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【ONE Empower】急成長する世界の女子MMA、山口V.V芽生─02─「日本に役立つものを持って帰りたい」

【写真】自分の役割、立ち位置についてはずっと理解してMMAを戦ってきたように思える(C)MMAPLANET

9月3日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムONE「Empower」が開催される。同大会で開幕する女子アトム級ワールドGPの補欠戦でジュリー・メザバルバと対戦する山口V.V芽生インタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

地域の特性をもって、急速に進化する女子MMA。自らの置かれた状況を鑑み、日本のファイターが生き残るためには、何が必要なのか。国内でベルトを巻き、そしてONEで戦い続けているV.V Meiだからこそ発することができる言葉が大切な一戦を前にして、聞かれた。

<山口V.V芽生インタビューPart.01はコチラから>


――「そのぶん、実力プラス個性が求められるところもあるという理解」というヴィー選手自身も、独自の個性を押し出していた時期がありました。

「それ、随分と前の話ですよね(笑)」

――もともと空手、柔術、そしてMMAに対して武道の観点で語れる選手なのに、トラッシュトークでもなく、なんだか方向性の読めない言動があって……。

「アハハ。ONEで同じような発言をしていると、『そういうのはいらない』と言われました(笑)。ONEにはONEの求めているファイター像というのがあるのでしょうね」

――なるほど。GPに話を戻すと、リザーバーというポジションについては、どう受け止めているのでしょうか。

「私の中では割り切っています。同じようなトーナメントで、リザーバーから優勝したケースもありますし。あるいは、GP後の展開に向けて自分を作り直していくとか。いずれにしても、GP本戦に出られなかったから全てが終わる、ということではないので」

――GP優勝者が現アトム級世界王者アンジェラ・リーに挑戦することになります。その試合の勝者への挑戦者を決める戦いが展開されるでしょう。

「それに、まだGP自体どうなるか分からないですからね」

――というと?

「当日体重を落とせていない選手がいたり、あるいはコロナの影響で試合ができなくなったら、私が急遽GP本戦に出ることになったりすると思いますし。この状況下では何が起こるか分からないじゃないですか。もともと私の試合も、コロコロ変わりましたから」

――えっ、どういうことですか。

「いろいろ国ごとに事情が違うから、仕方ないとは思うんですけど……。リザーブマッチに出場するという話から、『出られるかどうか分からない』と言われて、その後また『リザーブマッチに』という連絡が来て。だから当日も何が起こるか分からないですよね」

――それだけ状況が変わるのは、選手としては不安ではないかと……。

「昔から日本の女子MMAでやってきているので、そういった部分を考えすぎることはなくなりましたね(笑)。それもキャリアのおかげです」

――そこでお聞きしたいのは、ヴィー選手のようなキャリアを積んできた選手にとって、今回GP本戦に出場する平田樹選手については、どのように思われているのでしょうか。

「……いいんじゃないですかね」

――微妙な回答ですね(笑)。

「いやっ、そういうことじゃないです(苦笑)。分からない、と言ったほうが正しいですかね。今までの対戦相手では査定できないというか。だから、今回のトーナメントで分かると思うんです」

――確かに、そのとおりです。

「ONEとしても彼女のような若いキャラクターが欲しいのでしょうし、今回のGPでは勝っても負けても未来がある。私も、良い選手になって日本の女子MMAを引っ張っていく存在になってほしいと思っていますよ」

――平田選手をはじめとする新しい世代の選手に対し、ライバル心などは無いのですか。

「……無いですね。それよりも、早く私たちの世代を超えてくれ、って(苦笑)」

――その考えは意外です。

「ここ数年、海外選手の成長が著しいじゃないですか。フィジカルが強いし、少々テクニックが荒くても、フィジカルでカバーしたり、あるいは気持ちが見える試合をする。それがONEに出ている女子選手だと思うんですよ。

UFCだと、みんな効率よく技術を学んで、レベルの高い試合を繰り広げるのが当たり前になってきていて。日本人選手も、そういうところで戦って、負けても新しいことを学んで強くなればいいと思います。日本はココが足りない、という点が分かることも大切なので」

――今は厳しい状況にありますよね。日本人選手が海外で戦う機会も少なくなりましたし、コロナ禍で海外から選手を呼ぶこともできない。

「そうなんです。でも米国は選手も多いし、UFCは開催されていて――そうなると、これからもっと海外との差が開いていくと思うんですよ」

――……。

「私自身はこれからもONEに出て、新しい技術を身につけながら、もう少し続けていきたいです。でも、そんなに長く現役を続けられるわけではない。そこで新しい選手のために……『育成』と言えるほどではないですけど、私は英語を生かして海外で試合したり練習したりして、日本の格闘技界に役立つものを持って帰りたいと考えています」

――ヴィー選手の世代も、そう考えるような立場になっているのですね。

「今、私たちが戦っているのも、諸先輩方が頑張ってくれたおかげですから。それを私たちが引き継ぎながら、世界で活躍する選手がもっと増えてほしいです」

――日本も選手層は確実に増えています。

「これから強くなりそうな、新しい世代の選手が増えているじゃないですか。そういった選手たちを応援していきたいですね。もう国内だけで争っていくのではなく、世界を視野に入れて全体的に頑張っていかないと」

――分かりました。そのためにも、次のメザバルバ戦は重要な試合となりますね。

「はい。でも対戦相手の情報が本当に少なくて……」

――これまでブラジル国内の大会で7勝2敗1分、次の試合がONE初戦となって、未知数の部分が多いです。

「試合映像を見るとガンガン打ってくる選手だから、私も取り組んでいる打撃を確かめるには、良い相手だと思います。相手が打ってきても下がらずに、しっかり打撃の展開から組んで、寝かせて勝ちたいですね」

■視聴方法(予定)
9月3日(金・日本時間)
午後8時00分~ ABEMA格闘チャンネル
午後8時00分~ONE Super App

■ONE Empower 対戦カード

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]シィオン・ヂィンナン(中国)
[挑戦者] ミッシェル・ニコリニ(ブラジル)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
ハム・ソヒ(韓国)
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
アリョーナ・ラソヒーナ(ウクライナ)
スタンプ・フェアテックス(タイ)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
モン・ボー(中国)
リトゥ・フォーガット(インド)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
平田樹(日本)
アリス・アンダーソン(米国)

<キックボクシング女子アトム級/3分3R>
アニッサ・メクセン(フランス)
クリスティーナ・モラレス(スペイン)

<ムエタイ女子ストロー級/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
ダニエラ・ロペス(アルゼンチン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
VV.Mei(日本)
ジュリー・メザバルバ(ブラジル)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
ビー・ニューイェン(米国)✖ジェネリン・オルシム(フィリピン)の勝者
グレース・クリーブランド(ブラジル)

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