをこの子は持っていますね。ADCCのレスリングってテイクダウンをされても、亀になって3秒過ぎればテイクダウンが無効になります。だからなかなかテイクダウンポイントが入らず、永遠にレスリングが続きます。

そういう風な展開になると、ファブシリオとジオゴがもう1度戦うとファブリシオが勝つかなというのは、正直なところですけど。でも、この強豪揃いのなかで決勝を勝ち上がってくることを考えると、ひょっとしてジオゴの方が強いかも。そういう見立てをしました。

高橋 トーナメント表が出ていないなかで、ワンツートップはファブリシオとジオゴだと思います。

──ファブリシオも体のバネが尋常ではないですね。

高橋 ジオゴがファブシリオからヒールで勝ったものの、試合で極められたモノって凄く残るから、2度同じモノは食らわないだろうというところで──僕はファブシリオかと。ポラリスで66キロ級のファブシリオが、88キロ級のメイソン・ファウラーをレスリングで吹っ飛ばしているのを見て、その強さは絶対だという想いを持っています。

いずれにせよ、ファブリシオとジオゴが一番の注目株です。全然、関係ないんですけどポラリスの時、ジオゴが隣の部屋でした(笑)。部屋を出るときに十字を切っていて、敬虔なクリスチャンなんだと。

──ファブシリオ・アンドレイのレスリング、裸の柔道のような技もありますよね。小内刈りからシングルレッグとか、大腰で投げた試合を見ました。あの背中からドンと落とせる柔道技はテイクダウンポイントを取り辛いADCCでも有効でないかと思いました。

高橋 立ち技のポイントになると、シングルレッグで引き倒したり、ダブルレッグでガチッと入るよりも柔道的な投げのほうが抑え込みっぽくなるので、ポイントになりやすい。そうなるとさらにファブリシオの線が濃くなりますね。

──この2人以外に名前を挙げるなら、道着世界一のパトと言いたいのですが、南米予選の決勝後にムンジアルの準決勝でジオゴと戦った試合を見て、道着を有効利用して最後は50/50でパトが勝ちました。柔術だから何も間違っていないです。と同時に、あの勝ち方を見て、ADCCでパトがジオゴに勝つことはないと感じました。

高橋 そうですね。パトはガブリエル・ソウザとやった試合が印象的で。切って、倒れないところを見せていますが、それでもゴリゴリに立ち技が強いファブリシオやジオゴに勝つ手札はないと感じました。消耗戦のレスリングとなると、攻め手の少なさが原因となってギリギリのところで勝てないと思います。

堀内 下手をするとレスリングが強い選手と当たって、ベスト4前に敗退ということもあるかと。

──道着柔術の世界のトップで、そっちが本職という気持ちが少しでもあると、諦めて引き込んで負けという展開も有り得るかと。

堀内 南米予選の決勝で、パトがボロボロに疲れた状態でバックを許すと、ベイビーシャークが離れたんです。『最大のチャンスで離れた。何をやっているんだ』という意見があるなかで、ジオゴは『あの場面ではパトに背中をつけてガードをプレーさせたくなかった』と振り返っていました。先ほど言いましたが、ADCCルールだと亀でヒザをつき3秒が過ぎるとテイクダウンにならない。

──なるほど、スクランブルゲームでなく引き込み選択できるということですね。

堀内 ハイ。3秒間、パトが亀で耐えると彼は減点無しでガードを選択できるようになります。でも、ジオゴはそれをさせなかった。そこにはミカのお父さん、メルキ・ガルバォンの指示もあったかと思います。あんな風に最後の手段までそうやって周到に封じ込まれると、下派の選手は厳しいですね。

高橋 パトはソウザとの試合でも、なんだかんだと減点なしで下を取りました。下になるとガンガン攻めて、レフェリー判定で勝ちました。ジオゴ・ヘイスのようなトップゲームの強い選手が、パトにガードは取らせたくないというのは逆に幻想が膨らみますね。

──66キロの見所を話してもらううえで、最初に堀内さんが言われたマイキー・ムスメシの不出場。これはもう本音をいえば「ONE、要らんことするなよ」と。

高橋 アハハハハ。

堀内 盲腸の手術をするから欠場といっても、その翌週にONEでサブミッション・グラップリングの世界王座決定戦に出場するわけですよね……。

高橋 出場して欲しかったですけど、正直なところルール的に勝てないと僕は思っています。

──マイキーにすら、極め幻想は持てないですか。

高橋 それはWNOでソウザが打ち破った感はあるじゃないですか。マイキーのレスリングって、ジオ・マルチネスにぶん投げられているんで(笑)。

堀内 ただマイキーがジョー・ローガンのポッドキャストに出て『僕は3回、コロナで陽性になった(笑)』と言っていたんですよ。きっとソウザ戦の前はコロナだったんじゃないかなって(笑)。

高橋 病み上がりでガードのリテンションを仕切るスタミナがなくて、削り切られたと。

──いずれにせよ、マイキーは今回の欠場といい、ONEで5万ドルのボーナスで泣いている姿といい、ちょっとガッカリ感があります。5万ドルって、いうたら普通に働いていたら1年間で手にデキる額で。それで柔術世界一が泣くなよって。

高橋 マイキーともあろうお方が(笑)。コナー・マクレガーが飲み食いして一晩で使っちゃいそうな額ですからね。業界IQでいえば同じところにいる人間が、そこで泣くなと(笑)。

<この項、続く

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