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【ONE Empower】アトム級ワールドGP、リザーブ戦出場。山口V.V芽生─01─「ここまで外されるもの」

【写真】MMAファイターはケージに入って、結果を残すのみ(C)MMAPLANET

9月3日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムONE「Empower」が開催される。ONE Championship 、10年の歴史で初となる女子ファイターのみの大会では、ONE世界女子ストロー級選手権試合の他、女子アトム級ワールドGPが開幕する。
Text by Shojiro Kameike

このGP、日本からは本戦に平田樹、リザーバーに山口V.V 芽生が出場する。2020年2月、デニス・ザンボアンガ戦以来の試合となる山口は、ザンボアンガ戦の敗北、そしてGPのリザーバーというポジションに対して、どのように考えているのか。

怒りや焦りといった感情は出てこなかった──MMAキャリア14年を経て、達観したベテランらしいV.V Meiの言葉に耳を傾けてほしい。


――ONE女子アトム級グランプリのリザーブマッチで、ジェリー・メザバルバと対戦するV.V Mei選手です。前回の試合は2020年2月のデニス・ザンボアンガ戦、つまり1年半ぶりにMMAを戦うことになりました。

「1年半ですか。試合間隔に関しては気にしていないですね。試合してみて『おやっ?』と感じることはあるかもしれないですけど、他の人が思っているほど気にしてはいないです」

――試合間隔を気にしないのは、以前からですか。

「はい。昔も1年ぐらい試合がなかったことはありましたから(苦笑)。DEEP JEWELSでベルトを獲った後とか」

――2015年5月に、フェザー級(当時:現アトム級)GPで優勝してベルトを巻きましたが、翌年5月のONE女子世界アトム級王座決定戦、アンジェラ・リーとの試合まで1年のブランクがありました。

「自分と同世代の選手は試合がしたい気持ちはあっても大会が少ない、という時代のほうが長かったじゃないですか」

――ヴィー選手の場合、同階級の選手は一通り対戦していましたからね。

「だから今、コンスタントに試合ができるようになったのが、ありがたいぐらいです」

――今は国内でもDEEP JEWELSをはじめ、さまざまなプロモーションで定期的に試合が組まれるようになりました。女子の場合は選手層の問題もあり、なかなか試合が組まれなかった。そのような時代を経験しているのは、もうヴィー選手の世代が最後なのかもしれないです。

「そうだと思います。おかげで、今も一緒に練習している同じ世代の選手は、コロナ禍で試合ができなくても焦ってはいないですよ。日々、淡々と練習しています。今も昔も、淡々と練習していると、気づいたら時間が過ぎていて」

――この1年半も同じように、淡々と練習していたということですか。

「どちらかというと、自分に足りないことに取り組んでいましたね」

――自分に足りないものとは?

「打撃です。グラウンドに持ち込むための打撃もそうですし、打撃だけで相手を制することができるような自信をつけられるよう、打撃の練習に取り組んでいました」

――ヴィー選手の打撃といえば、幼少期から学んでいた空手がベースでした。今は空手以外の打撃に取り組んでいるのですか。

「どれだけ空手のベースがあっても、やはりMMAとは競技が違うので、うまく活かせていない部分もありました。だから打撃の展開になると、100パーセントの自信を持って臨むことができない時もあって。そこで打撃の展開も確実なものにしたいと思って、最近はキックボクシングもボクシングも取り入れています」

――なるほど。

「打撃については、ずっと前から毎試合、改善していきたいと思っていたんですよ。でも何か取り入れても形にならなかったり……。どうしたらいいのか、試行錯誤していました。今は練習していて手応えがあります。この1年半で、できることも増えました」

――現在、打撃はどのような練習を?

「今年2月から、野木トレーナーにボクシングを教えていただいています」

――野木丈司さんですか。これまで女子MMAでも藤井惠さんや浜崎朱加選手をはじめ、数多くにボクシングの指導を行っていました。

「そうです。野木さんは、これまで多くの選手を指導されていただけあって、引き出しも多いし、私に合ったものを教えてくれるのは大きいです」

――そうして打撃の改善に取り組むようになったのは、前回ザンボアンガに敗れたことも影響しているのでしょうか。

「いえ、特にザンボアンガ戦がどう……ということはないですね。ずっと前から取り組んでいたことなので」

――では、ザンボアンガ戦の敗北は、どのように捉えていますか。

「……もともとザンボアンガについては、あまり情報がなくて、その強さがよく分かっていませんでした。試合映像を見ても、『なぜ相手がここまで動けないのだろう?』と疑問で。それが実際に試合をしてみると、今までの対戦相手とはパワーが違いましたね。『おやっ?』と思うような、不思議な力強さがあったんです」

――確かに、ヴィー選手の組みも打撃も「跳ね返される」という印象は強かったですね。

「試合って、誰しも何かしらの恐怖というか、緊張感を持っていると思うんですよ。相手としては試合前に、その緊張感を掴みに行くんですが、ザンボアンガの場合は緊張感を掴むことができませんでした。今後ONEで戦っていくかぎり、同じタイプの選手も出てくるでしょうから、自分はどうするべきなのか。とにかく技術を上げていくしかないと思っています」

――そのザンボアンガ戦まで、ONEで4連勝し、3度目の王座挑戦も目前だったかと思います。しかしザンボアンガに敗れたことで、タイトル戦線から外れてしまいました。

「最近は、それほどベルトに固執しているわけではないんですよ。もちろんONEのベルト戦線に絡めたら素晴らしいことですし、ベルトを獲れたら最高です。でも、現状を考えると、自分にできることを精一杯やる。そう考えて試合に臨むほうが、精神的にも健康だなって。だから、ザンボアンガに負けたことで、タイトル戦線から外れたのも仕方ないなって思うようになっています。ただ……」

――ただ……何でしょう?

「それでも、ここまで外されるものなのかな、って(苦笑)」

――ザンボアンガに勝っていれば、今回のGPもリザーバーではなく本戦に出られていた可能性は高いと思います。

「そうですね……正直、今回の出場メンバーを見ても、ONEが超実力主義であれば本戦に入っていたと思うんですよ。でも、いろんな局面からファンに対して訴えていくのがONEの特徴でもあるので、『あぁ、そういう方向で行くのね』と理解はしています」

――そうやって割り切ることはできているのですか。

「プロの興行ですから。これがオリンピックであれば、また違うんですけど。ただ、私もそういうONEの方向性に賛同しているから、ずっとONEに出場しているわけで。アジアの人たちに希望を持ってもらうこと、ONEからヒーローを生み出すこと。それはそれで、すごく良いことだと思います。そのぶん、実力プラス個性が求められるところもあるという理解です」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
9月3日(金・日本時間)
午後8時00分~ ABEMA格闘チャンネル
午後8時00分~ONE Super App

■ONE Empower 対戦カード

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]シィオン・ヂィンナン(中国)
[挑戦者] ミッシェル・ニコリニ(ブラジル)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
ハム・ソヒ(韓国)
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
アリョーナ・ラソヒーナ(ウクライナ)
スタンプ・フェアテックス(タイ)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
モン・ボー(中国)
リトゥ・フォーガット(インド)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
平田樹(日本)
アリス・アンダーソン(米国)

<キックボクシング女子アトム級/3分3R>
アニッサ・メクセン(フランス)
クリスティーナ・モラレス(スペイン)

<ムエタイ女子ストロー級/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
ダニエラ・ロペス(アルゼンチン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
VV.Mei(日本)
ジュリー・メザバルバ(ブラジル)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
ビー・ニューイェン(米国)✖ジェネリン・オルシム(フィリピン)の勝者
グレース・クリーブランド(ブラジル)

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