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【Special】月刊、大沢ケンジのこの一番:2月:ケイシー・オニール✖ロクサン・モダフェリ─01─

【写真】ただ感傷的になるだけでなく、ロクサンから大沢氏は日本人でもやれるという手応えを感じていた (C) Zuffa/MMA

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、大沢ケンジ氏が選んだ2022 年2 月の一番は12日のUFC271で組まれたケイシー・オニール×ロクサン・モダフェリ戦について語らおう。


──大沢さんが選んだ2月の一番は?

「ロクサンの最後の試合ですね」

──おぁ、来るものがありましたか。

「まぁ、ロクサンが引退ということで感傷的になる部分もありますし、またここから見えてくることもありました。ロクサンのことはやっぱり彼女が慧舟會の東京本部で練習をしていた頃から知っていて。素材としてどういう選手なのかも知っているつもりです。

そこを踏まえて今、僕が海外のMMAを見ているとどうしても日本との差という視点でとらえてしまうんです。で、そんな時にロクサンって、日本人選手の物差しになりやすいんじゃないかと」

──というと?

「日本でやっている時、僕もロクサンのセコンドに就いたり、練習も当然一緒にやっていました。不器用で……でも、すぐに自分から攻める。相手を見ないで、自分から仕掛ける。やられても、また出る。ロクサンって米国人だけど、日本人と同じカードでUFCで勝負してきた。

そのカードをとにかく、切り続ける。皆が持っているものだけど、ガッツで補う。そこがやっぱり良いですよね」

──大沢さん好みの戦い方ですね。

「今回の試合でも彼女はオニールっていう無敗のファイターが相手でした。スムーズにロクサンに勝って、そのまま女子フライ級の上に駆けあがる。そのための試合ですよね。いくらロクサンの最後の試合だろうが、UFCやオニールからすると。

普通だったら、ロクサンは完全にやられる試合で。確かに打撃を貰っていました。でもロクサンは引かない。メチャクチャ根性があるから。足を使って……その足の使い方も、米国で習ったステップなんだろうなっていうのをひたすら続ける。ガードを固めて、時々当たるパンチは少しステップを変えていて。同じことをずっと繰り返しているんです。

『偉いなぁ』って。ドリルで繰り返してきたことを、ずっと続けて。で2Rにテイクダウンを奪った。3Rも蹴り足を掴むように肩を押してテイクダウン。スクランブルでもバックに回ってヒジ打ちとかして。

まぁ判定負けですけど、判定が割れたようにひょっとしてロクサンかもっていう試合をしました」

──それってロクサンへの身内贔屓ではないですか。素晴らしく頑張ったけど、判定は完全にオニールではないですか。

「いや、そんなことないですよ。試合を見なおしていますから(笑)。そりゃダメージはオニールの方が取っていますけど。でもロクサンもヒジとかいれて、それでどれだけチャラになるのかというのはありますけど、テイクダウンの労力、そして上をしっかりと取った。

ただし、ロクサンはそういうことも超越しているんです。決めたテイクダウン、当てたパンチ、決して上手いといえないんですよ。でも、繰り返して、繰り返して決めるようになる。そうなると、オニールが上手くいかないって迷い始めました。ロクサンが打たれても、全然変わらないから。

それまでオニールがパンチを出していた場面で、躊躇して打たなくて見るようになっていました。で、ロクサンが逆に打つようになった。攻撃は最大の防御──ではないですけど、アタックの回数を増やして、貰っても引かない。で組みにも行く。これ、日本人デキるじゃんって改めて思いました」

──まさにガッツで補う。

「それでUFCの女子フライ級に生き残った。TUFからUFCは1回はあるでしょう。でも、通用しなくてInvicta FCに回り、そこから戻ってきた。そしてUFC女子フライ級のトップとして戦った。日本人だって、ロクサンを見ているとデキるじゃんって、思えるんですよ」

<この項、続く>

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