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【DEEP106】小見川道大のラストマッチへ。中村大介─01─「小見川さん、なぜ引退するのでしょうか」

【写真】背景にある写真──田村潔司と、なぜ清原? (C)MMAPLANET

26日(土)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP106で、小見川道大の引退試合が行われる。その対戦相手には、元DEEPライト級王者の中村大介が選ばれた。
Text by Shojiro Kameika

中村は今年41歳――もう大ベテランといえる存在となった。そんななか昨年2月に現役DEEPフェザー級の牛久絢太郎をノンタイトル戦でKOしたが、再戦となったタイトルマッチは判定で敗れ、再びベルトを腰に巻くことはできなかった。

牛久との再戦前には、MMAは生涯武道であり現役を貫く意志を見せていた中村に訊く敗戦、そして現役と引退について――


――まず小見川戦のお話の前に、昨年7月の牛久選手とのタイトルマッチについて聞かせてください。試合から半年が経った今、あの敗戦をどう捉えているのか。

「あの~……最後は動けなくなってしまったので、納得はしています。自分の中でも負けたかな、というのはあったので」

――動けなくなったというのは、体力的な面ですか。それとも精神的な面でしょうか。

「体力的な面です。僕は毎試合、1Rからガンガン一本やKOを狙いに行くんですよ。でも前回の試合は、最終的に相手のほうが体力もあって、コントロールもされていましたから。……確かに動けなくなったのは体力的な面ですが、最後は気持ちで負けたんですね」

――試合中にどこかで、そう感じたところがあったのでしょうか。

「3Rですかね。自分が判定で負ける時の悪いクセというか、悪いパターンなんですよ。全部使ってしまって、攻め疲れるというか。20年も格闘技をやっているのに、そのへんは変わっていないんです(苦笑)。体力的な面で落ちているのに、練習も試合もやり方を変えずにやっているから……。ただ、前回の試合を経て自分の中では、いろいろ変えてきています。次は3Rの試合なので、それが出せるかどうか楽しみです」

――先ほど「納得している」という言葉がありましたが、それは自分自身の試合内容ではなく判定に対しては納得しているということですか。

「そうです、判定についてですね。微妙な判定だったという意見も聞きますけど、自分の中では納得しています」

――確かに微妙な判定ではあったと思います。ラウンドマストで4-1とハッキリと数字には出ていました。

「だからこそ3Rを取りに行かないといけなかったんですよね、DEEPルールでは。ただ判定に関しては――僕は一本やKOを狙いに行くスタイルなんです。これは競技者としては良くないかもしれないけど、判定になると勝っても負けても嬉しくないところがあって」

――……。

「やっぱり一本勝ちかKO勝ちしたい。かといって一本負けやKO負けのほうが良いってわけじゃなくて、決着しないとスッキリしないんですよ。一本やKOを狙い続けて判定勝ちになるのは良いんです。でも判定で勝つためのゲームプランとかは、今まであまり考えたことがなくて……」

――なるほど。プロレスが好きで、かつ武道的な側面を追求している中村選手の意見として、とても分かります。一方、競技者として……という言葉がありましたが、競技者としてタイトルマッチでベルトを獲得できなかったことについては、どう考えていますか。

「そうですよね……。もちろんベルトは欲しかったです。だから試合前、これに勝てばチャンピオンなんだぁ……と気持ちが浮ついてしまったところがありまして(苦笑)」

――えっ、そうなのですか。

「その時点で気持ちが崩れてしまったというか。最初に牛久選手と対戦した時って、現役バリバリのチャンピオンに自分の全てをぶつけることが目標だったんですね。それは勝敗に関わらず。そして、自分の全てが出せれば勝てるとも思っていたので」

――結果、右ヒザのカウンターでKO勝ちしました。

「それでタイトルマッチとなった時、邪念みたいなものが出てきて……気持ちの問題なんですよね。僕は格闘技って気持ちが全てだと思っています。心技体って、心が最初にあるじゃないですか。まず心が一番大事で、技も体も、心がないと付いてこない。だからベテランって言われるようになっても、僕は未熟なんですよ(苦笑)」

――ただし、ベテランになった今は、敗戦を冷静に振り返ることができます。もし10年前、20年前であれば、どう思っていたのか……。

「若い時だったら、もっと落ち込んでいたでしょうね(笑)。今でも連敗したらヘコみますけど、それも勉強だったんだよなって、あとから考えられるようにはなっています。うん、今もずっと成長したいんですよ。どの試合もまだ成長過程であって。試合をしながら、できていることを確認して、できていないことを反省する。そういう気持ちのほうが大きいです」

――正直なところ他の選手であれば、ベルトを獲得できなかったことで引退の2文字が頭をよぎることもあるかと思います。

「それが無いんですよ(笑)。頑張っていれば、またチャンスは来るかなって。この間のタイトルマッチは、試合前に邪念が入ってしまった。相手のほうがベルトに懸ける想い、ベルトを守るっていう気持ちが強かったんだと思います。……ベルトを獲りたいと思ったら、逆にダメなのかなぁ(苦笑)」

――勝敗を気にしていなければ勝てる、ベルトを獲りたいと思ったら獲れないのだとすれば、難しいところですね。

「アハハハ、そうですね。これからもベルトは目指していきたいです。でも今はベルトが最終目標ではなく、自分の中の最強を目指していきたい。その過程で結果も出て、チャンピオンになるチャンスも出てくると思います」

--なるほど。現役と引退について、そのような考えを持つ中村選手が、小見川選手の引退試合の相手を務めるというのも不思議な縁です。

「そうですね(笑)。小見川さん、なぜ引退するんでしょうか。絶対に今でも強いのに……」

<この項、続く

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