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【LFA138】世界に立ち向かうJ-MMAファイター(13)田中路教─01─「UFCがこの先にあるのかといえば……」

【写真】ごく自然に今回の考えに至った(C)MMAPLANET

8月5日(金・現地時間)にオクラホマ州ショーニーのグランドホテル・カジノ&リゾートで開催されるLFA138でアリ・ファリアスと対戦する田中路教。

ブラジリアン柔術界の強豪との対戦は、実に9カ月ぶりのファイトとなる。

2022年、夏~世界に立ち向かうJ-MMAファイター特集~。第13弾は、昨年11月のLFA初戦の勝利から、UFC一筋だった田中の実生活、そしてファイト・アイデンティティの変化を追いたい。


──昨年11月5日から、9カ月を経てようやくLFAで2戦目を迎えることとなりました。

「一時帰国していた日本から、1月に妻と米国に戻ってきて。その時点で試合のための準備に取り掛かり、いつでも試合ができるという風にLFAには連絡をしたのですが、なかなか返答がなく時間がかかりました。同時に結婚生活を米国でするために、色々と忙しくしていて。ここも色々とあり……実は彼女は今、日本に戻っているんです」

――えっ……。

「いや、夫婦関係は全く問題ないですよ。実は子供ができて、日本で出産するために帰国したんです」

――おぉ、おめでとうございます!!

「妊娠が分かってから、最初はサクラメントで産むつもりだったのですが、保険の処理とか僕の英語力では凄く時間がかかってしまって、病院にも行けないですから彼女だけ日本に戻ることにして」

――初めての出産に向けて、日本にいても精神的に不安定になるのに右も左も分からない、保険がなくて病院に行けないでは気持ちが持たないですね。

「相当にしんどそうでした。英語が話せないので、何をするにあたっても僕のサポートが必要で。日本にいるのとは全く違いますよね、相当に不安だったと思います。今は実家でご両親と過ごし、凄く順調です」

――良かったです。田中選手のことだから、練習とかになるとそっちに集中してしまいそうですし。

「あぁ……確かにそうだったと思います(苦笑)。僕は一つのことに集中してしまうので。妻には申し訳なかったです。懸命にサポートしていたつもりなのですが、全然足りていなかったと思います。3月の終わりに妻が日本に帰って、4月にONEで(川原)波輝君のセコンドでシンガポールに行って……。あれから、自分のキャリアを見つめなおす期間になりました」

――というのは?

「とにかく試合が組まれない。何よりも連絡をしても返答がないんです。ビザも来年の3月までですし、少しでも早く試合がしたいのに全然決まらなかったです。返事は欲しかったですね――せめて。あれは精神的にも厳しいです。ああいう風にどの選手とも接しているのか、僕にはそうだったのか……。『どういうことだろう』ってなりましたね。

試合が決まらない状態が続いているときにシンガポールに行き、これまで思ったことがないアジア的な良さを感じたんです。ちょうどONEのマッチメイカーの方とも話をして、『うちに出ないのか』と言う風に言ってもらえて。ONEで戦ってみようかという気にもなりました。ただ、結局ONEもすぐにはオファーはできないという風だったので、本格的な話にはならなかったですけど」

――つまり、UFCを諦めたということですか? その選択をしたということは? それが家庭ができたということなのでしょうか。

「いや、子供が生まれることはそこに関係ないです。とにかく試合がしたい。でも、ない。なら違う方向を考える必要があるなかで、ONEも一つのオプションでした。ユライアが開いたA1コンバットも選択肢にありましたし。実際にユライアも『LFAが決まらないなら、出したい』とコンタクトも取ってくれました。ただ、そこにも返答がなくて……」

――う~む……。辛いですね。

「1月に帰国したときの連絡には、返答があったんです。それ以降はもう……今回の試合のオファーまで、話はなかったです。ただUFCを諦めるとか、そういうことでONEやA1コンバットを考えていたわけでもないです。

実際、ユライア経由でショーン・シェルビーに連絡を取ってもらっていましたし。コンテンダーシリーズは『UFC経験者は出場できないんだ』ということで体よく断らましたけど」

――えっ?

「まぁ、それからすぐにUFCに出たことがあるチームメイトの出場が決まっていましたけどね(笑)。UFCも緊急オファーならということは一応、伝えられていて」

――それ、世界に数百人いますよ。きっと。

「アハハハ。そうでしょうね。でも、返信があるだけ良かったです(笑)。いずれにせよ、コンテンダーシリーズも断られたのは事実で。もう、待っているだけじゃ試合はできない。さっきも言いましたけど、ビザももう1年もないわけですし。この間にUFCからオファーが来る可能性は、本当に低い。そしてLFAでの試合も決まらない。

ただ焦りとか不安ではなくて、今は以前のように一つのことにこだわり過ぎないようにして、その時の最善の選択をしようと思っています」

――そう考えると、UFCをリリースされてからこの間、3試合しか戦っていない。その間に『選手は試合をしてナンボ』とオファーをくれたプロモーションもありましたが……。結局、こうなるでしょとなりませんかね。

「でも、その時に出たいと思わなかった。あの頃、UFCだけを考えてLFAと交渉をして、コロナでビザがなかなか出なかった。そこがあって、今に通じていて。あの時に他に出なかったから、この考え方ができるようになったと思っています。あの時にソレを選ぶと妥協で、今、こうなったのは妥協ではないです」

――結果、LFAからオファーがありました。

「ONEと話した直後にオファーがあり、試合が組まれるんだから試合に出る。その延長線上にUFCがあり、今はまたそのために戦っています。ただし、UFCがこの先にあるのかといえば、それはもう絶対ではないです。今はLFAでタイトルを獲ることこと。そこから先のことは、その時の最善の選択をしようと思います。

Bellatorなのか、ONEなのか。PFLもバンタム級ができると聞いていますし、そう言っているとUFCからオファーがあるかもしれないですしね。僕のなかで最強を目指すということは変わりないんです」

<この項、続く

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